施設管理とは、施設の占有者の満足度向上、運用機能の最適化、物理的資産の持続可能性確保を目的として、人、スペース、プロセス、リソースを戦略に沿って割り当てることです。
施設管理には幅広い分野と役割があります。 施設管理の中心は、環境内の施設を快適に利用できるようにすることです。
施設管理の最も重要な側面は衛生と安全です。 何よりもまず、人々の安全が確保されなければなりません。 安全が保たれない換気や有毒な空気、過度な高温/低温、故障や異常動作が起こりがちな旧式の機械、不適切な火災検知・防火システム、出口と安全な避難経路を示す標識の不備、インフラストラクチャの整備不足などが危険となり得ます。
施設が適切に管理されていなければ、衛生安全だけでなく、運用やコストも危険にさらされます。 例えば、老朽化したハードウェアは、完全に動かなくなる前に交換、修理される機会が多くなり、それが運用の中断や遅延につながって収益や生産性の損失の一因となる可能性があります。
また、施設管理者は、生産性や士気に影響する可能性のあるオフィス環境において、人々をサポートする役割も担います。オフィスの配置などの側面は、安全性に大きな影響を与える規定・規制の対象となります。 事業継続性計画と緊急時計画も、運用の維持、情報の継続的な収集と分析、ダウンタイムの回避に不可欠です。 オフィスレイアウトの管理も欠かせません。例えば、トイレと給水機へのアクセス、座席配置、インフラストラクチャへの悪影響の可能性、空間利用の管理などがあります。
施設管理には、物理環境を効果的に運用するために欠かせないさまざまな機能があります。 空間やインフラストラクチャと同様に人と組織の監督も含まれます。 「人と組織」という用語は、マーケティング、会計、接客、人事、ICT (情報通信技術)、清掃などを含む幅広い分野を対象とします。施設管理者はそれらの活動を調整してサポートするうえで重要な役割を果たします。
施設管理には、作業を行う物理的な場所と、その作業を可能にする人やリソースを管理する際のあらゆる側面が含まれます。ただし、施設管理においてはハードサービスとソフトサービスが区別されています。 ハードサービスとは、HVAC システムのメンテナンス、配管、電気システム、建物のセキュリティなど、施設の物理的・構造的な側面を指します。 ハードサービスの例には、設備の定期点検実施、防火性の確保、建物入出コントロールシステムの管理などがあります。
一方、ソフトサービスは構造には関連せず、占有者の快適さと満足度に焦点を当てています。 用務サービスや清掃サービス、ケータリング、造園、インテリアデザインなどが含まれます。 ソフトサービスは、従業員にとって快適で生産性の高い職場環境の構築に貢献します。
施設サービスと職場サービスを区別することも同じように重要です。 施設サービスには、主に物理空間やインフラストラクチャの管理とメンテナンスが関わります。職場の設計、建設、リース、占有計画、家具調達に関連するタスクが含まれます。 施設管理者は、組織が目的を達成するのに役立つ物理環境を確保します。
職場サービスには、職場利用の戦略的計画、コラボレーションが盛んでインクルーシブな職場文化の醸成、従業員の満足度と生産性を高めるサービスの提供など、物理空間以外の幅広い機能が含まれます。 職場サービスは、組織の価値観や目標に沿った魅力的な職場環境を構築するために存在します。
- 防火性
火災は命、生産性、資産を失う原因になり得ます。 施設管理者は、火災の緊急事態に落ち着いて整然と対応できるように、しっかりした計画を常に整備します。 その後、計画を明確に伝え、火災の鎮火や安全な避難方法の提供に必要なツールを配置しておく必要があります。 - セキュリティ
施設管理者は人と資産の保護を監督します。これにはセキュリティハードウェア、防犯カメラや、警備員などの配置可能な物理的保護が含まれます。
- 事業継続性計画の作成
火災や盗難、ビジネスオペレーションの完全な機能不全に備えて、施設管理者は、時間の損失と業務の中断を最低限に抑え、事業継続性を支援する計画を整備しておく必要があります。 これには、リカバリサイト、バックアップ電源、バックアップソフトウェア、バックアップハードウェアなどが含まれます。 - メンテナンス
施設管理者は、安全とスムーズな運用のために、適切なメンテナンスが速やかに実施されるよう対処する必要があります。これには、照明の交換から建物自体の維持、塗装、装飾、必要な修理、配管、建築の安全規制への対応など、あらゆるものが含まれます。 - 環境
組織には環境衛生と安全が不可欠です。 何かが安全でなければ、従業員の病気や負傷を招いたり、危険な状況に関連して従業員が健康上の問題を抱えたりする可能性があります。 業務が中断され、安全を取り巻くすべてのものがリスクにさらされるだけでなく、企業が法的責任、損害賠償責任を問われることにもなります。 - スペースの変更
機器の変更、業務の引き継ぎ、スタッフの増加はオフィスレイアウトの変更につながる可能性が常にあります。 施設管理では十分に注意してオフィスをレイアウトする必要があり、遵守すべき法規があります。 例えば、各スタッフには必要な広さを確保します。建物は消防法を遵守する必要があります。出口と安全な避難経路を示す標識が必要です。適切な温度コントロール、室内の適切な換気、エリアでの十分な照明を確保し、飲料水やトイレなどの設備を整備、メンテナンスする必要があります。 - 清掃
不衛生なエリアは責任問題になりかねないだけでなく、従業員の士気の低下にもつながります。 清掃は一般に、営業時間外に行われます。外観、カーペット、トイレ、ごみ箱の適切な清掃を、週の中の一定間隔で実施する必要があります。
施設管理プログラムを成功させるには、その範囲を完全かつ包括的に理解する必要があります。リーダーは、アクティビティへの人材の割り当てに全面的に関与して行うことができます。 大企業レベルの組織については、最新の施設管理の範囲は、次のようないくつかの重要な分野に区分でき、その一部は重複しています。
管理サービスには、効率的な施設運用に必要な管理と組織に関するさまざまな機能が含まれています。 これらのサービスには幅広い職務が関わり、施設が目的を満たし、財務的に持続可能な状態を維持できるように各人がサポートします。
- 計画立案と予算業務
これには、施設管理業務に関して財務の持続可能性を確保するための年間運用予算と長期資本予算の策定が含まれます。 物理的環境の維持と改善のために財務ロードマップを設定します。 - 組織の監督
管理サービスは、効率的な施設管理業務のためのフレームワークを確立します。 組織の構造化、ワークフローの最適化、パフォーマンス評価などのタスクが含まれます。 - 財務管理
請求書の処理、差異分析の実施、財務説明責任の確保が含まれます。 財務リソースが効果的に割り当てられ、利用されるようになります。
施設管理における建物サービスは、企業の物理的な建物と関連システムのメンテナンス、運用、最適化に特化して設計されています。 その一部をご紹介します。
- メンテナンスと維持
建築サービスは、建物を構成する要素の適切な機能を確保し、現在の設備の寿命を延ばすことに重点を置いています。 施設を最適な状態に保つための定期点検、修理、予防メンテナンスなど、多数のタスクと職務が関連します。 - 暖房、換気、および空調 (HVAC)
冷暖房システムを管理し、占有者のための快適な室内環境を確保します。 HVAC のメンテナンス、エネルギー効率対策、冷暖房関連の問題への対応などがあります。 - 電気と照明
建物サービスは、安全性と効率性が向上するように電気システムと照明を監督します。照明の品質管理、電気安全対策、電気システムのメンテナンスすべてが含まれます。 - 防火性
火災の危険から占有者を保護するためには、防火対策を実施することが重要です。 建物サービスには、火災警報システム、消火器のメンテナンス、火災避難計画が含まれます。 - 屋根システム
建物構造の完全性を維持するための予防型メンテナンスと修理への対応が含まれます。 雨漏りや構造上の損傷を防ぐためには、適切な屋根のメンテナンスが不可欠です。
占有者サポートサービスは、施設を利用する個人の満足度とパフォーマンスを向上させるように設計されています。 以下は再現できるアクションの一例です。
- 用務サービス
占有者サポートサービスは、占有者の満足度向上のために、清潔で衛生的な環境を維持することに重点を置いています。 清掃スケジュール、廃棄物管理、衛生基準が含まれます。 - 造園
屋外スペースの管理はこのカテゴリに分類され、美観を高め、従業員と訪問者を歓迎する雰囲気を提供します。 - イベント/会議のセットアップ
占有者サポートサービスは、イベントと会議の円滑な手配を容易にしてビジネスアクティビティをサポートし、物理環境がイベント要件を満たすようにします。 - 緊急対応
自然災害やセキュリティインシデントなどの予期しない危機への迅速かつ効果的な対応を約束することは、占有者を保護するために不可欠です。 緊急対応計画とプロトコルは、このサービスの一部です。 - セキュリティ
人と資産を保護するためのセキュリティ対策の導入は、最優先事項です。 入出コントロール、監視システム、警備員が含まれます。
施設管理には多くの側面があり、組織の目標達成に向け物理環境を効果的に運用するためには、さまざまなロールと職務が必要です。 ロールは、大きく 4 つの基本分野に分類できます。
策定された目標の達成を施設でサポートする際に主導的に取り組む戦略的な施設管理のロールには、CFO、エグゼクティブディレクターなど、複数の経営幹部職が含まれます。 これらの個人は、リソースの提供、予算の割り当て、戦略的プラットフォームの作成により、企業の広範な取り組みに沿った施設になるように支援します。
運用に関するロールは、通常、運用担当ディレクターや施設管理者による監督を受けて、施設関連のタスクとサービスの日々の管理に携わります。 このロールは、日常のアクティビティ調整や、メンテナンスと修理の監督、ベンダーとの関係の管理を行います。 運用リーダーはイニシアチブを推進し、イニシアチブの成功を確認し、パフォーマンスを測定し、運用上の問題があればチームに連絡して解決します。
建物の運用を担当する社内メンテナンススタッフが担う戦術的なロールは、施設全体の成功に不可欠です。 これらの専門家は、建物の占有者からの要請に応じた建物システムの軽微なメンテナンスなど、基本的なサービスを実行します。 戦術的なロールは、施設の機能を中断することなく円滑に運用するために存在します。
最後は、テクニカルサポートのロールです。 施設における特定の要素の管理に関する専門知識を持つ専門家とスキルを持つ業者で構成されています。 HVAC 技術者、電気と照明の専門家、防火の専門家、屋根ふきの技術者、施設管理コンサルタントなどの専門家が、技術ガイダンス、サービス、修理のソリューションを提供します。 テクニカルサポートのロールがなければ、施設の複雑な技術システムは維持できません。
最後は、テクニカルサポートのロールです。 施設における特定の要素の管理に関する専門知識を持つ専門家とスキルを持つ業者で構成されています。 HVAC 技術者、電気と照明の専門家、防火の専門家、屋根ふきの技術者、施設管理コンサルタントなどの専門家が、技術ガイダンス、サービス、修理のソリューションを提供します。 テクニカルサポートのロールがなければ、施設の複雑な技術システムは維持できません。
施設管理部門の組織構造は、その有効性と効率において不可欠な要素です。組織構造により、部門内での責任の分担、コミュニケーションフロー、意思決定の方法が決定されます。 施設管理の構造には、主に次の 3 種類があります。
機能別の構造は一般的に、多様で複雑な施設を持つ大規模な組織で見られます。 この場合、特定のチームまたは個人が、スペースの計画、家具の管理、設計と建設、予防型メンテナンス、管理サービス、屋外スペースの管理、資産管理、オフィス移転、ヘルプデスクサポートなど、施設の特定の機能を担当します。 このため、各機能分野の範囲内における専門的な知識とスキルセットに集中できます。
統合された構造は、コンパクトなポートフォリオや一棟の建物を持つ小規模な組織でよく見られます。 ただし、地理的に分散した施設を持つ大規模な組織にも適用できます。 このモデルでは、施設部門内の 1 個人が幅広い機能分野の職務を担います。 スペース計画など、すべてを監督するわけではないこともありますが、所有スペースまたは賃貸スペースのいずれについても、施設管理に関連するさまざまなアクティビティが職務として含まれます。
マトリクス構造は、多くの場合、さまざまな場所に多様な施設を持つ大規模な組織に導入されています。 機能別の構造や統合された構造とは異なり、マトリクス構造には明確ではっきりとした上下関係が存在するとは限りません。 この構造では、一元化された共有サービスグループが存在して、さまざまな契約や事業部門に割り当てられたオペーション遂行チームにサポートサービスを提供する場合があります。
施設管理者は、組織が利用する職場環境を監督・維持するうえで不可欠な存在であり、その職務上、多様なスキルセットが必要とされます。 効果的な施設管理に必要な最も関連性の高い能力は、次のとおりです。
- プロジェクト管理
施設管理者は、多くの場合、改修、拡張、アップグレードに関連するプロジェクトに対応します。 プロジェクト管理スキルは、これらのイニシアチブを計画して実行し、期限内に予算の範囲内で完了するために重要です。 - リーダーシップと戦略
施設管理者は、チームに対してリーダーシップを発揮し、施設管理の戦略的計画を策定する必要があります。 このスキルは、施設の運用と組織の幅広い目標を整合させるうえで重要な役割を果たします。 - 運用とメンテナンス
施設管理者は、日常的な運用と物理的資産の継続的なメンテナンスを担当するため、施設の運用方法と、どのような維持が必要かについての深い知識を持っている必要があります。 - 財務とビジネス
管理者は、予算を編成し、リソースを割り当て、施設の管理に関連した財務上の意思決定を行えるように、コスト管理と財務の持続可能性を理解する必要があります。 - サステナビリティ
施設管理において、サステナビリティはますます重要になっています。 施設管理者は、施設が環境に与える影響を軽減し、運用コストを削減し、施設管理と企業の社会的責任目標を一致させるために、環境に配慮した手法、省エネのイニシアチブ、環境に責任を持つソリューションを導入する必要があります。 - コミュニケーション
施設管理者が、占有者、ベンダー、経営幹部など、さまざまなステークホルダーと対話するには、効果的なコミュニケーションが不可欠です。 - リスク管理
事前対応型のリスク管理により、占有者を満足させ、組織の資産を保護し、法規制コンプライアンスを確保します。 施設管理者は、施設の運用、安全性、規制コンプライアンスに関連するリスクを特定して軽減する必要があります。 - 不動産
不動産に関する専門知識は、施設管理者が、不動産の利用、賃貸の交渉、不動産ポートフォリオの最適化について、情報に基づいた意思決定を行うのに役立ちます。 施設管理者はしばしば、不動産市場の動向を理解して、企業の不動産を物理的資産として監視する必要に迫られます。
施設管理にテクノロジーを組み込むことが今ほど重要だったことはありませんでした。 職場管理システムがデータを収集して意思決定を促進するのが理想的です。施設管理者の務めは、施設に最適な技術システムを特定、実装し、最大限の情報に基づく意思決定を支援することです。
施設管理者は、さまざまなソフトウェアの選択肢の調査、コストと ROI の計算、メリットとニーズの検討を行い、特定のソフトウェアの機能を理解します。 最新のテクノロジーと、それをソフトウェアに組み込む方法を検討します。
組み込み可能なテクノロジーの良い例が、ネットワーク接続デバイス、つまりモノのインターネット (IoT) です。 IoT デバイスはデータを自動的に収集し、施設管理ソフトウェアに送信します。ソフトウェアはレポートを生成し、データに基づく意思決定のために探る価値があるデータ傾向を見つけます。
IoT デバイスの例を挙げます。
- 一酸化炭素センサー:環境内でこの有毒ガスを注意深く観察し、負傷や死亡を防ぎます。
- 水・電力消費量メーター:使用状況のトラッキングにより、無駄をなくし、サステナビリティを向上します。
- サーモスタット:温度を自動調節して安定状態を保ち、無駄をなくし、環境内の温度調節を促進します。これにはオフィスの室温や、機械の多い室内の理想的な温度などが含まれます。
- モーションセンサー:人の存在の検知に応じて照明をオン/オフにする機能を活用します。
- 火災検知システム:火災が広がって回復不能な損害を引き起こす前に検知、抑止します。
- RFID トラッカー:建物全体で人の動きを追跡し、特定エリアへのアクセスを制限します。
施設管理ソフトウェアにも次のようなトレンドがあります。
- 人工知能 (AI):予測分析は、必要な意思決定に関する現在と未来のインサイトをもたらすことができます。 機器の損傷や能力低下を検出し、動かなくなる前に修理や交換を行うことができます。 AI は意思決定プロセスを加速し、正確に実行できるため、ヒューマンエラーも低減できます。 また、AI システムは、リソースの使用状況、パフォーマンス、満足度、従業員のパフォーマンスに関する情報を収集します。
- クラウドコンピューティング:ソフトウェアは急速にクラウドに移行しています。ローカルネットワークやサーバーの外部からデータとソフトウェアにアクセスできるため、施設管理は容易になる一方です。作業もデータも移植可能です。使用可能なストレージと分析スペースの拡大により、施設の拡張は容易になります。
ServiceNow による施設管理ソフトウェアの詳細をご覧ください。 ServiceNow 設備サービス管理は、施設管理方法を簡素化します。施設のメンテナンス支援や、スタッフと運用の安全とセキュリティの促進などにより、成長とイノベーションを促進します。 詳細は今すぐ ServiceNow へお問い合わせください。
ワークプレイスサービスデリバリで、従業員向けに新しいハイブリッドな職場を実現する方法について詳しく説明します。