Hiroyuki Kojima
ServiceNow Employee

AI × Knowledge シリーズ

AI 活用を前提とした
Knowledge の書き方

ナレッジ記事が AI Search に「選ばれる」かどうかは、採点の仕組みで決まります。何が評価され、何が評価されないのかを分解し、書き方だけで検索順位を上げるための観点を整理します。

はじめに:
最新情報は、公式ドキュメントや Release Notes で必ずご確認ください。

対象読者:

  • 技術者でなくてもナレッジ記事を書く機会がある方
  • 書いた記事が「読まれない」「検索で出てこない」と感じている方
  • AI Search / Now Assist を前提にナレッジ記事を整えたい方

はじめに:AI に選ばれる記事を書くための前提

ナレッジ記事が表示されるかどうかは、AI Search が判断しています。AI に選ばれる記事を書くには、まず AI Search がどう判断しているかを理解する必要があります。

よくある状況を整理すると、次のようになります。

  • 課題:書いたナレッジ記事が読まれない/同じ問い合わせが繰り返し来る
  • 原因:上位に出るものを AI が決めており、読まれるのは上位の数件だけ。感想や熱意は加点されない
  • だから:採点基準に合わせて書けば、書き方だけで順位は変えられる

ポイント:
検索されないナレッジ記事は、社内では「存在しないのと同じ」です。良い記事を書く前に、まず点数の付き方を知ることが近道になります。


01. ServiceNow の検索エンジンは 2 種類

ServiceNow には検索エンジンが 2 つあります。違いを押さえると、AI Search の挙動をより正確に読み解けます。

比較の観点 AI Search(標準) Zing(レガシー)
位置づけ 現在の標準エンジン 従来型
点数の付け方 意味を理解し、行動ログから自動改善 出現回数・近接性・フィールド重みで採点
意味で探す検索 対応(ハイブリッド検索も) 非対応
主な守備範囲 Global Search/Now Assist in VA/Now Mobile ほか 検索アプリ設定で Zing を指定した画面

見分け方:
標準の入口はほぼ AI Search で、Now Assist の回答生成でも利用されます。どちらが使われているかは、Search Applications の Search Engine 欄で確認できます。

02. AI Search は「感想」ではなく「点数」

AI 検索への対応は、まずスコア(点数)の稼ぎ方を知ることから始まります。同じ内容でもスコアが上がれば順位が上がり、正しく検索でヒットするようになります。処理の流れをイメージで示すと、次のようになります。

SCORING FLOW
検索結果が点数順に並ぶまで
① 問い合わせる
入力された自然な言葉が、そのまま検索クエリになります。
例)「Webex 会議に外部ゲストを招待したい」
↓  2 つの検索を同時に実行
② 2 つの検索で探す
キーワード検索(語がそのまま一致するか)と、セマンティック検索(意味がどれだけ近いか)を同時に走らせます。
↓  2 つの結果をまとめる
③ 点数をつけて統合
2 つの検索結果を 1 本の順位表にまとめます。大事なのは点数の数値そのものではなく、点数の高い順に並ぶということです。
点数の高い順に並ぶ(上ほど高い)
ナレッジ記事 C
 
ナレッジ記事 A
 
ナレッジ記事 D
 
↓  上位の数件だけが読まれる
④ 高い順に返す
点数の高い順に並び、利用者の目に触れるのは上位の数件だけです。

03. AI Search の 3 つの検索モード

AI Search には、キーワード検索・セマンティック検索・その 2 つを掛け合わせたハイブリッド検索があります。

SEARCH MODES
2 つの検索を足して 1 本にする
KEYWORD
キーワード検索
検索語と記事の語の一致を数え、珍しい語ほど重く扱います。語がどれだけ一致するかでスコアが決まります。
例)「PC が重い」では「端末の動作が遅い」記事は拾えないことがあります。
SEMANTIC
セマンティック検索
検索語と記事を意味のベクトルに変換し、近さを測ります。同義語辞書を作り込まなくても言い換えを吸収できます。
例)「サーバーが落ちた」で「ネットワーク障害」も拾えます。
↓  2 つの結果を統合
HYBRID
ハイブリッド検索
キーワードの強さを捨てずに、意味の近さを足した検索です。言い回しが違っても関連結果を取得でき、上位結果の関連性が上がり、ゼロ件検索が減ります。

04. AI Search が評価する 6 つの要素

評価要素は、書き方でスコアを上げられるものと、公開後の運用・利用実績で決まるものに分かれます。

執筆でコントロールできる
書き方で直接よくできる要素
  • ① タイトル一致(最重要):検索語がタイトルに含まれるか
  • ② 本文一致:検索語が本文に含まれるか
  • ③ キーワード(meta):タグ・meta の語と一致するか
運用・利用実績で決まる
書き手だけでは動かせない ― 統合・更新・周知で効かせる
  • ④ タグ・meta の人気度:そのタグがよく使われているか
  • ⑤ 記事の鮮度:作成・更新がどれだけ新しいか
  • ⑥ 記事の閲覧数:どれだけ読まれているか

05. 公開後に検索されなくなる 2 つの理由

良い記事を沈めるのは、他人の記事ではなく自分たちの古い記事や重複です。統合と更新の担当を決めておきましょう。

理由 1:更新しないと、静かに沈む

内容が正しくても、更新日が古い記事は新しい記事に押し下げられます。

対処:四半期ごとに見直し、更新日を新しく保ちます。

理由 2:重複は、票を食い合う

同じ内容が 3 本あると、閲覧もクリックも分散し、どれも上位に上がれません。

対処:重複は 1 本に統合し、旧記事は廃止します。

06. スコアを上げる書き方 ― タイトルが最重要

ハイブリッド検索はタイトルに比重を置いて評価します。中身が同じでも、タイトルに置く語のスコアが高いほどヒット率が上がります。

語のスコアは IDF(inverse document frequency)で決まります。多くの記事に出る一般語はスコアが低く、少数の記事にしか出ない珍しい語ほどスコアが高くなります。

  • 強い語:製品名・固有名詞・型番・エラーコード(例:Webex/ESPP/INC0010001)
  • 弱い語:一般語・機能語(例:設定/対応/方法/手順)
✕ 会議システムの使い方
✓ Webex 会議に外部ゲストを招待する手順
製品名を先に置き、一般語だけのタイトルから脱する。
✕ 株式制度について
✓ ESPP 購入期間と申込締切(2026年度)
略号+年度で、対象がほぼ一意に決まる。
✕ PC が起動しない場合の対応
✓ MacBook Pro 16 が起動しない ― SMC リセット手順
機種名と手順名で、症状でも型番でも当たる。

本文で効かせるコツ:

  • 冒頭に要約を置く(長い記事は詳細を後述にする)
  • 「〜するには」「〜できないとき」など、利用者の言葉で書く
  • 1 セクション=1 メッセージ(見出しを立て、長い段落にしない)
  • 1 記事=1 トピック(詰め込むと重要語の密度が薄まる)
  • meta に別名を追加する(旧名称・社内通称・綴り違い)

07. Knowledge メンテナンス

AI 活用を前提とする場合、想定した問い合わせで記事が表示されるかを確認し、既存記事の改善だけでなく、重複の検出・統合までを運用に組み込みます。主に次の機能が使えます。

  • Search Preview (New):検索プロファイル設定でクエリをテスト。Impersonate や言語セッションの設定も可能(AI Search)
  • Article Optimization:記事の品質・検索性を上げる改善提案を AI が自動検出(Knowledge Center)
  • Knowledge Gaps:問い合わせ情報から、対応できていない領域の記事を特定して作成を提案(注意:CSM / ITSM のみ
  • Requires Attention:Valid To 超過で検索と Now Assist の対象外になる記事を抽出(Knowledge Center)
  • 重複の検出とマージ:Duplicate Articles で検出し、2〜5 件を 1 本にマージ(注意:現在英語のみ

まとめ

  • 検索に引っかかるかどうかは、AI Search が「点数」で判断する。感想や熱意は加点されない
  • ハイブリッド検索はタイトルに比重を置く。タイトルの語を最適化するのが最短
  • 珍しく、かつ実際に検索される語(製品名・固有名詞・型番)を選ぶ
  • 書いた後は重複統合と定期更新で、自分たちの古い記事に沈められないようにする
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