内製化によって創り上げた240以上のシステムの関係性を「見える化」し、運用を自動化。
社内で稼働している全システムの証明書チェックに要する工程が、従来に比べて約7割削減。
外部ベンダーの力を借りることなく、わずか4カ月で本稼働。
営業活動を支援するため、「ITの内製化」を推進
「好立地、ぞくぞく」――。印象的なキャッチフレーズのテレビコマーシャルで知られるオープンハウス。グループ全体の連結売上高は2021年9月期で8105億円に上り、2023年9月期に売上高1兆円の達成を目指しています。
躍進の原動力となっているのは、やる気と行動力に満ちた社員ですが、もう1つ、オープンハウスの躍進を支えている大きな力があります。それは、基幹系からCRM、SFAまで、営業を支援するシステムやアプリケーションの大部分を自分たちで創り上げるほど、「ITの内製化」を徹底している点です。
「2014年にDXの推進を本格化し、内製化の方向に大きく舵を切りました。様々な技術や知識を持ったエンジニアを外部から大量に採用し、ベンダーに頼らなくてもシステムやアプリケーションが構築できる体制を整えています」と語るのは、オープンハウスグループ 情報システム部 インフラストラクチャグループ 係長の伊藤 優氏です。
伊藤優 氏
情報システム部 インフラストラクチャグループ 係長
ServiceNowも自分たちだけで開発、わずか4カ月で完成させる
これまでに創り上げたシステムやアプリケーションの数は240以上に上ります。ただし、創ることを優先したため、それをいかに管理し、安定稼働させるかということは二の次となっていました。そこでオープンハウスは、膨大な数のシステムやアプリケーションを効率よく管理するため、ITサービスマネジメントのベストプラクティスであるITIL(Information Technology Infrastructure Library)に準拠した仕組みを導入することを検討。複数のソリューションの中から、ServiceNowが提供するIT Operations Managementを選定しました。
選定理由について、「システム構成の最新情報を常に把握するため、構成管理データベース(CMDB)が自動作成できることは必須だったのですが、それ以外にシステムの変更管理や、障害が発生した際の問題管理などもできることが選定の大きな決め手になりました。6社くらいの他社製品と比較検討し、CMDBを作れるだけ、変更管理ができるだけの製品であれば他にも選択肢はあったのですが、これらの管理がすべてできるのは、ServiceNowのIT Operations Managementだけでした」と説明するのは、同社 情報システム部 インフラストラクチャグループ 主任の荒井康生氏です。
2022年1月に開発をスタート。それからわずか4カ月で本稼働させました。他のシステムと同じように、外部ベンダーの力を借りることなく、自分たちだけで開発しています。「ServiceNowの開発は初めてでしたが、非常に分かりやすい設計になっているので、短期間で作り上げることができました」と荒井氏は振り返ります。
設定変更の状況を「見える化」、安定稼働を脅かすリスクが減る
ServiceNowのIT Operations Managementには、Discovery、Service Mapping、Certificate Managementという3つのソリューションが用意されています。
Discoveryは、正確なシステム構成情報を自動的に定期収集し、構成管理データベースに構築するソリューションです。
IT Operations Managementを導入する前は、システムごとの設定はそれぞれの担当エンジニアが行っていたので、誰が、いつ、どのシステムに、どのような設定変更を加えたのかを把握するのが困難でした。そこで、Discoveryによりパブリッククラウド上で稼働している各システムの設定状況の変化を確認することを実現しました。
「Discoveryですべてのシステムの設定状況を1日1回チェックし、前日との差分を取ることで、変更状況が正確かつリアルタイムに『見える化』できるようになりました」と荒井氏は語ります。
IT Service Managementによる設定変更管理も検討
さらに、エンジニアごとに行っている設定変更を一元化するため、ServiceNowのIT Service Managementを活用する準備も進めています。
IT Service Managementは、ITILに準拠するルールでITサービスを管理するためのソリューションです。ITILのルールの下では、システムの設定変更が必要な場合、それをリクエストするチケットを発行し、チケットを受け取った担当者が処理をします。これによって各エンジニアが勝手に設定を変更することはなくなり、想定外の変更を見逃すことでシステムの安定稼働が脅かされるリスクも低減されるわけです。
伊藤氏は、「各エンジニアが独自に設定変更を行う習慣が付いたのは、内製化を積極的に進め、開発から運用に至るまでの裁量を与えてきたことが背景にあります。開発にブレーキをかけるつもりはありませんが、安定稼働のために管理はある程度強化していきたい」と語ります。IT Operations ManagementとIT Service Managementの組み合わせによって、その目標は実現できそうです。
システム障害の影響が、どの業務やサービスに及ぶのかをマッピング
IT Operations Managementの機能のうち、Service Mappingについてはシステム障害の発生時に、その影響がどの業務やサービスに及ぶのかを見るために活用しています。
「Discoveryのシステム構成情報を基に、システムやアプリケーションの相互依存状況を自動的にマッピングしてくれるので、影響の及ぶ範囲が特定しやすくなります。IT Operations Managementを導入してまだ2カ月ほどですが、実際に障害が発生したときにはかなり役立ちました。システム障害によってビジネスを止めるリスクが低減されたのは、非常にありがたいことだと思います」と伊藤氏は評価します。
また、Certificate Managementは、サーバー証明書の情報を定期的に取得することで、更新漏れなどのミスを防ぐことができるソリューションです。オープンハウスは、これを使って社内で稼働している全システムの証明書情報を一元管理しています。
「以前はスプレッドシートに全システムの情報を入力し、1件1件の有効期限をチェックしていました。うっかり証明書の期限を見逃し、システムを止めてしまったこともあります。Certificate Managementは期限が迫っているシステムを自動抽出してダッシュボード上に表示してくれるため、見逃す心配がありません。システムを止めるリスクがなくなっただけでなく、チェックをする手間も解消されました」(荒井氏)
イベント管理の自動化や、全インフラのダッシュボード管理を目指す
証明書のチェックに要する工数は、従来に比べて約7割も削減されたといいます。業務の効率化の点でも、IT Operations Managementの導入効果は大きかったようです。
荒井氏は、今後のIT Operations Managementの活用について、「システム構成や障害発生状況の『見える化』は実現できたので、これからはイベント管理を自動化したいと考えています。また将来的には、社内のITインフラだけでなく、SaaSなども含めたすべてのインフラを1つのダッシュボードで管理できる環境を実現するのが究極の理想です」と語ります。
ちなみにオープンハウスは、IT Operations ManagementのDiscovery、Service Mapping、Certificate Managementの3つのソリューションをすべて活用しています。 伊藤氏は、「240以上もあるシステムを常に安定稼働させるためにも、せっかく使えるソリューションを使い切らない手はないと考えました」と説明します。
最後に伊藤氏は、オープンハウスの今後のデジタル化戦略について、「売上高1兆円に向けて、いかにインパクトのある貢献ができるかということが情報システム部としての大きなテーマです。さらなる内製化の推進によって貢献することはもちろんですが、一方で業務やサービスを止めないために、システムの安定稼働やセキュリティにも力を入れていきたい」と抱負を語ってくださいました。
オープンハウスによるServiceNowの活用機会は、さらに増えそうです。