医・食・住の3事業領域で、革新的なDXソリューションやサービスを提供
医(ヘルスケア)・食(農業)・住(建設)の3分野で、社会的課題の解決に貢献する製品・ソリューションを提供するトプコン。DX(デジタルトランスフォーメーション)の概念が定着する前から、DXを活用した様々なサービスをグローバルに送り出してきた同社は、社内のITサービス管理も最新のデジタルソリューションで進化させています。IT部門の担当者が社内からの電話による問い合わせに忙殺されていることに課題を感じ、問い合わせ専用の社内ポータルで対応する仕組みを構築してはどうかと考えてServiceNowのIT Service Management(ITSM)を導入。ポータルの開設によって問い合わせ件数は増えたものの、担当者の人数は約20名から1名に減るなど、大きな効果が表れています。
電話による問い合わせ対応に忙殺されていることに課題を感じる
大手電機メーカーやコンサルティングファームなど経て、18年に入社した中島氏は、IT部門の約20名の担当者たちが、「あまりにも生産性の乏しい業務に忙殺されているのを見て驚きました」と言います。とくに「生産性に乏しい」と感じたのは、社内システムやIT機器の不具合に関する問い合わせへの対応です。トプコンでは、社内各部門から寄せられるすべての問い合わせに、IT部門の担当者が電話で対応していました。
「電話で問い合わせを受けた後は、システムや機器の担当者に電話をかけて状況を確認。対処方法が分かったら、問い合わせをしてきたユーザーに電話で返答をする。まさに“電話のバケツリレー”でした。解決するまでに1件当たり30~40分の時間が取られ、その間、担当者は他の業務に手を付けることができません」と中島氏は振り返ります。
1件当たり30~40分の時間がかかるとなると、1日8件程度の問い合わせに対応するのが限界です。同時に複数の問い合わせは処理できないので、後回しにされたり、忘れられたりすることも増え、ユーザーの不満も募っていました。
中島氏は、この課題を解決するため、電話ではなく、問い合わせ専用の社内ポータルを使って対応する仕組みを構築してはどうかと考えました。その基盤として導入したのが、ServiceNowのIT Service Management(ITSM)です。
問い合わせた内容を、誰が、どこまで処理しているのかが確認できる
こうしてトプコンは21年4月、ITSMを基盤とする社内ポータルをリリースしました。そのサービスメニューは、問い合わせの内容によって選べるサービスカタログ、よくある問い合わせ内容の解決方法を網羅したFAQ、問い合わせに関するキーワードを入力すれば、該当するサービスや解決方法が表示される検索窓などで構成されています。
社内ユーザーがこのポータルを使って問い合わせやリクエストをすると、インシデントチケットが起票され、それに基づいて対応するIT部門の担当者が自動的にアサインされます。担当者が処理を完了すると、問い合わせやリクエストを行ったユーザーに自動通知され、インシデントチケットが回収される仕組みです。
最初にチケットを受け取った担当者(一次受け)が問題を処理できない場合は、二次受け、三次受けの担当者にチケットが自動的に回され、解決されたところでユーザーに通知が届きます。ユーザーは、問い合わせた内容を誰が、どこまで処理しているのかをポータル上で確かめることも可能となったため、電話によるやり取りのように、受け付けた担当者すらどこまで処理が進んでいるのか分からず、待たされてイライラすることもありません。
20名で行っていた問い合わせ業務が、たった1名で対応
トプコンはこの社内ポータルの開発を、ServiceNowの導入支援に関する経験が豊富なSIerに委託。わずか5カ月でリリースすることができました。
中島氏は、社内ポータルの導入効果について、「電話によるやり取りをなくし、すべて社内ポータル経由にしたことによって、問い合わせ担当者の工数が削減されたことが大きな成果です」と語ります。
かつては約20名の担当者が1日中、問い合わせに対応していましたが、今ではたった1名の担当者だけで対応できるようになりました。「あらかじめ400以上のFAQを用意しているので、よくある問題はユーザー自身で解決できます。その分、少ない人数でも十分に対応できるようになりました。他の担当者に電話で解決を依頼する必要がなくなったことも、大幅な省力化に結びついています」(中島氏)。
担当者とユーザー、それぞれにメリットがもたらされる
一方で、ユーザーからの問い合わせ件数は、社内ポータルのリリースによって大幅に増えたといいます。
電話のように、待たされたり、たらい回しにされたりすることがなく、いつでも問い合わせが受理されるようになったからです。対応のスピードも、電話による問い合わせに比べると格段に速まり、多少遅れたとしても、どこまで進んでいるのかが把握できるので安心です。
しかも、FAQに基づいた回答が得られるので、かつてのように担当者ごとにバラバラの答えが返ってくることもなくなりました。このように、サービスの品質が著しく向上したことが、問い合わせ件数の増加に結びついているようです。
「社内ポータルをリリースして以来、ユーザーからの問い合わせは月400件ほど寄せられるようになりました。それをたった1名の担当者が一次受けとして処理しているのですから、省力化の効果は絶大です」(中島氏)
その分、IT部門の担当者はDXに関連する業務に専念できるようになり、一方で問い合わせをするユーザーのサービスに対する満足度も上がりました。「担当者、ユーザーの双方に大きなメリットがもたらされました」と中島氏は評価します。
日本国内だけでなく、アジア全域で社内ポータルを活用
トプコンは、このITサービスのための社内ポータルを、日本国内だけでなく、アジア全域の拠点で利用しています。同社は、グローバルにおけるデジタル基盤の共通化を進めており、その一環として、日本のIT部門がアジア全域のITサービス管理を行うことにしたのです。
「以前は、それぞれの国・地域がバラバラにITサービス管理を行っており、どの拠点がどんなIT資産を持っているのか分かりませんでした。そこで、私自身がすべてのアジア拠点を実際に回って状況を把握し、その上で社内ポータルを構築したのです」と中島氏は説明します。
同社がServiceNowのITSMを社内ポータルの基盤として選定したのは、マルチリンガルに対応しており、グローバルに利用できることも理由の一つでした。
トプコンはすでにServiceNowのプラットフォームを社内DX基盤の一つとして、ITサービス管理以外の領域で広く活用し始め、各現地法人からの在庫確認や、発送問い合わせ機能にも拡大しています。
「今後は総務や営業などの問い合わせ対応にも使っていきたいと思っています。お客様からの問い合わせを受け付けるコンタクトセンターに導入することも視野に入れています」と中島氏は明かします。
ServiceNowの活用によって、トプコンのDXはさらに前進しそうです。