野村総合研究所が進める 調達業務改革
株式会社野村総合研究所 DX基盤事業本部
クラウドDXソリューション推進部 部長 山本 英貴 氏
コンサルティングとITソリューションを組み合わせた「コンソリューション」で、企業の経営改革や事業改革を支援する野村総合研究所(以下、NRI)。その知見とノウハウを生かし、自らの変革にも取り組む同社は、「調達業務改革」を推進中です。改革の柱の1つとして、「サプライチェーンマネジメントの高度化」を目指す同社は、サプライヤーとのコミュニケーションとコラボレーションを強化するServiceNowのSource To Pay Operations(S2P)を導入しました。
これによって、サステナブル調達などに対応するためのサプライヤーとのコミュニケーションが円滑化。サプライヤーオンボーディングのための情報のやり取りや手続きもスピードアップしました。
「コンソリューション」の実績を生かし、自らの「調達業務改革」に取り組む
NRIは、企業の課題の発見から的確な解決策にまで導く「コンサルティング機能」と、先進技術を駆使したシステム開発・運用などにより、課題の解決を実現する「ITソリューション機能」の2つを組み合わせて、一貫した「コンソリューション」で革新的かつ継続的な価値を創出し、クライアント企業に提供しています。
NRIがクライアント企業に提供するITソリューションは、エンジニアをはじめとする「人」、サーバーなどの「モノ」、クラウドに代表される「サービス」の3つによって支えられています。これらを社内外から円滑に調達し、クライアント企業ごとに最適化された形で提供することがNRIの価値の源泉となっていますが、ハードウェアを中心としてきた“モノの調達”からクラウドをはじめとする“サービス調達”への移行、サステナブル調達への対応など、時代の要請に合わせて大きな改革が迫られるようになってきました。
これらに対応するため、NRIは3年ほど前から「調達業務改革」を本格的に始動しました。
複数のSaaSを組み合わせて「調達プロセスの合理化」を図る
NRIの「調達業務改革」は、「調達プロセスの合理化」と、「サプライチェーンマネジメントの高度化」の2本柱で進められています。「調達プロセスの合理化」とは、ニーズの多様化やグローバル化、“モノの調達”から“サービス調達”への移行といった時代の変化に合わせ、これまでの調達プロセスのあり方を抜本的に見直すものです。
「検討を重ねた結果、急激な時代の変化に対応してビジネスプロセスそのものを大胆に改革するためには、優れた複数のSaaSを組み合わせ、それに合わせて自分たちの“やり方”を変えるべきだという結論に至りました」と語るのは、同社 DX基盤事業本部 クラウドDXソリューション推進部 部長の山本英貴氏です。
様々なSaaSの一つとして、NRIが選定したのがServiceNowのS2Pです。導入の狙いは、「調達業務改革」の柱の一つである「サプライチェーンマネジメントの高度化」を実現させることにありました。「サプライチェーンマネジメントの高度化」には、直接調達取引を行う一次サプライヤーとの情報共有や対話の強化。二次以降のサブサプライヤーも含めたサプライチェーン全体の管理という大きなテーマがあります。
とくに後者は、昨今のサステナブル調達に対する要請などに適切に対応するため、喫緊の課題となっていました。
S2Pのポータル機能を使ってサプライヤーを一括管理
NRIは2022年秋、ServiceNowの調達ソリューションであるSource To Pay Operations(以下、S2P)の導入を決定。
同社がServiceNowのS2Pを選んだのは、課題を効率よく解決できる機能を備えているからです。
「サステナブル調達を進めるためには、適切な情報開示が求められます。サプライヤーに対して、取引に必要な情報収集の他、ビジネス行動規範に同意していただいた後に、コンプライアンスに反することなく実践できているかを調査する必要もあります。
これまでは、扱う商品カテゴリによってサプライヤーマスターも複数存在していましたが、S2Pでサプライヤーマスターを統合し、ポータル機能を使って『NRIグループサプライヤーポータル』というものを新設しました。
マスタを統合することで、サプライヤーの重要度、優先度を一括管理できるようになりました」と山本氏は説明します。
NRIは「調達業務改革」のため、強みや持ち味の異なる複数のSaaSを組み合わせて導入しましたが、なかでもポータル機能に優れているServiceNowは、「“適材適所”の組み合わせの一つとして魅力的でした」と山本氏は評価します。
サプライヤーオンボーディングの業務効率を改善
サプライヤーとのコラボレーションの強化に関しては、他にもS2Pの導入によって効率化を実現した業務があります。それは、サプライヤーオンボーディング(取引契約に至るまでの情報登録と手続き)です。
NRIでは従来、新規のサプライヤーと取引を開始する際に、メールや郵便のやり取りによって契約までの情報登録や手続きを行ってもらっていました。時間と手間がかかるだけでなく、どのサプライヤーの情報登録や手続きがどこまで進んでいるのかという進捗状況も把握できず、契約に至るまでかなりの時間を要していました。
廣氏は、「サプライヤー側も、どんな情報登録や手続きが必要で、何が漏れているのかといったことがよく分からず、戸惑うことが多かったようです。そこで、S2Pに標準搭載されているサプライヤーオンボーディング機能を使って、効率的に手続きが進められる仕組みを構築しました」と振り返ります。
具体的には、S2Pのポータルサイト上で情報登録や手続きを行い、完了すると、次に何をするのかをガイダンスしてくれる仕組みを提供。その指示に沿ってサプライヤーが手順通りに作業を行えば、スムーズにオンボーディングが完了するという流れです。
「分からないことがあれば、チャットベースで質問に答えてくれる仕組みも用意しました。また、よくある問い合わせはナレッジとして蓄積し、社員がサプライヤーに回答する際のマニュアルとして利用したり、サプライヤーが自己解決できるようにFAQを整備したりしています。社員にとっても、サプライヤーにとっても、作業負荷が軽減される仕組みが出来上がったと思います」と廣氏は評価します。
S2Pのさらなる活用によって「調達業務改革」を推進する
このサプライヤーオンボーディング機能の導入によって、取引契約の締結に至るまでの期間は格段に短縮されました。廣氏は、「メールや紙の書類でやり取りしていたころに比べると、締結までの時間は半減しました。契約書へのサインを電子化したことも時間短縮につながっています」と言います。
問い合わせに対応するためのマニュアルやFAQを整備したことで、問い合わせの件数も、対応時間も半減しました。S2Pの導入は、業務効率化の面でも大きな効果をもたらしています。
NRIは、今後もS2Pのさらなる活用によって、「調達業務改革」をより一層推進していく方針です。
山本氏は、「標準機能がそろっていることに加え、ServiceNowは、欲しい機能が簡単に開発できる非常に柔軟なプラットフォームなので、これからいろいろな機能を追加して利便性をさらに高めていきたい」と抱負を語ります。
「調達申請を”入り口”として一括管理できるようになれば、業務効率だけでなく、経営効率の改善にもつながるはずです。ゆくゆくは、調達計画と収支計画、要員計画などを全てひもづけて、プロジェクトごとの収益の見える化や、不正発注の防止といったガバナンス強化にも役立てていきたいですね」(山本氏)
ServiceNow を活用したNRIの「調達業務改革」は、今後ますます発展しそうです。