mineko
ServiceNow Employee
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我々は、本年一年を通じて、エンタープライズアーキテクト(EA)、ソリューションアーキテクト(SA)、プラットフォームアーキテクト(PA)という三つのロールで、数多くの対話を重ねてきた。

 

具体的な案件を題材に、

「どのように考え、どのような前提でデザインしたのか」

「次のアーキテクトロールへ引き継ぐ際、どの状態が適切なのか」

「自分が調べたこと、作ったものを起点に、どのような議論を設計すべきか」

 

といった実務的な問いを掘り下げてきた。

 

加えて、

「ServiceNowにおけるエンタープライズアーキテクトが果たすべき役割は何か」
「アーキテクトとコンサルタントの違いは何なのか」

 

といった、より構造的・概念的なテーマについても、オープンな議論を重ねてきた。

 

年末最後に話題となったのは、比較的シンプルでありながら本質的な問いだった。

 

戦略は “How” なのか、それとも “What” なのか。

 


ベンダー文脈に潜む前提

 

一般的なITベンダーの提案活動では、次のような言い回しが使われることが多い。

 

「IT戦略を実現するためのソリューション(解決策)をどうするか」

この表現を素直に分解すると、

  • What:戦略
  • How:ソリューション(解決策)

という整理になる。

 

この構図は、文脈によっては「戦略=What」という整理が暗黙の前提として扱われてしまうことがある。

 

実際には、「IT戦略」を「ソリューション」へ変換するという構図は、論理設計から物理設計へと変換する思考にあたるものであり、すなわち「戦略(=論理層)」を「実装(=物理層)」へと落とし込むプロセスそのものである。

 

こうした前提を意識せずに言葉を使っていると、「IT戦略」という言葉が、本来の戦略(=How)ではなく、単なる設計対象(=What)のように錯覚してしまうのかもしれない。

 


「戦略はHowだよ」という一言

 

その場で、あるメンバーが迷いなくこう言った。

 

「戦略は “How” だよ」

続けて、

 

「VMOSAを見れば分かる」

と補足した。

 


VMOSAという整理軸

 

VMOSAとは、以下の頭文字を取った戦略計画フレームワークである。

  • Vision:組織が目指す理想的な未来像
  • Mission:組織の存在意義、果たすべき役割
  • Objectives:ビジョン・ミッションを実現するための具体的かつ測定可能な目標
  • Strategies:目標を達成するためのアプローチや方針
  • Action Plans:戦略を実行に移すための具体的な行動計画

初めて耳にしたフレームワークではあったが、その構成要素自体は、多くの企業理解や戦略整理で馴染みのある内容である。

 

重要なのは、この並び順が示している関係性だ。

  • 戦略(Strategies)は、VisionやObjectivesそのものではない
  • 戦略は、「どのように目標を達成するか」という選択と方針である

VMOSAの整理に立つと、戦略は How の位置づけとして捉えることができる。

 


EA視点での再解釈

 

ベンダー視点では、「IT戦略を実現するソリューション」という表現が、戦略を一段抽象度の低い What に見せてしまうことがある。

 

しかし、エンタープライズアーキテクチャの視点に立つと、まず検討すべきは次の問いである。

  • 企業として、どのVisionを掲げているのか
  • そのために、何をObjectiveとして設定しているのか
  • そのObjectiveを達成するために、どのような選択肢を取り、何を捨てるのか

 

この「選択と捨象」は、エンタープライズアーキテクチャの文脈において、戦略をHowとして捉える際の本質である。

 


VMOSAとエンタープライズアーキテクチャ

 

戦略をWhatとして扱ってしまうと、意図せず施策やソリューションの議論が先行してしまうことがある。

VMOSAを用いて視点を整理することで、

 

  • What(Vision / Objectives)
  • How(Strategies)
  • Execution(Action Plans)

のレイヤーを意識的に分離できる。

 

企業における Action Plans は、各CxOが描く個別のビジョンや施策として具体化される。

 

組織構造や経営レイヤーを意識しながらVMOSAを整理することは、エンタープライズアーキテクチャ設計を分かりやすくし、経営とITの対話を前に進める助けになるだろう。

 


※本稿に記載されている内容は、執筆者個人の経験と見解に基づくものであり、ServiceNowの公式見解や製品方針を示すものではありません。