危機的状況にある人たちに希望を与える
2022 年 2 月にロシアがウクライナに侵攻したことで、数百万人が避難しました。 ほとんどの人が必要としていたのは、身の安全、暖かい居場所、食料、そしてより良い未来への希望というシンプルなものでしたが、 これらはすぐに必要とされていました。 何年も何か月もかけてはいられません。 6 週間で解決しなければなりませんでした。 そこで必要とされたのは、最も複雑な問題に取り組むエンジニアと 世界初の人道支援プラットフォームを構築するための効果的なプラットフォームでした。 Goldman Sachs 社や ServiceNow の優秀な人材が、その呼びかけに応えました。
この人道的危機に対応するため、米国政府は「Uniting for Ukraine」を立ち上げ、避難民となったウクライナ人が米国に避難するための指定経路を提供しました。 このプログラムでは、避難したウクライナ人は米国内にスポンサーを持つ必要がありました。スポンサーは、米国市民、永住権保持者、非営利団体、教育機関、雇用主であれば誰でもよいことになっています。
ディアスポラのコミュニティは真っ先に縁のある人々のスポンサーとなりましたが、米国で安全を求めながらスポンサーとつながる方法を全く持たない人が他にも何万人もいました。一方で、このライフラインを提供するためスポンサーになろうと待機している米国人も多数いました。 つまり課題は、ウクライナ人家族とスポンサー候補をいかに安全かつ効率的に結びつけるかでした。 Welcome.US は、テクノロジーソリューションがこのギャップを埋めるのに役立つと考え、Goldman Sachs 社、ServiceNow、Infosys 社といったパートナー企業に支援を求めました。
安全な環境でつなげる
Welcome.US は、2021 年 8 月に米国がカブールから撤退した後、8 万人以上のアフガニスタン人の米国への再定住を支援するために、従来とは異なる当事者に力を与えることを目的として最初に発足した非営利組織です。 ロシアがウクライナに侵攻した数日後に、その支援が拡大されました。 Welcome.US は、Goldman Sachs 社の協力のもと、10 万人の米国人を募集、動員し、米国に避難してきたウクライナ人を迎え入れ、支援するために必要な能力を構築することから始めました。
Welcome.US は、スポンサーと受益者の双方が出会うための安全なスペースを作ることを決意し、規制がなく危険なオンラインフォーラムの利用を回避するよう努めました。
その結果、ウクライナ人と米国にいるスポンサー候補が母国語で検索してメッセージをやり取りし、関係を築き、自分たちの将来について十分な情報を得た上で決断できる、使いやすい関係構築プラットフォーム「Welcome Connect」が誕生しました。
Welcome.US の CEO である Nazanin Ash 氏は、「安全を求めるウクライナ人は非常に弱い立場にあるため、彼らとそのスポンサーが集まるための安全な環境を提供することが不可欠でした」と説明しています。
「Welcome Connect プラットフォームを特別なものにする要素はいくつもありますが、その中で最も特徴的なのは、Welcome Connect のおかげで、避難民が次に行く場所を選択できるプラットフォームを作ることができたということであり、私たちは大変誇りに思っています」
信頼関係の構築
Goldman Sachs 社のトランザクションバンキング部門のアプリケーション開発エンジニアリングパートナー兼グローバル責任者である Luc Teboul 氏は、「当初から、どんな形であれ、協力したいと思う人が Goldman Sachs 社にはたくさんいました」と説明します。
「金銭的な支援はもちろん重要ですが、それ以上のものが必要だという認識はありました。 私たちは、この状況がもたらす独自の課題だけでなく、自分たちがどのように支援できるのかという現実的な検討も始めました。」
「対話の中で Welcome.US は、米国とウクライナの人々をつなぐプラットフォームを構築し、将来的に他の状況にも対応するための基盤として活用したいとの意向を示しました。私たちのチームが日々行っているエンジニアリングの仕事から、これこそ私たちにできることだと感じ、手を挙げました」
Goldman Sachs 社は、このソリューションを実現するためのパートナーかつ技術プラットフォームとして、ServiceNow を指定しました。
「Goldman Sachs 社は、すでに関係を築いている ServiceNow 社を引き入れました」と、Welcome.US のプログラムテクノロジー & イノベーション担当シニアアドバイザーの Jenny Raymond 氏は振り返ります。 「彼らはエンジニアリングのリーダーシップを発揮し、ServiceNow との関係を促進する手助けをしてくれました。この関係は今日まで続いています」
数週間のうちに、Now Platform 上に構築された「Welcome Connect」は、何千人ものウクライナ人と米国のスポンサーを結びつけることになりました。
ServiceNow のアカウントマネージャーである Darren Rice は、このプロジェクトが実現した経緯をこう振り返ります。「この連絡を受けたとき、ServiceNow ならこの取り組みを全面的にサポートしたいと引き受けるだろうとすぐに思いました。私たちは、この取り組みに必要な技術と時間を躊躇なく提供し、持てるスキルを迅速に適用してパートナーをサポートしました」
Welcome Connect では、スポンサー候補と受益者が、スポンサーシップのプロセス、プラットフォームの使い方、プロフィールの作り方、会話の始め方などのリソースやガイダンスにアクセスできます。 受益者には、候補とのスポンサー関係が自分にとって最適かどうかを評価し、つながる相手を選択する権限が与えられています。この手続きは、すべての参加者のデータが完全に保護された、包括的で機密性の高い環境で行われます。 スポンサーシップのオファーが受理されると、両者は米国国土安全保障省が運営する米国政府の「Uniting for Ukraine」プログラムへの申請手続きを行うことになります。
動的翻訳で自然なコミュニケーションを実現
動的言語翻訳を使用することで、コミュニケーションが簡素化されて自然になり、障壁ではなくイネーブラーになります。 ServiceNow は、ユーザーテスト、ストーリーボード、機能マップを導入し、ローコードの ServiceNow App Engine でオーダーメイドのソリューションを共同で構築して、コンセプトから立ち上げまでをわずか 6 週間で達成しました。
ここで注目すべきは、このポータルが App Engine で構築されており、モバイルユーザーがあらゆる機能を利用できるように完全に最適化されているという点です。これは、多くのウクライナ人がほぼ着の身着のままで母国を離れ、不安の中で生活している状況を考えると、非常に重要な点です。 Welcome Connect のもう一つの大きな特徴は、Now Platform から必要な機能をサービスとしてのプラットフォーム (PaaS) モデルで継承していることです。 つまり、セキュリティ、拡張性、そしてソフトウェア開発ライフサイクル (SDLC) が組み込まれているのです。 これにより、Welcome.US がプラットフォームのインフラを管理する必要がなくなり、Welcome.US のチームにとって欠かせないメンテナンスや発展に必要な技術スキルを、最小限に抑えることができました。
Raymond 氏は説明します。「私は人道支援分野で多くの製品開発に携わってきましたが、 こんなに的確に、こんなに早く、こんなに効率よく成果が実現するのを見たことがありません」
「受益者が自ら、相手を選び、つながり、決断できるようにすることが、まさに私たちが実現したいと思っていたことです。Goldman Sachs 社、ServiceNow、Infosys 社という主要パートナー 3 社から無条件のサポートを受け、この重要な目標を達成するためのプラットフォームを共同開発することができました。まるで夢のような体験でした」
Welcome.US と ServiceNow のパートナーシップは、プラットフォームの立ち上げのみにとどまりませんでした。 Welcome.US は、この分野では初のバリューアクセラレーションソリューションである ServiceNow Impact による継続的なサポートを受けています。 Now Platform を基盤に、専門家によるコーチング、カスタマイズされたインサイトと推奨事項、プレミアムテクニカルサポート、ロールベースのトレーニング、キュレーションコンテンツを組み合わせ、パーソナライズされたデジタル体験としてこれらが提供されます。
「サービス開始後は、ServiceNow Impact から日々サポートを受け、Welcome Connect の改善や拡大についてのアドバイスをもらいました。これは、プラットフォームを前進させるうえで、非常に重要かつポジティブな体験でした。ServiceNow Impact は、私たちと腕を組んでプロセスを歩んでくれています。ベストプラクティスに関するリーダーシップを発揮し、すべてを最も効率的かつ効果的な方法で実行しているかを確かめ、リスクを回避してくれます。私たちは毎週何度も Impact Squad と話をしますが、彼らは信じられないほど知識が豊富で先見の明があり、彼らの戦略的アドバイスは非常に貴重です」と、Raymond 氏は述べています。
避難民に選ぶ権利を与える
Ash 氏にとって、Welcome Connect は、ウクライナ人と米国人の双方に変革の経験をもたらしていると言います。 「難民の再定住は通常、長期にわたる複雑なプロセスで、数年、時には数十年かかることもあります。 世界には 3,200 万人以上の難民がいますが、そのうち再定住の対象となるのはわずか 1% です」
「パートナーが示したコミットメントに感動せずにはいられませんでした。チームは、受益者とスポンサーが必要とするほぼすべてのものを 1 つの場所で提供できるようにするこのプラットフォームの開発に、24 時間体制で取り組んでくれました。彼らは素晴らしい感性、配慮、専門知識でこのプロジェクトを押し進めました。私たちが望んでいることの概要を伝えるだけで、チームはそれを実現させてくれたのです」
Welcome Connect の開設から 9 か月間で、数千人のウクライナ人受益者がプラットフォームを通じて米国人のスポンサーから支援を受け、13,000 人以上のスポンサー候補が登録を済ませました。
国土安全保障省が 2023 年初頭に新たな人道支援スポンサープログラムを発表した際、ServiceNow はプラットフォームのテンプレートを拡張し、新たに対象となるキューバ、ハイチ、ベネズエラ、ニカラグアの人々のニーズに合わせて、スペイン語とハイチクレオール語の動的言語翻訳機能を追加導入しました。
一世一代のインパクトを可能にする
「私たち家族が米国で歓迎されていなかったら、自分の人生はもっと違ったものになっていたかもしれないと、よく考えています」と Ash 氏は語ります。 「私は、人種、宗教、性別、地理的な問題など、人々が才能を発揮し、夢を実現するための障壁を取り除くために、職業人生を費やしてきました」
「私は、米国のコミュニティの豊かな多様性を心から信頼しています。 Welcome.US の使命は、そうしたコミュニティの力と可能性を引き出し、その能力を活かし、ウクライナのような危機に国を挙げて対応できる力を生み出すことです」
「私たちは米国人に対し、誰かの人生を直接変え、世代に影響を与えるライフラインを提供する機会を設けています。Welcome Connect はそれを可能にしている非常に実用的なツールなのです」
人生を変える
Ash 氏は「米国が受け入れる新たな移民の数を増やすこともそうですが、歓迎され受け入れられた人々の人生が変わるように、歓迎して受け入れるという行為がいかに世界を変えるかということを証明したいと思っています」と付け加えました。
「スポンサーシップは、関わるすべての人の人生を変え、分断が進むこの時代のコミュニティをひとつにするものです。 自由を求める人々のために立ち上がる場所であり、誰にでもチャンスがある場所であるという、米国の核となる価値観を軸に、コミュニティを再び奮い立たせます」
「このプログラムから生まれる実例の数々は本当に驚くべきもので、常にインスピレーションを与え、私たちが共通して持つ慈愛に気付かせてくれます。新たな移民を受け入れることで、寛容と誇りというムーブメントを構築していると感じています。パートナーのコミットメントがあるからこそ、私たちはこれらの道筋をできるだけ早く拡大するために一致団結することができているのです」