ITIL は、単なるありきたりな専門用語ではありません。現代のビジネスが複雑な IT 環境を進んでいく重要な方法の 1 つです。 ITIL の権利を所有しているのは、AXELOS 社です (2013 年に英国政府の行政機関である Cabinet Office から同フレームワークの所有権を購入)。ITIL は業界標準ではありませんが、推奨事項とフレームワークを提供。数千の組織が広く採用し、IT の調整と整合性を改善するメリットを享受しています。 ITIL フレームワークの採用を選択した組織は、サービス管理、成果、オペレーションの質を高めています。
簡単に言うと、ITIL によって簡素化された効率性の高いシステムを構築し、組織とその顧客に合わせたサービスを IT ソリューションで提供できるようになります。
情報技術インフラストラクチャライブラリーは、ITSM の単なる理論的な指針ではありません。組織の有効性を高め、IT と事業達成目標の整合性を取るうえで重要な役割を果たします。 ITIL が組織にもたらすメリットは、大きく分けてコスト削減、サービス品質の向上、ビジネス目標との整合性、適応性に貢献する領域に分類できます。
こうしたカテゴリー内で、ITIL を使用することで得られる最大のビジネス上のメリットには以下が挙げられます。
ITIL の最も具体的なメリットの 1 つは、IT コストへの影響です。 実証済みのベストプラクティスと標準を実装することで、デジタル資産、物理資産、人的資産などのリソースをより効率的に使用できます。 こうしたことは、もちろん全社に及ぶ生産性の向上、支出の削減、無駄の削減、最適なコスト効率につながります。
ITIL は、IT サービスプロビジョニングに対するプロフェッショナルなアプローチを促進し、IT サービスの向上をもたらします。 ITIL ガイドラインを体系的に実装することで、実証済みのベストプラクティスに従ってサービスが提供され、顧客満足度が向上します。 サービス中断への対応と管理が簡素化され、IT サービスの信頼性と効率性がさらに高まります。
ITIL を導入すると、IT コストと資産の可視性を向上させることができます。 透明性が高まることで、より多くの情報に基づいて意思決定を下せるようになります。その結果、さまざまな部門間での理解が深まり、コラボレーションを促進できます。 コラボレーションと包括的な思考の原則が適用され、アプローチの統合が進み、IT 管理のあらゆる点に連携して対処できます。
ITIL は、リスク、中断、障害の管理を支援し、安定性がありながらも柔軟な環境の維持に貢献します。 コスト効率の高いプラクティスを確立することで、組織内の成長、拡張性、変革をサポートする基盤を構築します。 これには、顧客のニーズに合わせてカスタマイズした効率的なサービスを提供することで顧客関係を強化することも含まれます。
ITIL は、変化に迅速に適応できる非常に柔軟なサービス環境をもたらします。 組織がサービスフレームワークやベストプラクティスを持たない場合に、IT 専門家が専門的な職務を遂行し、組織固有のニーズや課題に応じてアプローチをカスタマイズできる健全な基盤が ITIL によって実現します。
ITIL を採用する唯一最大のメリットは、おそらく IT 部門とビジネス戦略全体の整合性であり、ITIL 4 で特に顕著です。 ITIL の原則は、IT 管理者がどうすれば事業達成目標に貢献できるかについて、包括的な理解を促進します。 目標との整合性が高くなるため、IT 部門のアクションと意思決定が組織のミッションとビジョンを幅広くサポートし、IT 部門は単なるサポート部門ではなく戦略的パートナーになります。
ITIL は、長年にわたり大幅に改善されてきました。 このフレームワークは、改善と拡大を重ね、最終的に現在の世界的に認知された標準に発展しました。 現在、最新バージョンの ITIL フレームワークはバージョン 4 ですが、ITIL がいかに進化してきたのかを理解する価値があります。
ITIL フレームワークは、1986 年に英国政府の Central Computing and Telecommunications Agency (CCTA) によって初めて開発されました。CCTA は、IT コストの増加を認識しており、コストを削減してリソースをより効率的に使用できる手法の必要性を認めていました。 CCTA は Government Infrastructure Management Method (GITMM) と名付けられた指針を公開しました。この指針は間もなく、1989 年に Information Technology Infrastructure Library (ITIL) に改名され、公共機関以外にも広く受け入れられるようになりました。
40 冊に分けてリリースされたこの ITIL v1 は、サービスレベル管理、ヘルプデスク管理、変更管理、緊急時対応計画、さらにはバックアップ電源の構成などの高度な技術的事項に関する指針を提供しました。 ITIL は、改善はされなかったものの、書籍を追加したことにより 1990 年代を通じて人気を拡大しました。
当初、主要な ITSM フレームワークは ITIL だけでしたが、今世紀に入ると、他の ITSM 標準が登場して競争が激化しました。 2001 年に、関連性の高さを維持するために、ITSM バージョン 2 がリリースされました。 この新しいバージョンでは、ITIL インシデント管理、IT 財務管理、IT サービス継続性管理など、新しい IT の概念とプロセスを組み込み、定義しました。 また、さまざまな IT サポートプロセスのベストプラクティスも記載されています。
2002 年までに、以下の 7 冊の ITIL v2 が利用できるようになりました。
- サービスサポート
- サービスデリバリ
- ICT インフラストラクチャ管理
- Security Management
- アプリケーション管理
- Software Asset Management
- サービス管理実装計画
2005 年の ITIL v2 用語集や 2006 年の小規模実装ガイドなどの補足リリースでは、用語がさらに明確になり、ITSM に関するインサイトが強化されました。 このバージョンですべてを網羅し、整理して、さらに堅牢で包括的なその後の ITIL v3 への足がかりを作りました。
ITSM のニーズは拡大を続け、ITIL v2 をより包括的で体系的に更新して、2007 年に ITIL v3 がリリースされました。 ITIL のこの更新バージョンは、5 冊の書籍のセットとして構成されていて、それぞれが IT サービスライフサイクルのステージに対応しています。
- サービス戦略
サービス戦略は、IT サービスライフサイクルの最初のステージです。 その目的は、IT 組織のアクションをビジネスニーズと合致させることにあります。 サービス戦略の書籍には、IT サービスの戦略管理、サービスポートフォリオ管理、IT サービスの財務管理、デマンド管理、事業関係管理の 5 つのプロセスが記載されています。 - サービスデザイン
サービスデザインは、ビジネスニーズに合わせて IT サービスを開発、変更することに重点を置いています。 これには、デザインコーディネーション、リスク管理、キャパシティ管理、サプライヤー管理など、11 のプロセスが記載されています。 - サービス移行
サービスデザイン後のサービス移行フェーズでは、サービスを構築し、組織の IT インフラストラクチャに展開します。 この書籍は、変更管理、プロジェクト管理、アプリケーション開発、リリース管理、展開管理など、8 つのプロセスに対応しています。 - サービスオペレーション
サービスオペレーションは、オペレーショナル IT サービスの効率的な提供を確実に行います。 この書籍には、6 つのプロセス (イベント管理、インシデント管理、要求管理、アクセス管理、問題管理、施設管理) と 4 つの機能 (IT サービスデスク、技術管理、アプリケーション管理、IT 運用管理) が記載されています。 プロセスと機能は、サービスオペレーションのみに含まれています。 - 継続的サービス改善
CSI は、サービスライフサイクルの最終ステージです。 サービスを定期的にレビューして、改善の機会を特定します。 サービスレビュー、プロセス評価、CSI イニシアチブの定義、CSI イニシアチブの監視といった 4 つのプロセスで構成されています。
ITIL v3 では、ITIL フレームワークが大きな進化を遂げ、より構造化された包括的な ITSM へのアプローチを提供しています。 そのライフサイクル指向のビューにより、戦略から継続的な改善に至る IT サービス管理のさまざまな側面を結び付けています。 ITIL 3 は、最新の ITSM プラクティスの形成に役立っており、IT 組織が価値に沿ったサービスを事業に提供するための明確な指針と構造を提供しています。
ITIL 3 が ITIL の最新バージョンだった期間は、2007 年から ITIL v4 が最終的にリリースされた 2019 年までです。 ITIL 4 では、ITSM に対する体系的なアプローチにより、IT 環境の安定性、コストの削減、リスクの認識の向上、カスタマーサポートの強化を図っています。 ITIL v4 の手法では、プロセスの自動化、サービス管理を統合して IT 部門以外に拡大すること、組織全体のコラボレーションとコミュニケーションの改善に重点を置いており、従来のサービスライフサイクルの先までを包括的に対象としています。
ITIL 4 の包括的なアプローチは、価値提供を成功させるために不可欠な以下の 4 つの要素を重視したモデルに基づいています。
- 組織と人
組織の構造やヒューマンリソースと戦略全体との整合性 - 情報とテクノロジー
テクノロジーソリューションの連携とデータの効果的な管理 - パートナーとサプライヤー
外部事業体とのコラボレーションによるシームレスなサービスデリバリ - バリューストリームとプロセス
プロセスとバリューストリームを管理してニーズを価値に変換
このモデルは以前のバージョンとは大きく異なっており、単なる IT サービス管理から包括的な価値主導型アプローチへと変化しています。
ITIL 4 フレームワークの中心となるのは、サービス価値システム (SVS) です。SVS は、さまざまなコンポーネントを連携させて価値の共創を促進する新しいモデルです。 SVS がもたらす柔軟なアプローチは、急速に変化するビジネス環境への適応を可能にします。 ITIL v4 には、アジャイルや DevOps など、最新のソフトウェア開発手法と親和性のある次の 7 つの指針も導入されています。
- 価値に焦点を当てる
価値の創造と最大化を重視します。 - 今いる場所から始める
既存のリソースを活用し、段階的に発展します。 - フィードバックで繰り返し進歩する
反復的なアプローチを採用し、フィードバックから学びます。 - コラボレーションを行い、可視性を促進する
コラボレーションを促進し、透明性を維持します。 - 包括的に考えて作業する
システムの包括的なビューを利用します。 - シンプルな状態と実用性を維持する
可能な限りシンプルにします。 - 最適化と自動化
最適化と自動化によって効率を高めます。
同様に、ITIL 4 のガバナンスは、組織のコントロールと整合性の維持において重要な役割を果たします。 これは次の 3 つの重要なアクティビティを通じて実現されます。
- 指揮
戦略とポリシーを定義して実装する - 監視
プラクティスと手順を監督し、目標との整合性を確保する - 評価
組織の戦略とポリシーを定期的にレビューして更新する
ITIL v4 で実施された最も基本的な変更の 1 つは、ITIL のプロセスを「プラクティス」に再編成して名前を変更したことです。 プラクティスは 3 つのカテゴリーに分類されます。
- 戦略管理、リスク管理、プロジェクト管理などの一般的な管理プラクティス
- ビジネス分析、サービス設計、インシデント管理など、サービス管理のプラクティス
ITIL 認定は、世界的に認められた資格で、ITSM に関する個人の理解と専門知識を証明するものです。 ITSM の原則がビジネス戦略とどの程度整合しており、効果的なサービスデリバリにどの程度貢献しているかをこれらの ITIL 認定が証明します。 ITIL 4 の導入に伴い、認定制度が最新の IT とデジタルサービスのプラクティスに対応するように刷新され、基礎知識から専門知識に進むパスが提供されています。
ITIL 4 は、認定への 3 つのパスと 2 つの追加拡張モジュールを提供しています。
エントリーレベルの ITIL 4 Foundation 認定は、IT とデジタルサービスデリバリの重要な概念に関する初歩的な知識を対象としています。 このステージでは以下を行います。
- 最新の IT 組織とデジタルサービス組織のオペレーションを検証する
- バリューストリームの速度と効率を向上させる方法に対処する
- 文化または行動の原則の重要性を確認する
- サービス管理の基本的な用語と概念の概要を説明する
Foundation ステージを基に構築された ITIL 4 Managing Professional (ITIL MP) では、管理の専門家が以下の行うために必要な実践的な知識と技術的な知識を掘り下げます。
- IT 対応サービスの作成、提供、サポート
- ステークホルダーの価値の推進
- IT の高速化
- IT の成功を実現するワークフローとチームの指揮、計画、拡張
ITIL Strategic Leader 認定は、より戦略的な視点を提供することで、IT 管理者が戦略に大きな影響を与え、戦略を指揮できるようにします。 この認定は、以下の 2 つのコンポーネントから成ります。
- 戦略的計画策定と継続的な改善に重点を置いた ITIL 4 Strategist Direct, Plan, and Improve
- IT とデジタルの戦略をビジネス目標に沿わせることに重点を置いた ITIL 4 Leader Digital and IT Strategy
ITIL 4 には、主な認定パスに加えて、2 つの専門的な拡張モジュールがあります。 応募の前提条件がなく、新しいテクノロジーに関するより深いインサイトを提供します。
- ITIL 4 Specialist: Sustainability in Digital and IT は、デジタルと IT のサービスが環境に与える影響を理解して管理することを目標としています。
- ITIL 4 Specialist: Acquiring and Managing Cloud Services は、ビジネス戦略におけるクラウドテクノロジーの統合を探ります。
ITIL の実装は複雑な作業になる可能性があります。 ITIL v4 だけで、管理全般、サービスの管理、技術の管理にわたる 34 の異なるプラクティスが含まれています。これらすべてを一度に実装すると、混乱を招くおそれがあります。 したがって、ITIL の実装を成功させるには、慎重で段階的なアプローチが不可欠です。 以下は、検討に値するベストプラクティスです。
ITIL の導入に着手する前に、導入の推進要因を特定することが重要です。 ビジネスリーダーは、ITIL 実装の明確で具体的な理由を持ち、ITIL が組織にどのようなメリットをもたらすかをしっかりと理解している必要があります。 顧客満足度の向上、サービスコストの削減、その他の目標のいずれであっても、明確な目標は、実装プロセス全体の指針となります。
ITIL は単なるマニュアルではありません。効果的に実装するためには専門知識が必要です。 ITIL 認定と実証済みの専門知識を持つ個人がイニシアチブを主導する必要がある場合があります。 トレーニングへの投資や人員配置の変更を実施して、ITIL のコンプライアンスに必要な知識を得ることも関わってくる可能性があります。
ナレッジと専門知識を評価するものが認定評価です。 AXELOS 社が現在 ITIL の認定を担当しており、Accredited Training Organizations (ATO) が試験を実施しています。 組織の場所とニーズに応じて、認定オプションを検討することは、実装プロセスに役立ちます。
- 小規模から始めて構築する
効果が高い ITIL 導入戦略の 1 つが、小規模から始めることです。 まず、34 の ITIL プラクティスのうちの 1 ~ 3 つ程度を PoC プロジェクトとして実装します。 現在のプロセスを文書化し、導入後を再評価して、ビジネスパフォーマンスに与える影響を確認します。 価値を実証するプラクティスを徐々に展開することで、フレームワークの採用を、時間をかけて慎重に拡大できます。 - 成果に焦点を当てる
ITIL は目的ではなく、ビジネス成果を達成するための手段です。 単に実装するのではなく、ITIL コンプライアンスによって組織が実現する内容に常に焦点を当てます。 成果 (効率性の改善や顧客満足度の向上など) を測定するための測定基準を確立し、ITIL の導入が具体的なメリットにつながるようにします。 - コラボレーションを徹底する
効果的な ITIL の実装には、全員が携わる必要があります。 単に ITIL の電子書籍集を読むのではなく、組織全体で新しい手順とベストプラクティスを採用することが重要です。 コンサルティング、トレーニング、認定に関わり、チームに移行に向けて準備させることを検討します。 - レビュー、評価、改善
ITIL の導入前と導入後に、解決しようとしている問題を定期的にレビューして評価し、継続的サービス改善の方法を評価します。 評価を継続することで、ITIL が組織の ITSM アプローチの一部である限り、ITIL は組織のニーズとの整合性を維持し、その付加価値が持続します。
IT は長い間、ビジネスにおいて重要な役割を果たしてきましたが、今日では、IT と組織の目標の整合性がこれまで以上に重要になっています。 IT 環境が複雑化すると、さらに効果的な方法を見つけて、プロセスを簡素化し、幅広いビジネス目標に合わせて調整しなければなりません。 ITIL は、このニーズを満たす戦略的フレームワークです。 現代の組織は、ITIL の構造化された手法を採用することで、生産性の向上、IT とビジネスの目標の整合性確保、変化に簡単に適応できる柔軟性の高いサービス環境を享受できます。
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