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mineko
ServiceNow Employee

English version:
Why AI Isn’t Delivering Business Impact—The Operating Model for the Agentic AI Era—

*本稿に記載されている内容は、執筆者個人の経験と見解に基づくものであり、ServiceNowの公式見解や製品方針を示すものではありません。


はじめに:なぜ「AIを使っている」のに成果が出ないのか

 

多くの企業がAI投資を拡大しています。しかし、その大半は経営成果に繋がっていません。
その背景には、多くの企業がDXに多額の投資を行いながらも、戦略・投資・実行が分断され、価値創出を継続的に生み出す経営運営(オペレーティングモデル) を構築できていないという構造的な問題があります。(*オペレーティングモデル:戦略を実行へ接続し、意思決定・実行・学習を循環させる経営構造)

 

問題は個別プロジェクトの成功可否ではなく、「戦略変更を組織の実行へ即時に反映できる経営構造」が設計されていないことにあります。
ここで重要になるのが、オペレーティングモデル(Operating Model, OM)という概念です。

McKinseyの調査によれば、現在78%以上の企業が少なくとも1つの業務領域で生成AIを活用しています。しかし同時に、80%を超える企業が収益への実質的なインパクトを感じられていません。これが「生成AIパラドックス」です。

問題はAIモデルの精度やデータ量ではありません。本質は、AIを前提に戦略・投資・実行を接続する経営運営(オペレーティングモデル)が設計されていないことにあります。


1. 「使っている」≠「仕事の進み方が変わっている」

 

生成AIは現在、メール作成・要約・検索といった補助ツールとして活用されています。意思決定・承認・実行フローは従来のままです。

「AIモデルの精度が足りない」「データ量・品質が足りない」「新しいツールを導入すれば解決する」——これらはいずれも本質的な課題ではありません。

真因は、業務設計の前提が依然として人中心のオペレーティングモデルであることです。

 

Agentic AI時代では、人とAIエージェントが協働する実行主体を前提に業務と意思決定を再設計する必要があります。


2. なぜこれまでのAIは経営成果に繋がらなかったのか

 

図1:AI投資と経営成果のギャップ
図1.png

スケールを阻む構造的障壁は3層に整理できます。

「水平型」への偏重と「垂直型」の停滞

汎用ツールは導入が容易である一方、効果が分散し、収益指標への貢献は不透明になりがちです。一方で、業務特化型ユースケースは約90%がパイロット段階にとどまり、本格展開に至っていません。

既存プロセスへの「付け足し」による限界

AIが受動的なアシスタントとして位置づけられ、人中心のプロセスが維持されているため、生産性向上効果は5〜10%程度にとどまります。

スケールを阻む「6つの障壁」

戦略不足・人材不足・技術限界・組織の壁・データ課題・文化の壁といった複数の要因が、相互に絡み合いながらAI活用のスケールを阻んでいます。

 


3. AI時代の経営運営を成立させる「設計思想の転換」

 

図2:AIスケールを阻む構造的障壁
  図2.png

 

 解決に必要な要件は技術不足ではなく、設計思想のズレにあります。3つの転換が求められます。

ツール導入から 実行主体(人×AIエージェント)の再設計 へ

AIを補助ツールではなく、自ら計画を立ててタスクを完結させる「エージェント」として活用します。その実装形態が、基幹システムと連携した部門横断ワークフローの自動化です。

プロセス改善から オペレーティングモデル刷新 へ

既存プロセスにAIを追加するのではなく、AIの自律性を前提にワークフローそのものを再構築する必要があります。コールセンターの事例では、AIエージェントを中心にプロセスを再設計することで、解決時間を60〜90%短縮し、レベル1インシデントの80%を自律解決しています。

部門最適からCEO主導の全社変革へ

散発的な試行を終え、AI活用をCEO直轄の全社戦略プログラムへ格上げする必要があります。その実行には、機能横断チームによる変革推進体制と、Agentic AI Meshの採用が重要な柱となります。

 


4. AI活用の経営設計(オペレーティングモデルという視点)

 

図3:AI時代に求められる3つの設計思想の転換
図3.png

 

 オペレーティングモデルとは、組織が実現したいことを、変化し得る戦略を前提に、「意思決定・実行・学習」が継続的に回る経営運営として成立させるための構造です。

AI活用の成否は個別ユースケースやツール選定ではなく、4つの経営基盤の整備にかかっています。

People

AI投資の成否=変革をやり切る組織能力。人材は業務再設計と意思決定を担う経営資源。

問い:「どの業務を人×エージェント前提で再設計するのか」

Governance

自律するソフトウェアをどう経営管理するかという新しいリスク領域。

問い:「どこまでAIに任せ、誰が責任を負うか」

Technology

PoCから業務中核を支える"業務化基盤"への転換。

問い:「このアーキテクチャは全社でスケールする前提か」

Data

データはIT資産ではなく業務を動かす経営資源。

問い:「"動くデータ"になっているか」

 


5. Agentic AI時代のオペレーティングモデルを実装する経営実行基盤

 

図4:AI時代のオペレーティングモデル(意思決定・実行・学習の循環)
  図4.png

 

AIを業務の主体にするには、ツールとしてAIを足すのではなく 「実行を回す基盤」 が必要です。
ServiceNowは、既存のSoRの上位にオーバーレイされ、戦略・投資・実行・学習を同期させる「経営実行基盤」 として機能します。

Sense(感知) 全社AI可視化・ガバナンス・利用状況管理の一元化
Decide / Govern(判断・統治) プラットフォームでの役割・責任・権限の明確化
Act(実行) 複数エージェント・外部AIを統合可能なAI Agent Fabric/Mesh構成

 

図5:Agentic AI時代の経営実行基盤アーキテクチャ
図5.png

 

3つの転換がServiceNow上でどう実装されるかを具体化すると上図の通りです。「受動的ツールから能動的協働者」「プロセスの根本的刷新」「CEO主導の全社戦略」、それぞれに対応する機能が単一プラットフォーム上で実現されます。


6.【参考】連携型AIエージェント基盤の要件

 

図6:エンタープライズAIエージェント基盤の構造要件
  図6.png

全社スケールに必要な基盤要件と、経営上の意味合いおよびServiceNowでの実現方法を示したものが上図です。エージェントとワークフローのディスカバリ、AI資産レジストリ、可観測性、認証と認可、評価、フィードバック管理、コンプライアンスとリスク管理——これら7つの相互連携機能が、Agentic AIを経営が制御可能な形で運用するための条件となります。


おわりに:競争優位はAI導入の量ではなく、AIを前提に経営を設計した企業に帰属する

 

CEOが問うべきは次の問いです。

我々の組織は、AIを前提に意思決定・実行・学習のサイクルを設計しているか。それとも、既存の経営構造にAIを付け加えているだけか。

Agentic AI時代の競争優位は、最も多くのAIツールを導入した企業ではなく、AIを前提にオペレーティングモデルを再設計した企業に帰属します。

ServiceNowは、その再設計を「経営が設計・制御できる対象」として具現化するための基盤です。今求められているのはPoCの拡張ではありません。AIを前提としたオペレーティングモデルへの移行です。


*本稿は、McKinsey QuantumBlack「エージェント型AI時代の到来:企業変革の新たな戦略(2025年8月)」を主要参考文献として活用しています。記載内容は執筆者個人の見解であり、ServiceNowの公式見解を示すものではありません。