社内 IT 管理でビジネスゴールをサポート
オープンハウスグループ社は、日本の主要都市の人気エリアで、手頃な価格の住宅を探すお手伝いをする不動産会社です。 この業界では開発に重点を置くことが一般的ですが、同社は顧客重視の営業アプローチをとることで差別化を図っています。 人をビジネスの中心に据えることで、オープンハウスグループ社は近年、急速な成長を遂げています。 2021 年 9 月期の連結売上高は 8105 億円に上り、2023 年 9 月期には売上高 1 兆円の達成を目指しています。
躍進の原動力となっているのは、やる気と行動力に満ちた社員ですが、もう 1 つ、オープンハウスの躍進を支えている大きな力があります。 同社の情報システムチームは、商品化までの期間を短縮し、営業担当やカスタマーエクスペリエンスを支えるシステムの高い可用性を確保するために、意識的にプロセスの内製化を進めてきました。 またこのチームは、新しいシステムやアプリケーションの開発だけでなく、大きな競争上の優位性につながるカスタマーリレーションシップマネジメント (CRM) や営業の自動化も担っています。
オープンハウスグループ社の情報システム部インフラストラクチャグループ係長の伊藤優氏は、「2014 年に策定したグループの長期デジタル変革戦略の一環として、リソースを管理する IT スキルを自社で開発することにしました」と説明します。「今では、新しいスタッフを雇ったり、外部ベンダーに頼ったりすることなく、アプリケーション開発やインフラ管理を行うための知識とシステムが整っています」
わずか 4 か月で ServiceNow ITOM の立ち上げを実現
オープンハウスグループ社では、240 を超えるシステムやアプリケーションを内製しています。 しかし、当初は開発に専念していたため、それをいかに管理し、安定稼働させるかということは二の次となっていました。 そこで同社は、サービス管理ソリューションの導入と、ITIL (IT インフラストラクチャライブラリー) のベストプラクティスに基づく管理フレームワークの採用を決定しました。
オープンハウスグループ社は、複数の市販のソリューションを評価した結果、ServiceNow の IT Operations Management (ITOM) を採用しました。 オープンハウスグループ社の情報システム部インフラストラクチャグループ主任の荒井康生氏は、「リソースやシステムのステータスを一目で把握できる自動化された構成管理データベース (CMDB) が必要でしたが、変更管理や課題解決を簡素化できることが、ServiceNow を選んだ大きな決め手でした」と説明します。 「6 つの製品を検討しましたが、両方を実現できるのは IT Operations Management (ITOM) だけでした」
2022 年初頭に導入が始まり、わずか 4 か月で本稼働を迎えました。 「ServiceNow の導入は初めてでしたが、非常に使い勝手がよく、外部からのサポートを受けることなく、すぐに運用を開始することができました」と荒井氏は言います。
自動化された監視によるリスク削減と安定性の向上
オープンハウスグループ社は、IT Operations Management (ITOM) のディスカバリー、サービスマッピング、証明書管理とインベントリの 3 つの主要な機能をすべて活用しています。 伊藤氏は、「この 3 つのコンポーネントは、240 以上もあるシステムを 24 時間体制で安定稼働させるために、それぞれ役割を果たしてくれています」と説明します。
例えばディスカバリーは、正確なシステム構成データを収集し、CMDB に取り込みます。 ソリューション導入前は、専任のエンジニアがすべてのシステムを手作業で管理しており、誰が、いつ、どのシステムに変更を加えたかを追跡する監査証跡もありませんでした。 今では、ディスカバリーを使用して、パブリッククラウド上で動作するすべてのシステムに対して、システム変更の自動化と追跡が行われています。
「ディスカバリーは 1 日に 1 回、すべてのシステム設定をチェックし、前日の記録と比較します。そのステータスはダッシュボードに表示されるので、リアルタイムで正確に変化を把握することができます」と荒井氏は付け加えます。
システム障害の影響をマッピング
IT Operations Management (ITOM) の機能のうち、サービスマッピングについてはシステム障害の発生時に、その影響がどの業務やサービスに及ぶのかを見るために活用しています。 「ServiceNow では、システムとアプリケーション間の相互依存関係が自動的にマッピングされるため、機能停止によってどのシステムが影響を受けるかを容易に把握することができます。IT Operations Management (ITOM) を導入してまだ 2 か月ほどですが、実際に障害が発生したときにはかなり役立ちました。システム障害によってビジネスオペレーションを止めるリスクが低減されたのは、非常にありがたいことだと思います」と伊藤氏は評価します。
また、証明書管理は、サーバー証明書の情報を定期的に取得することで、更新漏れなどのミスを防ぐことができるソリューションです。 オープンハウスグループ社では、自社が運営するすべてのシステムの証明書管理を一元化し、証明書の有効期限が切れていないことを確認するために使用しています。
以前はスプレッドシートで 1 件 1 件チェックしていました。 うっかり証明書の期限を見落としてしまうと、そのソリューションのサービスが停止してしまう可能性があります。 現在では、期限切れ間近のものはダッシュボードに表示され、機能停止のリスクを軽減するだけでなく、時間と労力も節減することができます。 これにより、証明書のチェックにかかる時間が 70% 削減され、スタッフの生産性が大幅に向上しました。
全インフラストラクチャのイベント管理を自動化
オープンハウスグループ社が IT Operations Management (ITOM) を導入してまだ間もないですが、すでに大きな効果が表れています。 荒井氏は、「システム構成や障害発生状況の可視化は大きなメリットをもたらしてくれました。次はイベント管理を自動化したいと考えています。また将来的には、SaaS を含むすべての企業インフラを 1 つのダッシュボードで管理できる環境を作りたいと考えています」と語ります。
情報システム部門は、オープンハウスグループ社のビジネスゴールを達成するうえでの役割を常に考えています。 「売上高 1 兆円という会社の目標達成にいかに貢献できるかということが、情報システム部での大きなテーマです」と伊藤氏は言います。 「サービスを円滑に進めるために、もっと多くのプロセスを内製化したいと思っています。ベストプラクティスを確立した今、システムを安定させ、セキュリティレベルを高く保ちながら、それを実現するスキルがあることを実感しています」
将来的な変更管理の簡素化
次に、オープンハウスグループ社は、ServiceNow の IT Service Management を利用して、各エンジニアの変更を標準化し、テクノロジーサービス運用の最適化を目指していく予定です。 IT Service Management は、ITIL に基づいたルールで IT サービスを管理するソリューションです。 このルールの下では、システムの設定変更が必要な場合、それをリクエストするチケットを発行し、チケットを受け取った担当者が処理をします。 これによって各エンジニアが勝手に設定を変更することはなくなり、想定外の変更を見逃すことでシステムの安定稼働が脅かされるリスクも低減されます。
「各エンジニアが独自に設定変更を行う習慣が付いたのは、内製化を積極的に進め、開発から運用に至るまでの裁量を与えてきたことが背景にあります。開発にブレーキをかけることなく、安定稼働のために必要な対策を講じることが重要でした。IT Operations Management (ITOM) と IT Service Management の組み合わせによって、その目標は実現できそうです」と、伊藤氏は締めくくりました。