NLP とは?

自然言語処理 (NLP) は人工知能の一分野で、コンピューターが人間の言語を理解し、生成できるようにするものです。 この技術は、計算言語学と機械学習を活用してテキストと音声を分析し、人間とコンピューターの効果的なやり取りを可能にします。

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NLP について知っておくべきこと
NLP タスクとは 自然言語処理の重要なユースケース NLP が重要な理由 NLP に関する主な考慮事項 NLP のメリット NLP の仕組み ServiceNow による NLP

人工知能という概念が最初に導入されて以来、効果的な人工知能の開発において自然と障壁になっていたのが言語です。 簡単に言えば、機械は人間と同じ方法でコミュニケーションを取るわけではないということです。 人間の言語における曖昧さ、ニュアンス、多層的な含意には、機械の基礎となる厳格な構造と明確な定義が欠けています。 これこそコンピュータープログラミングに特殊なコーディング言語が組み込まれている理由の 1 つです。コンピューターに何をすべきかを指示したい場合は、非常に具体的に伝える必要があるのです。 もっと正確に言えば、NLP が開発されるまではそういう状況でした。

NLP は Natural Language Processing (自然言語処理) の略で、人間のコミュニケーションと機械の理解の橋渡しをすることを目的とするものです。 NLP は、コンピューターシステムが人間とほぼ同じように自然言語を解釈できるようにし、成長し続ける人工知能分野の基盤技術となっています。

NLP の起源は 20 世紀初頭、フェルディナン・ド・ソシュールが言語学における最も初期の考えのいくつかを提示したことにまで遡ります。 その進化は 1950 年代のアラン・チューリングの研究によって続き、今日の洗練された NLP システムへの道が開かれました。 計算能力と AI 技術の進化に伴い、NLP は独自の分野に成長し、ニュアンスなどすべての要素を含め、複雑な人間の言語を解釈して再構築する能力が特徴となっています。

 

すべて展開 すべて折りたたむ NLP タスクとは

自然言語処理の理想的な成果は、人と機械が、人間同士が会話するのと同じくらい簡単にコミュニケーションを取れるようになることです。 そのために必要なステップには、テキストの解析と理解から人間味ある応答の生成まで、多くの小さなタスクが必要です。 次の各タスクは言語の特定の側面に対応しており、人間の最も複雑な言語のやり取りを機械が処理することも可能にします。

感情分析

感情分析は、言葉の背後にある感情的なトーンを検出するために使用される技術です。 これは特にソーシャルメディアのモニタリング、マーケティング、カスタマーサービスに有益で、反応の背後にある消費者の意見や (言葉に表れないことが多い) 感情を理解するのに役立ちます。 テキストデータを分析することで、製品、ブランド、サービスに対する消費者の感情を測定し、それに応じて戦略を調整できます。

音声認識

音声認識は音声言語をテキストに変換でき、デジタルアシスタントや音声自動応答 (IVR) システムなどのレスポンシブな音声起動型システムを構築するための基盤となります。 このタスクでは、音声の音波を分析し、アルゴリズムを使用して内容を解釈した上で文書形式に変換し、その後の処理に利用しやすいようにします。

文法的タグ付け

文法的タグ付け (品詞タグ付けとも呼ばれる) では、文の中の各単語を、名詞、動詞、形容詞などの文法的役割に従ってラベル付けします。 これによりシステムが文の構造を理解しやすくなり、言語分析の精度が向上します。 タグ付けは、テキスト修正ツールや高度な内容分析システムなど、文法の深い理解を必要とするさまざまな言語処理アプリケーションに不可欠です。

固有表現抽出

固有表現抽出 (NER) は、テキスト内の主要な要素を識別して、人名、組織名、地名、さらに時間、数量、金額の表現などの事前定義されたカテゴリに分類します。 NER は、コンテンツ推奨システム、大規模なデータベースからの情報取得、自動化されたカスタマーサポートシステムで使用され、非構造化データから適切な詳細情報を抽出します。

共参照解析

共参照解析は、テキスト内の同じエンティティを参照するすべての表現を検出し、語られている内容を完全かつ曖昧さを排除して理解できるようにします。 これは、文書の要約、質問への回答、対話システムでのコンテキストの維持などのアクティビティに不可欠です。

自然言語生成

自然言語生成は、レポート生成、自動コンテンツ作成、データの読み取り可能なテキストへのリアルタイム翻訳などのアプリケーションで、構造化データを自然言語に変換します。 このタスクは、人間の言語生成プロセスを反映しており、人間の応答とほぼ区別がつかない応答を機械が作成できるようにします。

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自然言語処理の重要なユースケース

機械による自然言語の理解や生成という基本的な概念は比較的単純に思えるかもしれませんが、さまざまな分野で無限の可能性を開きます。 NLP の重要なユースケースをいくつかご紹介します。

  • 機械翻訳
    NLP は単一の言語に限定されるものではありません。機械翻訳により、デジタルシステムがテキストや音声を特定の言語から別の言語に自動的に翻訳できるようになるため、グローバル市場や多様な人々の間でのコミュニケーションが容易になります。
  • 仮想エージェントとチャットボット
    これらのプログラムは、人間のユーザーとの会話をシミュレートして、カスタマーサポートの提供、情報の収集、タスクの自動化を行います。 ユーザーと直接やり取りできるデジタルシステムにより、問題解決の迅速化とアクセシビリティの向上を実現します。
  • 顧客の感情分析
    このアプローチでは、詳細な感情分析を使用して、ソーシャルメディアのコンテンツ、コールセンターの音声記録、顧客の認識や市場の状況に関する価値あるインサイトに隠れているコンテキストと意味を詳しく把握します。
  • スパム検出
    スパム検出は、テキストパターンを分析し、不審なコンテンツや迷惑なコンテンツにフラグを付けることで、不要なメールを特定してフィルタリングします。これは、メールの有用性とセキュリティを維持するために不可欠な機能です。
  • テキストの要約と分類
    テキスト要約では、NLP 技術を使用して、長い文書や複雑な文書の要約バージョンを自動的に生成します。これにより、人間の読者はコンテンツをすべて読まなくても重要なポイントを容易にすばやく理解し、テキストを分類できます。
NLP が重要な理由

上記のユースケースは、NLP ができることのごく一部にすぎません。 自然言語処理は、複数の業界を変革し、事業運営方法や購入者とのエンゲージメントを進化させる可能性を秘めています。 組織がさまざまなソースから収集する非構造化データが増えるにつれて、実用的なインサイトを抽出し、重要なプロセスを自動化する上で、NLP はこれまで以上に大きな役割を果たすようになっています。 このことにより、組織が意思決定のアプローチを強化し、カスタマーエクスペリエンスを大幅に向上させる機会が生まれています。

同時に、NLP 技術は、言語の障壁を克服し、地理的に近接した地域以外の顧客や市場にリーチを拡大するのにも役立ちます。 翻訳を自動化し、多言語のカスタマーサポートを促進することで、ビジネス拡大が言語能力による制約を受けなくなります。

総合的に言えば、NLP に精通することで組織は競争力を高め、データの可能性を最大限に引き出し、提供するサービスを改善して顧客の期待により的確に応えられるようになります。

NLP に関する主な考慮事項

AI が進化を続け、日常生活に組み込まれている中、NLP の重要性は軽視できません。 ただし、自然言語処理が完璧というわけではありません。認識しておくべき重要な考慮事項や懸念事項がいくつかあります。

コンテキストに応じた単語やフレーズ

NLP で最も重要なのはコンテキストです。 単語やフレーズの意味は、センテンス内の用法によって変化する場合があるため、アルゴリズムはコンテキストを正しく解釈して意図や意味を適切に理解する必要があります。 その解決策は、コンテキスト認識型アルゴリズムを実装して、周辺のテキストを細かく考慮し、AI が単語の用法と意味をより正確に理解できるようにすることです。

皮肉、嫌味、曖昧な表現

テキスト内の皮肉や嫌味の検出は、人間でさえも困難であり、機械にはほとんど不可能とも言えます。 というのも、そこに含まれているニュアンスは、言葉の文字通りの意味だけでなくトーンやコンテキストを通じて理解されることの多いものだからです。 NLP システムは、こうした微妙な要素を識別して感情や意図を正確に解釈する必要があります。 認識の向上には、皮肉や嫌味の例を含む大規模な注釈付きデータセットでトレーニングした深層学習モデルなどの高度な感情分析技術が役立ちます。

高すぎるコスト

高度な NLP システムの開発と維持にはコストがかかるものです。 データ取得、コンピューティングリソース、高スキル人材への大きな投資が必要で、これが一部の組織や資金不足の研究者には手が出ない金額になる場合があります。 クラウドベースの NLP サービスはスケーラブルなリソースとメンテナンスを提供するため、利用すればコストを削減できます。 オープンソースのツールとフレームワークも、構築済みモデルを提供し、オンラインコミュニティによる手厚いサポートもあるため、参入障壁を下げることができます。

テキストや音声のエラー

NLP システムは、テキストの誤字や音声の発音ミスなど、入力データのエラーに対応する必要があり、それによって理解と処理が複雑になる可能性があります。 包括的な前処理ステップ (スペルチェック、文法修正、音声入力のノイズ削減など) を経ることで、NLP での処理前にデータの精度を高めることができます。

口語とスラング

誰もが教科書どおりの標準言語でコミュニケーションを行うわけではありません。 フォーマルではない口語会話やスラングは、文化やコミュニティによって大きく異なるため、NLP にとって時流に乗り遅れないようにすること、そしてユーザーが自然に使う言葉で対話することが課題になります。 最新のデータセットで言語モデルを継続的に更新し、ソーシャルメディアやその他のリアルタイムの言語用例ソースを取り入れることで、進化する言語のトレンドを常に把握している状態にすることができます。

「ブラックボックス」問題

多くの NLP モデルは、特に深層学習に基づくものの場合、特定の結論にどのように到達したかを簡単に知ることはできません。 そのため、ユーザーがシステムの意思決定プロセスを理解したり信頼したりすることが困難になる場合があります。 これはしばしば「ブラックボックス」問題と呼ばれます。 Layer-wise Relevance Propagation (LRP) や Shapley Additive Explanations (SHAP) などの技術は、どの入力が出力に最も影響を与えるかということについてインサイトを提供し、全体的な透明性と信頼性を向上させます。

複数言語

複数言語を効果的に処理できる NLP システムを構築するには、各言語の構文上、意味上、語用論上のニュアンスを理解して統合することが求められ、そのためには広範なデータと高度なモデリング技術が必要です。 言語間で学習内容を転送できる多言語モデルなら、言語間の類似性を活用してこの問題に対処し、さまざまな現地語でやり取りする場合でも処理効率を向上させられる可能性があります。

NLP のメリット

自然言語処理には、固有の課題があるにせよ、特にビジネスにとっては紛れもないメリットがあります。 最も魅力的なメリットとしては、次のようなものがあります。

  • 大規模なデータセットの分析
    NLP は膨大な量の非構造化テキストデータを迅速に処理して分析できます。これを人間の手で分析するのは非現実的です。 この機能により、顧客からのフィードバック、ソーシャルメディアの会話、その他のソースから貴重なインサイトを発見できます。
  • 日常業務処理の簡素化と生産性の向上
    NLP は、データ入力、カスタマーサポート、情報取得などの定型的なタスクを自動化することで日常業務を簡素化し、人材の負担を軽減してより複雑なタスクを任せることができます。
  • 客観的な分析の実行
    NLP は、テキストデータの偏りがなく一貫した分析を行うためのツールを提供します。 市場調査や法的文書の審査など、人間の先入観が結果を歪める可能性のある分野にはこうした客観性が不可欠です。
  • 実用的なインサイトの提供
    感情分析から傾向検出まで、NLP はテキストデータの根底にあるパターンや感情を理解することを支援し、意思決定や戦略計画に有益となる明確な結論を提供します。
  • カスタマーエクスペリエンスの向上
    NLP は、人間の言語を理解して自然に応答できるチャットボットや仮想アシスタントを通じて、顧客と組織とのやり取りを強化します。 これにより、エンゲージメントが高まるとともに顧客満足度とロイヤルティが向上します。
NLP の仕組み

自然言語処理には、人間の言語を自動的に解釈して生成する一連のステップがあり、そこには機械学習、深層学習、数理言語学、その他のさまざまなコンピューターサイエンスの多様な側面が集約されています。 プロセス自体は非常に複雑ですが、通常は次のようなステップになります。

  • データ収集
    NLP が言語の構文解析と理解ができるようになるには、最初に言語のトレーニングをする必要があります。 これには、さまざまなソースからテキストと音声の膨大な非構造化データを収集することが含まれます。
  • 前処理
    データの整理と体系化をします。トークン化、ストップワードの削除、ステミング、レンマ化を行ってテキストを簡素化するプロセスです。
  • モデルトレーニング
    NLP システムは機械学習と深層学習の技術を使用して、前処理されたデータでトレーニングすることで、パターンと言語構造を特定します。
  • 特徴量抽出
    データから特定の特徴を識別して抽出します。 これらの特徴を使って非常に詳細なデータセットを作成し、予測、分類、クラスタリングで使用します。
  • アルゴリズム開発
    アルゴリズムを開発して改良し、トレーニングデータに基づいてシステムが言語の正確な解釈と生成をできるようにします。
  • テストと検証
    モデルのパフォーマンスを未知の新しいデータに基づいて評価し、正確性と有効性を確認します。
  • 展開
    エンドユーザー向けに NLP モデルをアプリケーションに統合します。
  • 継続的な学習
    新しいデータが利用可能になるのに応じてモデルを更新し、進化する言語の傾向に合わせてシステムを改善して適応させます。
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ServiceNow による NLP

人間と機械のコミュニケーション方法は変化しており、自然言語処理の用途も拡大するにつれてビジネスにおける重要性が際立っています。 しかし、NLP の複雑さに対処しながらメリットを最大限に活用するには、多くの場合、経験豊富なサービスプロバイダーとの提携が必要になります。 AI を活用した自動化におけるリーダーである ServiceNow が提供するソリューションがNow Platform®です。

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