「カンバン」とは、ソフトウェア開発で使用されるフレームワークです。カンバンでは作業アイテムが可視化され、リアルタイムでのコミュニケーションと透明性を維持できます。
カンバンは製造業界で誕生したシステムであり、バリューチェーンの開始 (ほとんどの場合サプライヤー) から消費者に到達するまで、バリューチェーン全体を通して管理します。 これにより、カンバンシステムでは企業はサプライチェーンの供給中断、過剰在庫、ボトルネックの発生を回避することができます。 継続的な監視により、カンバンシステムではデリバリリードタイムの短縮が促されます。
カンバンはその誕生以降、製造業界から拡大し、ソフトウェア管理など他の製造システムにまで普及しています。 開発者は継続的な監視を行うことで、視覚化されたワークフローで開発から本稼働までのサプライチェーンを管理できます。 ソフトウェア開発におけるカンバンの最終目標は、より効率的なデリバリ時間の実現と、本稼働での中断の回避です。
カンバンは長年の利用を経て発展し、多くの人々の協力によりカンバンの原則が確立されました。 カンバンの原則は 4 つの主なカテゴリに分類されます。
すでに確立されているプロセスを変えるのは難しい場合があるため、この原則は、影響が出ない方法で変更を統合することを目的としています。
今すでに使われているものから始める
変更管理の最初の原則は、既存のものから始めるということです。 カンバンは、現行プロセスを全面的に変えることなく統合するように設計されています。 この原則は、既存のプロセス、役割、責任の価値を認識し、それぞれに関して有効なものを維持することです。 既存のものから始めることで、そこに内在する問題も明らかになります。
段階的に進む変化を追求することに同意する
カンバンの導入では、他に影響が出ないことが期待されています。 このためには、変更が段階的である必要があります。 カンバンでの変更は、コラボレーションを導入して、フィードバックの収集と並行して行われます。 広範囲にわたる全面的な変更は、抵抗に遭う可能性があります。このことから、徐々に進んでいく変化を小規模で段階的に行うことが理想的です。
あらゆる従業員レベルでリーダーシップの発揮を奨励する
リーダーシップは、カンバンと変更プロセスの導入の一部です。 リーダーシップの発揮は、上級マネジメントに限られるものではありません。 すべてのレベルでリーダーシップを奨励することで、継続的改善の考え方が全員に浸透し、この考え方とカンバンとの組み合わせによって企業の成長が促されます。
カンバンは、企業がサービス指向のアプローチを策定できるようにするフレームワークです。 カンバンを有効に活用するには、顧客のニーズを深く理解し、それらのニーズに対応するためにプロセスを継続的に改善する必要があります。
顧客のニーズと期待を重視する
成功している組織の主要な目標は、高品質の製品やサービスを顧客に届けることです。 顧客のニーズと期待を理解することは、カンバンと企業プロセスの中心にあるべきです。
作業を管理する
作業の管理とは、マイクロマネジメントを心配するのではなく、サービスのネットワークとやるべき作業が適切にまとめられており、管理されているようにすることです。 やるべき作業と、それをいつまでに完了する必要があるかを全員が理解しているようにします。
サービスネットワークを定期的に見直す
カンバンでは、組織が顧客に提供した成果を改善していくことを奨励しています。 現在のサービスネットワークを見直すことは、成果を改善し、品質が高い成果を提供するという最終目標に向かってプロセスがどのように機能しているかを評価する機会となります。
カンバンではフローの概念が可視化されます。 カンバンボードのカードは、システムを一様に通過する必要があります。これにより、カンバンシステムでは発生している障害を明らかにでき、それらを詳しく調査できます。 フローの概念は、改善と効果的な運用において極めて重要です。 企業はフロー測定基準を測定し、その改善に取り組むことで、デリバリプロセスのスピードを劇的に向上できます。 カンバン手法は、プロセスフローによる継続的改善の実現に役立ちます。
企業では、従業員が抱える WIP (進行中の作業) が多すぎる状況があまりにも頻繁に起こっています。 カンバンの基本原則は、WIP の数を制限し、従業員が一度に 1 つの WIP に取り組み、WIP を完成してから次の作業に移るようにすることです。 この原則により、複数タスクの同時進行を低減し、プロセスをスムーズに進めることができるようになります。
あらゆる製品やソフトウェアの開発にカンバンを利用するメリットは多数あります。 カンバンによって実現する可能性があるメリットは次のとおりです。
- フローの可視性の向上
カンバンは、開発者がプロセスのフローを視覚化できる視覚的な手法です。 カンバンボードは全員が確認できる情報ハブになります (現状を把握できないタスクの数の低減にも役立ちます)。 - デリバリにかかる時間の短縮
カンバンは現行のプロジェクトとワークフローをより明確に可視化するため、ボトルネックを特定して速やかに解消するために使用できます。 プロジェクトの一部が中断した場合に、容易に察知して修正できます。 ワークフローを改善してボトルネックを修正すると、プロジェクトのデリバリにかかる時間が改善されます。 - ビジネス目標とビジネス遂行の整合性を取る
プロジェクトの目標と、プロジェクトの実際の進行具合の間に不一致が生じることがあります。 カンバンではこの 2 つの要素を合致させることができます。 カンバンプラクティスの目的は、日常的な作業と戦略的目標の整合性を取ることができるようにすることです。 目標と遂行の整合性を取ることで、企業がアジリティを維持し、業界や顧客の変化に対応できるようになります。 - 予測可能性の向上
予測が可能になると、組織はビジネスに関する決定をより適切に下し、より正確に日程を計画できます。 カンバンにより、企業はプロセスのワークフローを明確に把握できるので、タイムラインと結果をより適切に予測できます。 - 規模と依存関係の管理能力の向上
依存関係を管理することで、開発のワークフローとプロセスに関するインサイトを得ることができます。 規模と依存関係の管理が向上すると、企業は社内のプロセスとどのように拡張させるかをより詳しく理解できるようになります。 - 顧客満足度の向上
カンバンにより、時間とエネルギーの浪費が削減され、顧客に対してより優れた最終成果を提供できるようになります。 目標は、顧客の期待に応え、さらにはそれを上回ることです。継続的な顧客満足度の向上のためには、プロセスで発生した問題をすべて解決する必要があります。
カンバンは、チームが段階的な改善を重ねていくことができるようにする変更管理システムです。このように改善を行っていくことで、カスタマーエクスペリエンスの向上につなげることができます。 カンバンの鍵は、段階的な変化をシームレスに統合できるために、抵抗がほとんど生じないことです。
カンバンでは最初にワークフローを視覚化します。 通常は、カンバンボードを使ってワークフローを視覚化します。 ボードにはホワイトボードや掲示板 (デジタルボードも可) を使用でき、完了する必要がある個々のタスクを表す付箋やカードを貼り付けます。 一般に、ボードは「やるべきこと」、「進行中」、「完了」という 3 つのカテゴリに分割されます。 「やるべきこと」の列にはまだ開始していないタスクが示され、「進行中」の列にはチームメンバーが現在取り組んでいるタスクが示され、「完了」の列には完了したタスクが示されます。
シンプルな視覚化によって透明性と作業の配分を向上できます。 カンバンボードでは、必要に応じて詳細なワークフローを示すことができます。視覚化されたカンバンワークフローは、ボトルネックを洗い出し、チームがボトルネックを解消するのに役立ちます。
- ワークフローを視覚化する
最初に、チームにはワークフローを視覚化するためのカンバンボードと、タスクを表すカードが必要です。 ボードを効果的に作成するには、A 地点から B 地点に進むためには何が必要かを理解しておくことが大切です。ワークフローが作成されたら、チームメンバーはプロジェクトの進捗を表すため、3 つの列の間でタスクを移動できます。 カンバンボードは、企業のニーズに応じてデザインが異なることがあります。 - WIP を制限する
カンバンの目標は、対応中の作業の量を対処可能な範囲に抑え、マルチタスクを回避することです。 チームメンバーが並行して取り組むことができるタスクの数を制限し、「開始したばかり」のタスクが多すぎることがないようにします。 「進行中」の列に入れることができるタスクの数に制限がないのであれば、それはカンバンではありません。 このように制限することで、見過ごされる可能性がある問題を明らかにできます。 - フローを管理する
フローの管理とは、関与する人々を管理することなく、作業自体を管理することです。 マイクロマネジメントではなく、プロセスで作業を迅速に進める方法に焦点が当てられます。 - プロセスポリシーを明確にする
改善する対象についての理解なくして、改善を行うことはできません。 プロセスを明確に定義し、公開して周知する必要があります。 有用であるとは考えられないプロセスにあえて参加する人はいないでしょう。 プロジェクトの目標を全員が理解していれば、全員がカンバンプロセスを使用してプロジェクトを進めることができます。 - フィードバックループ
アジリティを高めたい組織にとって、フィードバックループは必須です。 フィードバックループにより、組織は変更に適切に対応し、ステークホルダーが把握しておく必要のあることをすべて認識している状態を維持できます。 - 改善を協調的に実施する
変更を協調的に実施することで、継続的改善の文化を創出できます。 科学的に実証されている手法、フィードバック、測定基準に基づいて変更を実施することも重要です。
カンバンとスクラムの主な違いは、カンバンはプロセスであり、スクラムはフレームワークであることです。 カンバンでは継続的成長を重視したデリバリモデルが作成されますが、スクラムフレームワークでは作業を「スプリント」に編成することが重視されます。 カンバンではカスタマイズされたアプローチが使用され、スクラムでは事前に定義されているルールが使用されます。 どちらを選ぶかは、プロセスの特性に基づいて決まりますが、カンバンはさまざまなプロセスに合わせて調整可能です。
カンバンは適応型アプローチであり、スクラムは規範的アプローチです。
カンバンの原則は次のとおりです。
- 既存のものから始める
- 徐々に進行する変更の追求に同意する
- あらゆる従業員レベルでリーダーシップの発揮を奨励する
- 顧客のニーズを重視する
- 作業を管理する
- サービスネットワークを定期的に見直す
スクラムの原則は次のとおりです。
- 経験的
- 透明性
- 検査
- 適応
カンバンプロセスにはチームレベルのサイクルとサービス指向のサイクルがありますが、スクラムには以下のものがあります。
- 一定期間のスプリント
- スプリント計画
- デイリースクラム
- スプリントレビュー
- スプリントのレトロスペクティブ (振り返り)
カンバンには事前定義の役割は不要ですが、一部の企業はサービスデリバリマネージャーやサービスリクエストマネージャーを設けています。 スクラムには 3 つの事前定義の役割があります。
- プロダクトオーナー
- スクラムマスター
- 開発チーム
カンバンは、プロセス完了までの所要時間のサイクルタイム、WIP から完了までの進行状況、スループットの測定に焦点を当てています。 スクラムの測定基準は、速さと計画されたキャパシティです。 それぞれ測定に対する考え方が異なります。
カンバン方式を使用するには、ワークフローを可視化するためのボードが必要です。 ServiceNow Visual Task Board では、作業するプロセスをスムーズに視覚化でき、ボトルネックを特定して修正し、プロセスで作業アイテムを進めながら、透明性の高い方法で作業を示すことができます。
このようなデジタルボードの目的は、企業が現代のペースの速い環境でカンバンを利用できるようにすることです。 リモートワークによってこれまで以上に多くの変化が生じている状況で、カンバンを最大限に活用するためには、デジタルタスクボードが必要です。 Visual Task Board ではプロジェクトを視覚化する強力な機能を提供しているため、セットアップを心配せずに、組織は容易にカンバンの導入を開始できます。 ServiceNow の Visual Task Board の詳細をご覧になり、カンバン方式をご利用ください。