国内外のコンプライアンスをナビゲート
Bayer 社は、ドイツを拠点とするライフサイエンスを専門とする多国籍企業です。 150 年以上の歴史を持つ同社は、業界のリーダーとしてヘルスケアと農業の分野でコアコンプライアンスを確立しています。 Bayer 社は、現代のグローバルな主要課題に対する解決策を見出すことに取り組んでいます。
当然ながら、Bayer 社のビジネスは 24 時間 365 日、グローバルな規模で運営されています。 規制の厳しい市場で運営している同社では、法務とコンプライアンスの部門が社内でも最も多忙を極めるサービス部門の 1 つです。 コンプライアンス要求は、「顧客との昼食でいくらまで使えるか?」といったものから、地域での贈答、そして、反トラストに関する質問へのアドバイスや新しいビジネスモデルでのデータプライバシーガイダンスなどのより複雑な法的要求まで多岐にわたります。 Bayer 社は、すべてのアクティビティで、グローバルと国内の両方の規制を考慮する必要があります。 規制を遵守することで、Bayer 社は事業許可を確保するだけでなく、世界中の人々の健康と安全を確保しているのです。
Bayer 社のコンプライアンス & データプライバシー担当グローバル責任者、Thomas Pfennig 氏は次のように述べています。「以前は 100 か国以上の 36 地域に、合計 1,000 人近くの法務、コンプライアンス、知的財産、データプライバシーの専門家が分散して配置されていました。 従来から、当社の部門では非常に分散化されたモデルが使用されてきました」
地域センターの創設
名目上、地域センターの創設は合理的な事業達成目標に見えます。 実際には、敏感な国内のステークホルダーを動揺させ、十分確立されたプロセスに不要なねじれを生じさせる危険性がありました。 Bayer 社は、これはプロセスの転換だけでなく、文化の転換ももたらすものだと認識していました。
「法務やコンプライアンスに関する案件は、シェアードサービスで対応すべきでないという考え方がありました。当社は機密性の高い情報を扱っているので、コンプライアンス & データプライバシー部門への確実な報告系統を設けることが不可欠でした。それは心臓切開手術のようなもので、失敗は許されませんでした」
Bayer 社は、ServiceNow パートナーでもあり、同社の実装パートナーである smartvokat 社の協力を得て、プロジェクトを計画し展開しました。 Pfennig 氏はこのプロジェクトを「真のコラボレーション」と表現しています。
smartvokat 社のマネージングディレクター、Ignaz Fuesgen 氏は、優先事項は法務のエキスパートとテクノロジーのエキスパートを結びつける手段となる共通の言語を見つけることだったと述べています。 「双方が相手は自分たちの理解できない言語で話していると考えています。当社の「リーガルテック翻訳者」を使用して、Bayer 社の法務部門がプロセス用語で自身の業務を考えられ、プロセスアーキテクトが法律のニュアンスを理解できるように支援しました」
Pfennig 氏は、プロジェクトの戦略的重要性と、このプロジェクトには時間と忍耐、そして注意を集中させることが必要であることを受け入れることについて次のように述べています。「イノベーションの範囲とレベルが独特なこのプロジェクトでは、詳細計画を立てることが容易ではありません。最初からすべて完璧にはできないでしょう。とはいえ、私たちの目標はきわめて明確で、できる限り最大限標準化を進めるということでした」
アジャイル開発ではずみをつける
今日、Bayer 社の新しいブランドサービスユニットである「LPC Express」が 90 か国以上で「ワンストップショップ」を提供しています。 Bayer 社の従業員は、コンプライアンス、データプライバシー、法務に関するサービスを、ここから要求できるようになりました。
ServiceNow App Engine は、LPC Express のサービスを推進し、LPC Express と要求者とのコミュニケーションを促進しているデジタルプラットフォームです。
「3 社のベンダーを検討しました。当社にとって最も重要なことは、カスタマイズ機能でした。 ServiceNow なら、当社独自のユースケースを構築し、拡張する手段を確立することができます」と、Pfennig 氏は語ります。
Bayer 社は smartvokat 社と連携して、プラットフォームアーキテクチャとサービスアプリケーションを構築しました。 smartvokat 社の Fuesgen 氏は、柔軟性が不可欠だったと述べています。 単純だと思われていたプロセスが、もっと複雑であることが明らかになりました。 プロジェクトの推進力を維持するため、わずか 4 週間で、機能プロトタイプの設計、テストを行い本番稼働させました。「ServiceNow のローコードの側面がきわめて重要でした。これにより、すばやくカスタマイズし移行できたのです。このすばやさが、Bayer の法務機能のアジャイルな開発につながりました」と、Fuesgen 氏は述べています。
自動化されたワークフローにより、標準的な要求の解決は迅速化され、従業員は円滑に稼働しているエンドツーエンドセルフサービスポータルを 24 時間 365 日利用できます。
Pfennig 氏は次のように述べています。「分かりやすいインターフェイスにすることが重要だと私は考えていました。 ユーザーの心を掴むためには、魅力的なものでなければなりません。他と比べ、ServiceNow プラットフォームはカスタマイズ機能の幅が広く、すぐに利用可能な機能が確立されており、利便性が高いのです」
リソースを解放しサービスイノベーションに集中させる
サービス導入のインパクトは革新的でした。 昨年、最初のサービスが同社に展開されてから、40,000 件近い要求が LPC プラットフォーム経由で処理されました。 その他のアクティビティでは、4,600 件以上の一般的な法務要求、3,400 件のサードパーティのデューデリジェンス評価、20,000 件近い公正市場価格チェック (製薬業界の規約に従った要件) が LPC プラットフォーム経由で処理され、一部のプロセスの自動化率は 80% という高さでした。 10 万人以上の従業員を抱える同社内で、採用率は急速に高まり、ユーザー数は 10,000 人近くに達しています。
法務とコンプライアンスのプロフェッショナルを日常の反復的な手動プロセスから解放することで、単一の手動のアドバイスのかなりの部分を自動化ワークフローに置き換えるなど、新たな働き方を模索する機会が増えています。 SLA を定量的に測定できるようになり、ユーザーエンゲージメントの追跡も行っています。 長期的に見て、この転換により同社に新たな人材を引き付けることも期待されています。 強力なガバナンスを維持し、デジタル環境で調和されたプロセスを活用しながら、コスト節減率は 30% にも達すると見られています。
Pfennig 氏は、これは新たな人材を引き付けることにつながり、コスタリカ、ブラジル、ポーランド、フィリピン、中国の LPC Express センターは、イノベーションと斬新な思考に満ちた刺激的な拠点になると述べています。
Pfennig 氏は続けます。「現在、当社のプロセスにはデータとアナリティクスが組み込まれています。これにより、進捗を追跡し、新たな改善の機会を見出すことができるようになりました。こういったデータは、以前はなかったものです。 これがなければ、このような根本的な変革を推進するために必要とされる牽引力や受容性を生み出すことはできなかったでしょう」
ユーザーエンゲージメントは、ナレッジデータベースの拡大、送信される質問数、クエリの解決までの早さを通じて追跡できます。 現在のユーザー満足度は、5 段階のうち 4.1 です。「より重要な点は、世界中の Bayer の事業所から信頼を得ていることです」と、Pfennig 氏は付け加えています。
Bayer 社はすでに、ServiceNow を使用してサイバーセキュリティの運用を統合しています。
LPC Express にとって、次の段階での課題は、新しいプロセスを追加し、既存のサービスを改善して、米国の組織や中国をはじめとする、新しい国をシェアードサービスの範囲内に含めることです。 他の地域での LPC Express サービスの成功例と迅速に採用できたという事実が証拠となり、残りすべての国での成功に役立つでしょう。
「大胆に進めたいと思いますが、受け入れる側への配慮も必要です」と、Pfennig 氏は付け加えています。