「ツーリズム(旅行業)」の他、「エリアソリューション」「ビジネスソリューション」そして、3つの事業をグローバル領域で展開し、様々な「交流創造事業」に取り組むJTB。その提供価値を最大化するためにデジタル技術を積極的に採り入れ、業務の効率化やサービス品質向上のためのデジタル変革に取り組んでいます。その一環として、JTBはServiceNowのソリューション群を採用。手始めに分社化以降、部門やエリアごとにバラバラになっていた稟議申請プロセスを統一するため、ServiceNowのIT Service Management(ITSM)をベースとする稟議申請ワークフローを構築しました。さらに、社内で進行するシステム開発プロジェクト群の管理をStrategic Portfolio Management(SPM)で最適化することにも取り組んでいます。一方、グループ会社のJTBビジネストラベルソリューションズ(JTB-CWT)は、新サービスのリリースを機に、サービスの使い方に関する問い合わせに対応するナレッジの基盤として、ServiceNowの生成AIであるNow Assistを搭載したServiceNowのCustomer Relationship Management(CRM)を導入。従来のチャットボットによる対応よりも、的確なナレッジが顧客に示せるようになりました。JTBグループは今後、ServiceNowのさらなる活用を進める計画です。
共通基盤の構築、モダナイゼーションを進めながら、最新のSaaSを積極導入
創業から113年を迎えたJTB。
「売上高では『ツーリズム(旅行業)』が半分以上を占めていますが、それ以外に、観光地のDX化や観光地開発などで地方創生を支援する『エリアソリューション』、企業のイベント運営や、出張精算システムの提供など企業のコミュニケーション課題の解決を図る『ビジネスソリューション』の3本柱で事業を展開しています」と語るのは、同社 常務執行役員 CIO/CISOの黒田恭司氏です。
JTBは、これらの3つの事業を「交流創造事業」と呼び、人と人、場所、文化をつなぎ、新たな未来をつくる交流創造企業へと進化しています。その事業価値を支えているのが「デジタルの力」です。「JTBは2006年に分社化し、18年のグループ組織再編により15社を本社に再統合した歴史があります。分社化後に各社のシステムや仕事の進め方がバラバラになり、それらをいかに標準化を図り生産性を向上させるかが大きな課題でした。共通するシステム基盤の構築を進めながらモダナイゼーションを図り、最新のSaaS製品を積極的に採り入れるなど、抜本的なデジタル変革に取り組んでいます」と黒田氏は明かします。
バラバラだった稟議申請のプロセスをServiceNowのワークフローで一元化
ServiceNowには様々なソリューションがありますが、その中からJTBが最初に導入したのは、ITSMでした。
ITSMは本来、社内のITサービスに関する問い合わせやリクエストへの対応を円滑化するワークフローを備えたシステムですが、JTBはそのワークフローを、稟議申請および関連する業務を効率化するために利用することにしました。そこには、業務フローの標準化を推進し、経営の高度化を図る狙いがありました。
「分社化後、稟議申請のルールやプロセスは会社によってバラバラになっており、18年の再統合後に導入したワークフローシステムでも継承されたままの状態に近いものでした。サポート期限切れを機に単純にワークフローシステムだけを入れ替える方法もありましたが、経営の高度化に向けた業務の効率化と精度向上は経営課題であり、ServiceNowの多彩な機能により他システムとの連携など稟議申請の効率化に留まらない様々な使い方ができるという拡張性の高さが課題解決につながると評価して選定しました」と語るのは、JTBのグループ本社 IT企画チーム IT企画担当マネージャーの三浦亮氏です。
つまり、稟議申請のためのワークフローの刷新はあくまでも“入り口”であり、将来的にServiceNowをより幅広い範囲で活用するための“土台づくり”として導入したのです。刷新されたワークフローは24年10月に本稼働。以前のシステムでは実現できなかった標準化の礎を築くことができました。今後は国内グループ会社や海外グループ会社への展開も視野に入れています。
システム開発プロジェクト群を総合的に管理するため、SPMも導入
稟議申請のプロセスが一元化されたことで、従来のワークフローでは平均3.5日かかっていた稟議申請から決裁までの期間が、半分以下の平均1.7日まで短縮しました。「以前のシステムはPCでしか申請や承認ができませんでしたが、ServiceNowではスマートフォンでも操作できるので、時間や場所を問いません。そうした利便性の高さも決裁までの時間の短縮につながっていると思います」と三浦氏は評価します。
この稟議申請ワークフローで築き上げた“土台”を基に、JTBは、より広範囲な領域でServiceNowを活用していく方針を掲げています。
JTBは、ITSMの導入と同時に、ServiceNow SPMも導入しています。これは、社内におけるシステム開発などの戦略的なプロジェクト群を、案件の卵の集約から開発・導入の承認、進捗状況、規定しているITガバナンス管理、プロジェクト予算執行状況の把握に至るまで総合的に管理できるシステムです。
三浦氏はSPM導入について、「社内で進行しているシステム開発プロジェクト群の全容を把握し、事業戦略やROIに照らし合わせながらポートフォリオを最適化できる基盤として活用していきたいと考えています」と説明しています。
また、AIの活用についても積極的な検討が進められています。三浦氏は、 ServiceNowのAI機能を活用した業務処理の自動化や、問い合わせ対応のセルフサービス化など、次世代の業務基盤構築に向けた取り組みを検討していると説明しています。
グループ会社がNow Assist搭載のソリューションを活用
一方、JTBのグループ会社では、生成AIであるNow Assistが搭載されたServiceNowのソリューションの活用も始まっています。
JTBビジネストラベルソリューションズ(以下、JTB-CWT)は、JTBの「ビジネスソリューション」事業の一翼を担うグループ会社であり、2000年の設立以来、日本における法人出張管理サービスの先駆けとして、業界をリードしてきました。「法人のお客様の出張手配から経費管理まで、いわゆるビジネストラベルマネジメント全般を支援するサービスを提供しています」と説明するのは、JTB-CWT、営業企画部長の若槻武彦氏です。
企業の出張手配は、多くの場合、出張者による申請、総務による手配、経理による精算処理など、複数部署の担当者が関与するため業務が煩雑になりがちです。こうした課題に対し、「当社では出張手配を一元管理するサービスを提供しています。専用ポータルで航空券や鉄道チケット、ホテルなどを予約していただくだけで、経費データが生成され 各部署の担当者や出張者の業務負担を大幅に軽減できます」と、若槻氏はサービスのメリットについて語ります。
CXとEXが継続的に向上できるServiceNow CRMを選定
JTB-CWTは25年3月、従来複数のブランドで提供していたサービスを一元化し、「ビズバンスJTB出張予約」をはじめとする新たなサービスにリブランディングしました。
このリブランディングに伴って、同社は、各サービスの利用方法やツールの操作方法等を説明するカスタマーサポートサイトも一本化することにしました。「ビズバンスJTB出張予約」のリリースに合わせ、このサポートサイトの基盤として採用したのが、ServiceNowの生成AIであるNow Assistが搭載されているCRMです。
ServiceNow CRMは、顧客からのあらゆる問い合わせを1つのポータルで受け付け、内容に応じた振り分けを自動的に行って、対応する担当者をアサインするシステムです。進捗状況がダッシュボード上で把握できるため対応スピードが向上し、結果的に顧客満足度の向上にもつながります。
JTB-CWTは、以前は顧客からの問い合わせは電話やメール、チャットボットなどで受け付けていました。新たなサポートサイトは、これらのチャネルを一本化し、顧客が投稿した質問に対するナレッジを生成AIが分かりやすく要約して提示し、自己解決を促す仕組みを提供します。解決できない場合のみ有人サポートへつながり、デジタルとヒューマンが融合したデジタルサポートを実現しています。
同社は、顧客の利便性を高めるとともに、担当者の煩雑な対応業務を改善したいと考えました。「ServiceNow CRMを選んだのは、より幅広い領域への拡張が可能で、また生成AIによってナレッジのレベルを高め、CX(顧客体験)とEX(従業員体験)を継続的に向上できる点が決め手でした」と若槻氏は明かします。
ServiceNowのポテンシャルを余すところなく引き出したい
ServiceNow CRMは、Now Assist for CSMという、カスタマーサービス管理に最適化された独自の生成AIを搭載しています。
「ServiceNow CRMの導入前は、シナリオ型のチャットボットをお客様にご利用いただいておりましたが、新たなサポートサイトで実現したかったのは、定型文の回答ではなく、お客様のご質問に対して自然で柔軟な回答をできることでした。これを実現するためには、生成AIの活用が不可欠だろうと判断したのです」と、若槻氏は語ります。
JTB-CWTが、この新しいカスタマーサポートサイトの設置を決定したのは、「ビズバンスJTB出張予約」リリースのわずか1カ月半前という、通常では到底間に合わないタイトなスケジュールでした。しかし、社内プロジェクトチームの結束した取り組み、開発サポートベンダーの献身的な支援、そしてServiceNowの迅速構築を可能とする製品特性により、限られた期間内でのサイト稼働を実現することができました。
25年3月のリリース以来、現場からの実感として、ナレッジへのアクセス数に比べて有人対応の問い合わせ件数が少なくなったとの声も上がっています。
現在は、フェーズ2に向けて生成AIの活用範囲をさらに拡大し、より高度なサポート機能の実現を目指しています。
JTBの黒田氏は、今後のServiceNowの活用について、「とにかく拡張性の高い製品なので、そのポテンシャルを余すところなく引き出しながら、デジタル変革を推し進めていきたいですね」と抱負を語りました。