パフォーマンス管理とは、目標設定、パフォーマンス評価、継続的なフィードバック、個人スキルの開発によって従業員の有効性を高め、個人のパフォーマンスを組織の目標に合わせて調整する体系的なプロセスを指します。
従業員評価に関わったことや、従業員と管理者間の戦略会議に参加したことがあるならば、パフォーマンス管理の経験者であると言えます。 これらは分かりやすい例ですが、パフォーマンス管理は、1 対 1 で行われる上司との年次面談だけに留まりません。
従業員管理の下位区分であるパフォーマンス管理は、職務を効果的にこなせるように従業員を育成するための、一連のプロセスです。 業務の有効性と効率性を最適化して組織の戦略的な目標を達成するために、上司と従業員が継続的にコミュニケーションを取ることに依存しています。 パフォーマンス管理の目標は、建設的で継続的な方法により従業員のパフォーマンスを改善することにあります。継続的と言うのは、正しく活用すれば向上し続けられるためです。
パフォーマンス管理システムにはさまざまな形式があり、企業の価値観、文化、目標に応じてそれぞれ独自の形を取る傾向があります。 それにもかかわらず、ほとんどは同様の構造に従います。 パフォーマンス管理システムの一般的なコンポーネント/アクションには、次のようなものがあります。
- 明確な職務記述書の作成
- 適格な候補者の募集
- 候補者の面接
- 候補者のさらなる面接とテストによる能力の判断
- 能力とカルチャーフィットに基づいた、最も適格な候補者の選定
- 適格な候補者への採用内定通知と雇用条件の交渉
- 新入社員の入社歓迎
- 企業とその文化についての新入社員のオリエンテーションと定着
- パフォーマンスと実績に基づいた基準の交渉
- さらなるトレーニングと教育の提供
- 率直なフィードバックの提供
- パフォーマンス向上に関する定期的な話し合い
- 従業員の表彰・報酬システムの確立
- キャリア開発と昇進の機会の提供
- 離職の原因特定のための退職面談の支援
パフォーマンス管理は、単発的なイベントやツールではありません。 従業員評価、サーベイ、自己評価でもなければ、パフォーマンスの向上を促すためだけに存在するテクノロジーでもありません。 パフォーマンス管理の対象はそれよりも広く、さまざまなアクションと関与するリソースを含み、網羅しています。ただし、パフォーマンス管理そのものは、従業員ジャーニーの全期間を通して効果を発揮し続ける「プロセス」です。
組織が成功を収めるには、従業員が何をしているのかを明確に知る必要があります。 それが分からなければ、管理者が従業員を指導し、努力を正しい方向へ向けさせるのは非常に難しくなります。 パフォーマンス管理は、役割と責任を定め、各従業員の強みと弱みを認識し、フィードバックを伝え、卓越した行動を奨励し、継続的なイノベーションを推進するためのシステムを作ります。 つまり、パフォーマンス管理は、チームと各従業員がベストを尽くせるよう、必要なサポートとフィードバックを与えるという点で重要なのです。
パフォーマンス管理の目的は、従業員のパフォーマンスの最適化にあります。そのため、当然のこととして従業員が潜在能力を発揮することによってもたらされるあらゆるメリットが得られます。 例えば生産性や収益の向上が挙げられます。 さらに具体的に言えば、パフォーマンス管理は、多くの組織が直面する以下の 3 つの大きな課題を解決します。
- 従業員の関与
年単位で従業員評価を行うのは、重要なフィードバックの提供としては間隔が長すぎます。 残念ながら、フィードバックをしないままでいると、エンゲージメントに悪影響が及ぶ傾向にあります より定期的な一貫性のあるコミュニケーションとトレーニングにより、従業員のエンゲージメントが向上し、欠勤、離職率、安全性の問題、製品と作業の質、カスタマーエクスペリエンスに好影響を与えます。 - 優秀な人材の定着
役に立つフィードバックや育成の機会がなく、孤立していると感じる従業員は、組織のために個人的に尽くしたいという思いを失っていくものです。 逆に、パフォーマンス評価のために頻繁に話し合い、解決策を検討し、教育を提供する組織では、従業員のロイヤルティが高まります。 基本的に、さらなる時間と労力を従業員に投資しようとする組織の意欲が伝わると、従業員も組織にさらに尽くす動機づけになります。 そうすると、その従業員は、企業に長期間勤続するだけでなく、パフォーマンスを向上させるための努力を続けるでしょう。 - 内部管理職の育成
組織外の人材から管理職を募集するのは、費用も時間もかかる可能性があります。 採用された人材が企業の文化に合わなかった場合には、すべてが無駄になりかねません。 実績のある内部の従業員を管理職に昇進させれば、かなりのリスクを軽減できます。 効果的なパフォーマンス管理により、適切なリーダーのスキルを高められるように、トレーニングとフィードバックを行って、優秀な人材を将来の管理職へと育て上げることができます。 - 将来を見据えた従業員スキルの育成
組織がスキルギャップを特定し、継続的な学習と開発に注力することで、従業員は業界の需要の変化や技術の進歩に対応するために必要な適応力とコンピテンシーを得ることができます。 このプロアクティブなアプローチにより、学習と成長の文化を促進しつつ、従業員が常に現状に適応できるようにします。 - 組織全体のパフォーマンスの向上
前述のそれぞれのメリットから、組織全体のパフォーマンス向上に貢献する 1 つの主要なメリットが実現します。 個人の目標をビジネスの目標に合わせて調整し、定期的にフィードバックを提供することで、すべての従業員が同じ目標に向かって効率的に作業できるようになります。 このすり合わせにより、意思決定の改善、より効果的な問題解決、より緊密で生産性の高い職場環境が実現し、最終的には組織の成功が促進されます。
パフォーマンス管理は継続的なプロセスであるため、一連のステップとして可視化するのは正しくありません。 そうではなく、パフォーマンス管理は「サイクル」として考えてください。継続的に反復しながら、新たな話し合いも取り入れていくサイクルです。 ここでは、パフォーマンス管理サイクルの 4 つのフェーズについて詳しく説明します。
パフォーマンスサイクルの第 1 フェーズの主眼は計画です。 組織と従業員が協力し、期待されることを設定します。 パフォーマンスで期待される内容は、オフィスでの勤務時間から企業方針の遵守まで広範ですが、通常は「結果」と「アクション」のどちらかに分類されます。 「結果」は従業員が生み出したものや達成したことです。「アクション」はプロセス中に実践した方法と行動です。
期待されることをしっかりと念頭に置き、協力して SMART (Specific、Measurable、Achievable、Relevant、Time-Bound) 目標を設定します。 SMART 目標の各要素は、企業のさまざまな目標に貢献すると同時に、従業員個人の育成に関連するものとしてください。
今後数か月で取るべきアクションを設定します。 その後、従業員の職務要件において期待されるパフォーマンスについて評価し、必要に応じて更新します。 管理者と従業員とが協力して取り組むことが重要です。今後のアクションの指針となり、互いがパフォーマンスを向上させるコミットメントを示せる、従業員個人の育成計画を協力して作成しましょう。
フェーズ 2 では、従業員が目標を確認し、目標達成に必要なステップを実行します。 このフェーズは年間を通して行われる継続的なものであり、従業員が管理者と協力して、自らの育成計画を実行し、それに沿って活動を行います。
追跡のフェーズでは、管理者が従業員の進捗状況をモニタリングし、必要に応じてサポートします。 定期的にフィードバックを行うことで、管理者と従業員が問題を明らかにし、手に負えない状態になる前にすばやく軌道修正できるようにします。
このフェーズでは、管理者の責任で、障害となりそうなハードルを突き止めて困難を軽減し、従業員が成功を収められるようにするために専門の育成リソース、トレーニング、コーチングを提供します。
パフォーマンス管理サイクルの最終段階では、従業員と管理者が評価の場面で再び協力します。 このフェーズでは、目標の進捗について話し合い、トレーニングや育成の機会を評価し、達成事項を確認できます。また、昇進の可能性について話し合い、キャリア目標を再確認または再評価することができます。さらに、従業員の総合的なパフォーマンスの評価も行うことができます。 このレビューは、双方が協力して次のステップを決定する上でも理想的な機会となります。
前述のとおり、このフェーズを年次パフォーマンス評価まで後回しにするのは効果的な方法ではありません。 その代わりに、他の 3 つのフェーズと調和させながら、このフェーズをより定期的に実施することで、継続的な向上を実現します。
パフォーマンス管理は、特定のニーズに合わせてカスタマイズできますし、カスタマイズするべきです。 しかし、成功を収めている企業は、パフォーマンス管理の成功に貢献する、基本的な要素をいくつか特定しています。 この要素には次のものがあります。
パフォーマンス管理は従業員が雇用されてから始まるものだと主張する人も多いかと思います。しかし実際には、求人情報を「掲載する前」に目標を明確に特定することが、未来の従業員を成功に導くために不可欠です。 この段階で効果的なパフォーマンス管理を進めるには、明確な職務記述書を作成し、人材選定チームを特定する従業員採用計画を使用する必要があります。
能力のある候補者を募集して面接する際には、候補者の強み、弱み、能力を評価するとともに、確立された企業文化との相性がよいかどうかも評価しましょう。 また、優秀な候補者との面接を数回行い、対象の職務に適している場合には、従業員テストや課題も活用してください。
最適な候補者を選定したら、雇用条件を交渉し、雇用プロセスを確定します。
従業員が職務に完全に慣れるまで待つのではなく、パフォーマンス管理をオンボーディングプロセスに組み込みましょう。 従業員にとって、新しい職務に配属されてからの数日、数か月は、これから一緒に仕事をしていく人やプロセスに出会う時期です。 それ以上に、入社した企業のパフォーマンス文化を感じはじめる時期と言えるでしょう。
新しい従業員が入社すると、効果的なパフォーマンス管理には新しい従業員のオリエンテーションが組み込まれています。 メンターのアサインや、その他のアクションを活用することもあります。 オンボーディングの目的は、組織とその文化に従業員が効果的に溶け込めるようにすることです。
目標の設定が早ければ早いほど、新しい従業員がパフォーマンス向上により早くとりかかることができます。 従業員と上司を早い段階で頻繁に集め、要件と実績に基づいたパフォーマンス基準、成果、指標について話し合いましょう。 従業員が協力して自らの目標を設定し、その目標が会社の大きな目標に沿うようにすることで、従業員の自主性と責任感が向上します。
繰り返しになりますが、従業員のパフォーマンスを効果的にモニタリングし評価するには、年次のパフォーマンス評価では頻度が少なすぎます。 そうではなく、効果的なパフォーマンス管理には、従業員の目標を再調整し、プロジェクトの優先順位を付け、従業員の進捗の障害となりそうなハードルを特定し困難を緩和させるという目的を持つミーティングを、一貫性のあるサイクルで行うことが不可欠です。
人材が優秀なのには理由があります。自ら向上しようとする意欲があることです。 優秀な人材を雇用しても、専門性を高める機会がなければ、飽きられて、転職してしまう可能性が高いのです。 そうではなく、従業員の能力を向上させると、新たなスキルが身に付き、組織にもプラスになります。 従業員が組織内でキャリアパスを築き、昇進は必ずしも縦方向ではないことを理解できるように支援してください。社内での横の異動や、転勤ができるようにしてください。
最も高い価値のある人材が停滞感を感じないよう、しっかりとした従業員育成オプションをパフォーマンス管理戦略に含めるようにしてください。 これには、必要に応じてジョブシャドウイングやその他の教育、トレーニングを行うことなどが含まれます。
仕事を首尾良く成し遂げたときには、誰しも認められたいものです。 従業員の場合、特にこれが当てはまります。パフォーマンス管理プロセスに従業員の表彰が含まれていないと、従業員が不満を持ち、意欲を喪失する傾向があります。 従業員の継続的な貢献を称えるために、組織内での効果的な報酬、評価制度を優先させましょう。
有効なパフォーマンス管理の最も代表的なテーマは、頻繁なフィードバックでしょう。 定期なレビューと率直な評価、そして四半期ごとにパフォーマンス向上計画について話し合うことで、向上に必要な知見を従業員に伝えるだけでなく、従業員が成果を挙げられるように管理者が尽力していることも伝わります。
さらに、フィードバックは互いに行うものであり、従業員が管理者を評価できるようにすることも、パフォーマンスの向上に不可欠であると認識してください。 例えば、退職面談を手伝うことで、離職の原因となった組織内の潜在的課題について、貴重なフィードバックを得ることができます。
事業の規模にかかわらず、適切な機能を備えた、適切なパフォーマンス管理ツールが必要です。 パフォーマンス管理のプロセスを効率化すると同時に、プロセスのあらゆる段階を実施しやすくするシステムが必要です。 理想的なツールには次のようなものがあります。
- ゴール管理:
目標の設定と管理は、パフォーマンス管理に欠かせません。 ソリューションには、複数の目標オプション、目標を追跡する機能、目標について意味のあるメモを残せるスペースが含まれている必要があります。 これらは、SMART 目標の導入においても有効で、パフォーマンス評価の合間に従業員が方向性を確認することができます。 - 適応性に優れたパフォーマンス評価フォーム:
評価がシンプルであろうと包括的であろうと、レビュアーは、評価プロセスに柔軟性を求めています。 一貫性のある詳細なフォームによって、曖昧さを回避でき、評価の質と効果が高まります。 - 表彰:
表彰管理システムは、パフォーマンスに基づいた賃金制度や長期的な報酬制度などの表彰システムの導入に役立ちます。 - 改善計画:
パフォーマンス管理システムには、従業員のパフォーマンスを自動的に追跡した後、従業員のパフォーマンスが低下している場合にはパフォーマンス向上計画を実施できることが求められます。
パフォーマンス管理の効果を高め、従来の従業員評価と差別化する要素の 1 つは、「規則性」です 年次評価や四半期評価に依存するモデルとは異なり、この方法では、従業員とマネージャーの間で有意義なやり取りが頻繁に行われることが重視されます。 継続的なパフォーマンス管理の中核は、一貫性にあります。これは、目標、進捗、個人の実績を常に強調するアクティブな周期的プロセスです。 このアプローチにより、目標を設定して定期的に見直し、継続的に監視し、必要に応じて調整できます。
従業員とその組織のニーズが進化するペースが加速し続ける中、パフォーマンス管理も同様に、静的で、一時的なバラバラのやり取りから、単一の継続的な対話へと進化する必要があります。
従来の年次従業員評価は、長い間人員管理から切り離すことができない側面でしたが、現在のビジネス環境の急速な進化に伴い、それ以上のものが求められています。 継続的パフォーマンス管理は、従業員の取り組みを組織の目標に合わせて調整し、継続的な改善を促進し、業界や市場が変化する中でもアジリティを確保するために不可欠なツールです。
ServiceNow HR サービスデリバリ (HRSD) は、この継続的パフォーマンス管理アプローチをサポートするうえで重要な役割を果たします。 HR サービスデリバリ (HRSD) システムは、継続的な対話、フィードバック、開発を容易にするために必要なインフラストラクチャとツールを提供します。これにより、マネージャーと従業員は進捗状況を追跡し、目標を設定、更新し、フィードバックをリアルタイムで提供および受け取ることができます。 HR サービスデリバリシステムは、パフォーマンス管理プロセスを簡素化するように設計されており、このプロセスをより効率的で効果的なものにします。 また、貴重なデータインサイトを提供し、従業員管理においてより多くの情報に基づく意思決定と戦略策定を可能にします。これらはすべて、単一の一元化されたプラットフォームから実行できます。
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