ネットワンシステムズは、ICTインフラの運用サービス高度化基盤「Growcx(グラックス)」を開発し、従来個別対応や手作業が多かった運用サービスを高いレベルで平準化していく取り組みを進めています。サービスのプラットフォームにはServiceNowのCustomer Service Management(CSM)を採用。豊富な業務テンプレートを活用し、顧客ポータルの構築を手始めに顧客起点による運用サービスメニューの開発を効率的かつ段階的に進め、サービスを導入した顧客からも高い評価を得ています。
運用品質のバラつきや業務属人化が課題に
ネットワンシステムズは、ネットワークインテグレーションを得意とするITベンダーとして、ICT化の黎明期から国内企業のインフラ領域を支えてきました。2024年11月にはSCSKとの経営統合を発表し、インフラからアプリケーションまでのフルスタックサービスを提供するサービスベンダーという次のステージを目指しています。
ネットワンシステムズの強みの1つが、ICTインフラの運用です。現在各地に拠点を構え、数多くの企業に対してICTインフラの安定運用を支援しています。その中で、2019年に運用チームを再編してカスタマーサクセス部が誕生し、サービスの強化を図るために全社標準のサービス高度化基盤の開発に着手しました。当時の状況について、同部門を発足させたセールスエンジニアリング本部長 深町泰三氏は次のように語ります。
「部門発足当初は、なかなか有機的に人を動かせず、組織をまとめていくのに苦労しました。業務プロセスの属人化が進んでおり、運用サービスの成熟度が拠点ごとにバラバラであり、しかもその状況がマネジメント側に見えづらい状況でした。そこで当社の運用サービスを高いレベルで平準化させるとともに、その状況を可視化し、かつメンバーの意識改革を促す意味も込めて、新しい運用サービス基盤の立ち上げを決めました」
Growcxの開発を担当したビジネス開発本部 応用技術部 デジタルワークフローチーム マネージャー 佐々木茂忠氏は、ServiceNowにおける開発効率性について高く評価しています。
「当社はインフラ領域に強みを持つ企業として、本来アプリケーション開発は本業ではありませんが、ServiceNowローコード・ノーコードで柔軟性が高く、成果物が可視化されるためアジャイル開発にも対応しやすく、スピード感を持ってお客様の要望に応えることができています」
そして現在は、Growcxサービス拡充に向けてプロセスの自動化に取り組んでいます。すでに構成管理情報ベンダーが提供するEOSLや脆弱性情報を組み合わせた部分の自動化までは実現していますが、最終的にはGrowcxにてセルフサービス機能を追加して自己解決率向上を目指しています。
「簡単な作業はセルフサービスで解決できる仕組みを導入しようとしています。構成管理も含め、当社の先人たちがかつて自動化にチャレンジして挫折していた歴史がある中で、ServiceNowを活用すれば必ず実現できると感じています」(佐々木氏)
Growcxの構想に合致した顧客視点の発想
新たな運用サービスの基盤を構築するにあたりITサービスマネジメント(ITSM)プラットフォームを検討する中で、深町氏の構想に合致したのがServiceNowでした。
「ServiceNowの本社を訪れた際に、機能の話ではなく、『お客様が求めているサービスは何か』『提供価値は何か』という我々の事業を立ち上げていく構想面の壁打ちに付き合ってもらえたとき、信頼に足るパートナーになり得ると確信しました。また機能面でも標準化されたテンプレートが非常に多く、我々が考えている思考の先にあるものがほぼ先取りででき上がっていたのです」
選定の際に重視したポイントが、ITSM領域にとどまらないということでした。実際に、Growcxとして最初に開発に着手したのは同社の顧客側の接点となる「カスタマーポータル」であり、その後に社内の運用オペレーション自動化の仕組みを立ち上げていくという計画を立てました。
「ITSMの効率化は、ともすれば社内の内向きな話になりがちです。しかし、お客様が気にしているのは自社の状況がどうなっているかということです。サービス基盤の開発に当たってITSMだけを考えると、運用側の効率化にとどまってしまう懸念がありました。その点、ServiceNowはITSMからCSMまでのフルスタックでカバーし、さらにサービス基盤の構築をお客様視点で考えたソリューションが揃っていたため、円滑に構築が進められたと感じています」(深町氏)
プロセスを標準化しマルチテナント型でサービスを展開
Growcxの開発にあたっては、まず既存顧客の1社に対してサービス更新のタイミングに合わせて運用設計の改善も含めた移行提案を行い、了承を得た上で着手しました。セールスエンジニアリング本部 第1カスタマーサクセス部 第1チームマネージャー 薄倉聡氏は、開発時に留意したポイントについて次のように語ります。
「提供開始が半年後というスケジュールの中、お客様が利用するポータル機能の構築を最優先としつつ、それを利用した問い合わせ申請・対応のフローをうまく回していけるようにすることが重要なテーマでした。そのため、まずケース管理、変更管理、ナレッジ管理の開発を優先的に進めていきました。運用開始後は、お客様への付加価値を提供できる領域として、ステータスを管理できるダッシュボードやレポートを追加でリリースしています」
同社ではGrowcxをマルチテナント型で提供しており、先行顧客に導入後、他の顧客も更新時期に合わせてGrowcx環境への移行を進めています。その際には「個別最適にならないようにお客様の運用プロセスをできるだけ標準的な形に変えて、それをServiceNowの機能上へと展開しています」と薄倉氏は説明します。
愛知県教育委員会のネットワーク管理業務が大幅に改善
現在数十社の企業・組織がGrowcxを導入してポータルを利用していますが、すでに顕著な成果が出ています。利用ユーザーの1社である愛知県教育委員会のICT教育推進課では、県立中学校、高等学校、特別支援学校における端末やネットワークインフラの管理を行っていますが、サポート契約の更新および県内教職員専用ネットワーク「愛知エースネット」の更新に合わせて、2024年8月からネットワンシステムズのインフラ運用サービスに関する情報管理のプラットフォームとしてGrowcxを利用開始しています。
ICT教育推進課の稲葉護行氏は、「Growcxを導入して問い合わせ先をポータルの窓口に集約したことで、それまで忙殺されていた電話対応業務から解放されました。ネットワーク障害の予防や次なる問題を生じさせないための対応というより重要な業務に時間を割けるようになったほか、業務時間は大幅に削減されて働き方も大きく改善されました」と成果を語ります。
以前もICTインフラに対する問い合わせ窓口は用意されていましたが、問い合わせ先がバラバラであったため、教育現場の教職員は「大元に聞けば早い」という判断からICT教育推進課に電話が集まってしまうという構造でした。他にもメール経由の問い合わせもあり、質問への対応に負荷がかかっていたことに加え、問い合わせ内容も年を追うごとに高度化し、対応窓口の切り分けや解決に多大な労力を要していました。
Growcxに移行してからは、各学校のIT管理者にアカウントが付与され、現場からの依頼や質問が、ポータルを通して送信されると直接ネットワンシステムズの運用担当者に届く仕組みになっています。依頼内容や進捗状況はICT教育推進課からもGrowcx上で確認でき、業務負荷が大きく削減されています。
「Growcxに移行したことで、電話がつながらなかったりメールを見落としたりすることもなくなりました。さらに毎月、多数の問い合わせがある中で緊急対応が必要かどうかも画面上の色分けで分かるようになり、優先順位を付けて対応できるようになりました。運用担当者からエスカレーションが来る際も、問い合わせ内容や解決してほしいポイントを要約して伝えてくれるので初動も早くなり、問題解決も早期化できています」
実際にGrowcxを利用する各校の教員に対するアンケートでも、高い評価を得られていると稲葉氏は明かします。
「評価ポイントとして、問い合わせ窓口が集約されて迷う時間がなくなったこと、申請が可視化されて対応状況が分かるようになったこと、ナレッジベースによってある程度の自己解決が可能になったという3点が挙げられていました。今ではGrowcxという言葉も担当者間で定着し、ネットワーク以外の問題もGrowcxで問い合わせができるようにしてほしいという要望が挙がっています」
「運用の民主化」という将来構想の実現へ
Growcxが最終的に目指すところは、セルフサービスの実現です。深町氏は「業務自体をエンドユーザーに渡してしまうことが理想の形です。お客様先のエンドユーザーがダイレクトで設定変更などができるモデルを作ることができれば、長年課題とされている人海戦術による作業からの脱却やリソースの最適化も自ずと実現できると思っています」と語り、Growcxを通じた運用モデルの民主化をServiceNowによって現実のものにしようとしています。
*所属・肩書きを含む本事例の内容は2025年10月時点のものです。