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なぜServiceNowにおいてEnterprise Architectロールが重要なのか
ServiceNowは、ITSMツールとして世間に注目され、進化してきた企業ですが、企業のビジネス変革をエンドツーエンドで支えるデジタル基盤へと進化しています。その結果、導入・拡張・運用の各局面で求められるアーキテクトが非常に重要な役割をになる結果となりました。
本稿では、ServiceNowが描く「ビジネス拡大サイクル」を踏まえ、Enterprise Architectureを EA(Enterprise Architect)・SA(Solution Architect)・PA(Platform Architect) の3つのロールに分けて整理します。これにより、
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経営層がどの意思決定を誰に委ねるべきか
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ServiceNow導入・拡張がどのフェーズで価値を生むのか
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各ロールがどのように連携し、価値を連鎖させるのか
を俯瞰できる構造を提示します。
ServiceNowアーキテクトによる「ビジネス拡大サイクル」
ServiceNowのアーキテクチャ活動は、企業のライフサイクル全体にわたって価値を提供します。特徴的なのは、構想(Why / What)・実装(How)・持続(How to sustain) が直線ではなく、循環構造を持つ点です。
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EA(Enterprise Architect):何を実現するのか(全体像・青写真)
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SA(Solution Architect):どう実装するのか(具体解)
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PA(Platform Architect):どう持続・拡張するのか(健全性・統制)
3つのEAロールの全体像
以下の3つのロールを順に解説します。
| ロール | 主な関心 | 主なカウンターパート | 価値提供の軸 |
|---|---|---|---|
| EA(Enterprise Architect) | What | IT系CxO(CIO / CDO / CTO) | 全体最適・変革の設計 |
| SA(Solution Architect) | How | CIO配下のITリード | 実装の実現性・整合性 |
| PA(Platform Architect) | How to sustain | CIO / CTO(運用・ガバナンス) | 持続性・拡張性 |
それぞれは独立した役割ではなく、ビジネス拡大サイクルを回し続けるための連続したアーキテクチャ機能として位置づけられます。
EA(Enterprise Architect):ビジネスとITをつなぐ「What」の設計者
EAは、顧客のIT戦略・経営課題を起点に、ServiceNowでどの領域にどの順序で投資すべきかを定義します。
- 経営・ビジネス・IT戦略を統合し、ServiceNowで取り組むべき変革テーマと前提条件を定義
- As-Is / To-Beギャップを構造化し、企業として目指すべきアーキテクチャのあるべき姿を定義
- ビジネス優先度とシステム制約を踏まえ、Transformation Blueprint(変革の設計図)を策定
EAのアウトプットは、単なる構成図ではなく、経営判断に耐える「変革の設計図」です。以降のSA・PAの活動は、この設計意図を前提に展開されます。
(※次章で詳細解説)
SA(Solution Architect):設計意図を価値に変える「How」の実装者
SAは、EAが描いた全体像を、具体的なServiceNowソリューションとして具現化する役割を担います。
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ServiceNow標準機能を前提としたソリューション設計
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各種システム連携・データ設計・テスト
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パートナーや開発チームとの協業
SAに求められるのは、技術力だけでなく、EAの意図を崩さずに実装へ落とす翻訳力です。
(※次章で詳細解説)
PA(Platform Architect):価値を持続・拡張させる「How to sustain」の守護者
PAは、稼働後のServiceNow環境を対象に、プラットフォーム全体の健全性と将来拡張性を担保します。
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稼働環境の健全性維持・改善
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Enterprise Architecture視点でのアーキテクチャブループリントの作成および継続的整備
- 長期的な技術リスクを最小限に抑えるための技術ガバナンスの制定
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各種アセスメント・設計レビューによるスコープ拡張支援
PAは「運用担当」ではなく、次のビジネス拡大サイクルを回すための基盤設計者です。
(※次章で詳細解説)
本シリーズの位置づけ
本ブログは、ServiceNowにおける EA(Enterprise Architect)・SA(Solution Architect)・PA(Platform Architect) という3つのEnterprise Architectureロールの全体像を整理する、シリーズのイントロダクションです。
以降の記事では、以下のテーマを順に取り上げていきます。
- EA(Enterprise Architect):変革構想と意思決定を支えるアーキテクチャ
- SA(Solution Architect):構想を実装に橋渡しするアーキテクチャ
- PA(Platform Architect):プラットフォーム価値を持続・拡張させるアーキテクチャ
本シリーズは、3名のアーキテクトによる共同執筆です。
全ロールを俯瞰して議論する記事と、各ロールの実践知を最も理解しているメンバーが主筆となって執筆する記事の両方を織り交ぜながら構成していきます。
ServiceNowを単に「導入する」のではなく、導入後も価値を拡大し続けるために、アーキテクトに何が求められるのか。
本シリーズが、その全体像を捉えるための思考の起点となれば幸いです。