マネージドサービスの解約率を従前の4%低減
問い合わせをクローズさせるまでの平均時間を20%近く短縮
ナレッジの標準化によりエンジニアの対応レベルを向上
マネージドサービス運用における社内標準が存在していなかった
「IT 技術で社会の明日を支える会社」をスローガンに、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)グループで培った高い技術力で社会に貢献し未来を支えていくことを目指している CTC テクノロジー。ITライフサイクルを通して一貫したサービスを提供しています。
具体的には、システムの導入に携わる「システム環境構築サービス」に始まり、稼働開始後の運用保守をサポートする「製品保守サービス」や「マネージドサービス」、システム全体の問題を解決できるエンジニアを育成する「教育・研修サービス」まで総合的に提供することで、ビジネスパートナーとして顧客の IT 活用をサポートしています。
中でも近年注力しているのがマネージドサービスで、2022 年度もクラウド基盤上で展開されるデータ分析プラットフォームに対するマネージドサービスやデータ統合管理ソリューションに関するマネージドサービスといったラインナップを拡充し、データ分析のニーズが高まる中でも顧客に伴走していく準備を整えるほか、オンプレミス環境におけるハイエンドデータベース製品のマネージドサービスについてもリリースしています。
同社 マネージドサービス マネージドサービス企画統括部 部長代行の高橋正彦氏は、「オンプレミスだけでなく、クラウドに対するお客様の IT 投資や運用支援についても万全のサポート体制を引き続き継続・強化していきます」と語ります。
高橋正彦 氏
マネージドサービス マネージドサービス企画統括部 部長代行
しかし、同社のマネージドサービス運用におけるネックとなっていたのが、「社内標準と呼べる方法がない」という状態でした。同社 マネージドサービス マネージドサービス企画統括部 MS 統括課スタッフマネージャーの相川靖氏はこう説明します。
「個々のエンジニアがお客様向けに個別にカスタマイズ・最適化されたやり方で日々のインシデント対応や管理、運用を提供していました。内製のインシデント管理ツールなどを活用していたものの、メールベースのやりとりが基本となっており、エンジニアは大量のメールから必要な情報を素早く見極めて処理する必要がありました。また、その内製アプリケーション自体もリリースからかなりの年月が経過して老朽化が進んでおり、メンテナンスの観点からも問題となっていました」
さらにマネージドサービス マネージドサービス企画統括部 シニアテクニカルマネージャーの渡部和氏も、「お客様ごとのフォーマットやルールに準拠したやり方でマネージドサービスを提供していたため、一括してインシデントを管理・可視化したり、インシデントを起点にワークフローを回したりすることが困難な状況でした」と明かします。
マネージドサービス業務に標準的な機能で対応
顧客ごとの個別対応は、一見すると顧客重視のように思えますが、実際には多くの非効率が発生します。
統一されたプラットフォームからマネージドサービスを提供してこそ、優秀なエンジニアが顧客と伴走し、全体として知見の共有や効率化が図ることができます。また、それによってエンジニア自身のさらなるスキルアップや顧客個々の課題解決に集中する時間を生み出すことが可能となります。
「エンジニアの個々の努力や属人的な対応に支えられてきたお客様満足度の向上を、よりスマートに実現できる環境を長年にわたり求め続けてきました」と高橋氏は話します。メールや電話といった個別のやりとりに限定されたコミュニケーション手段だけでなく、例えば顧客向けのポータルサイトを新たに提供することで、マネージドサービスをより便利に利用できるようにしたいと考えていました。
こうした経緯から CTC テクノロジーが導入を決めたのが、ServiceNow のCustomer Service Management(CSM)です。「ServiceNow は当社のマネージドサービス業務に標準的な機能で対応できる親和性を持つとともに、そこから派生するさまざまな機能要件も満たしていました。独自の仕組みを開発・運用していくコストを考えると、ServiceNow の導入は十分な ROI(投資対効果)を出せると判断できたことも決め手の 1 つです」と、高橋氏はその選定理由を示します。
加えて目を向けたのが、従来の内製アプリケーションで課題となっていた外部システム連携の強化です。「ServiceNow はカスタマイズの柔軟性があり、Node.js に始まる一般的に広く利用されている JavaScript ベースでサーバサイドの機能が拡張できる点も評価ポイントでした」と相川氏は話します。
問い合わせ対応の迅速化と顧客満足向上を実現
ServiceNow を導入した CTC テクノロジーは 2018 年 10 月から開発を開始。そのわずか 5 カ月後の 2019 年 2 月にシステムをローンチしました。
同社は IT インフラに長けているとはいえソフトウェアベンダーとは異なり、個別プロジェクトにアサイン可能な開発エンジニアがいるわけではありません。こうしたことを考慮すれば、このような短期リリースはまさに「社内的にも画期的なことだった」と高橋氏は評価します。
背景には ServiceNow によるサポートもありました。「ServiceNow のプロフェッショナルサービスを利用したところ、ワークショップなどを通じてプロジェクトを的確にリードしていただき無事にリリースにすることができました」と渡部氏は話します。
そして CTC テクノロジーは、2022 年 10 月現在もさまざまな機能改善を続けています。マネージドサービス企画統括部の皆川麻希氏は、「例えばナレッジの蓄積や標準化を促すための機能の拡充にも注力しており、各エンジニアが実際のケース対応で利用したナレッジを記録する『なに見たの DB』や、ナレッジの活用状況を可視化する機能などのアドオンのリリースを進めています」と話します。 こうした取り組みの結果、ServiceNow はさまざまな成果をもたらしてきました。同社はServiceNow に搭載される可視化・分析機能である「Performance Analytics」を用い、さまざまなKPI をモニタリングし、これまで計測できていなかった数値が見えるようになりました。マネージドサービス企画統括部 部長の中口卓也氏はこう語ります。
「お客様向けポータルサイトが用意されたことで、以前のメールや電話よりも利便性は大幅に高まったと自負しています。特に定型作業のご依頼をいただく場合、あらかじめ用意された項目を選択するだけでよく、よりスムーズにやりとりができるようになりました。この改善は当社マネージドサービスに対するお客様の満足度向上に確実につながっており、サービスの解約率は従前と比べて 4%低減しています」と強調します。
一方、ナレッジの標準化が進んだことで経験の浅いエンジニアもベテランエンジニアと同等のレベルでケース対応できる土台が築かれてきたことにより、「1 件あたりの問い合わせがクローズするまでの平均時間は、2021 年度と 2022 年度の比較で 20%近く短縮しています」と相川氏は話します。
問い合わせ対応の自動化でさらなる業務効率化を目指す
今後に向けてCTC テクノロジーでは、ServiceNow のNow Platform に新たに搭載された Adaptive Authentication(適応型認証)の機能にも注目しています。ユーザーごとに適した認証ポリシーを動的に適用するフレームワークであり、ServiceNow 内のセキュリティレベルの強化に大きく貢献します。
またユーザビリティの向上に向けて、お客様ポータルサイトの画面や社内ユーザーの管理画面をよりモダンな形へブラッシュアップしていきます。
そしてその先に見据えているのが、ServiceNow の「Agent Workspace」の活用です。そこでは具体的にはPlaybook と呼ばれるワークフロー機能を活用することで問い合わせ対応の自動化を目指しており、相川氏も「ServiceNow を導入した本当の理由はここにあります」と強調します。
CTC テクノロジーは、ソフトウェア開発のプロフェッショナルがいないチームでも継続的改善を地道に重ねることで価値向上を実現できる点こそが、ServiceNow の最大の強みと認識しています。
「最初の導入から3 年目にあたる 1 つの節目を迎えた 2021 年度には、契約更新のタイミングに合わせて、Agent Workspace の利用検討など、ServiceNow のさらなる利活用を促進すべく基盤整備を進めています」と高橋氏は語ります。マネージドサービスの運用にあたるエンジニア一人ひとりの生産性を高めるとともに、顧客に提供する体験価値のさらなる向上を目指しています。
マネージドサービスにおける顧客ケース管理の効率化と顧客体験向上を実現したCTCテクノロジー株式会社