IT 運用 (ITOps) は、質の高い IT サービスの提供とデジタルサービスの稼働に関係する人員、プロセス、サービスを表す言葉です。
ITOps にはネットワークオペレーションをはじめ、社内 IT 環境のバーチャル/物理コンポーネントまでのあらゆる要素が含まれます。この点を考えると当然ながら、IT 運用管理者とそのチームには幅広い役割と責務が伴います。
企業はそれぞれ自由に ITOps の定義、役割と責務を決めることができますが、ほとんどの企業に共通するコアの機能が存在します。実際、Disciplined Agile フレームワークでは IT 運用タスクを 6 つに分類しています。ここではその 6 つの分類をもとに、それぞれのアクティビティについて説明します。
ITOps の主目的であるソリューションの実行には、データバックアップの実行、サーバーの構成、システム停止や更新後のシステムの復元などが含まれます。これはシステムのパフォーマンスを最適化し、必要とされる適切なリソースを割り当てて最も効果的にサービスデリバリーを実施するために行われます。
ソリューションの実行にはリソースの構成、チューニングと割り当て、データの復元やバックアップが含まれます。
IT インフラストラクチャの継続的な監視は、オンプレミスとクラウドのどちらでも IT 運用の重要な責務です。インフラストラクチャを構成するリソースにはコンピューティング、ネットワークハードウェア、ソフトウェアアプリケーション、クラウドが含まれます。インフラストラクチャ管理の対象には、クラウドに展開されたアプリケーション、ネットワークセキュリティ、施設管理、ハイブリッドクラウド環境があります。
インフラストラクチャの管理にはクラウドデータ、セキュリティ、ネットワーク、施設、制御対象のソフトウェアとハードウェアが (外部デバイスも) 含まれます。
IT 運用チームは、ソリューションの依存関係やハードウェア構成を文書化するほか、IT サービスの最適なパフォーマンスを提供するための新しい構成の導入を責務とします。
構成管理ではハードウェア構成の文書化、実行可能な仕様書、作成された仕様書、ドキュメントとソリューションの依存関係が扱われます。
IT は常に進化しています。イノベーション主導で進化を導き、その進化を、業務の優先課題に対処し、サポートするような形で推し進めることが ITOps の責務です。
進化し続けるインフラストラクチャには、問題の予測と防止、影響の確認、ソフトウェアパッチの適用、ハードウェアとソフトウェアの更新が含まれます。
ITOps では災害復旧計画も行います。業務を重大なダウンタイムから守るために災害復旧の計画、訓練とシミュレーションを行います。
災害を緩和するために、災害やその他の問題をランダムにシミュレートして計画、実行し、詳細な復旧対応計画を作成します。
ITOps チームは企業のセキュリティ対応のほか、インフラストラクチャのパフォーマンスも監視します。
IT 運用を統率するために、重要なサービスとプロセスのパフォーマンス評価指標の作成、インフラストラクチャ監査の実施、ソフトウェアライセンスの管理、アラートの発行などを行います。
以上の 6 つの分類に加え、ITOps には IT 運用を潜在的な問題から守ることも要求されます。進化した現代の ITOps には予測型 AIOps も含まれ、関連データを収集して実践的なインサイトを入手して、存在する問題を容易に特定でき、将来起きる可能性のある問題を早期に見つけられます。結果としてシステムの弱点が克服され、将来の問題やサービスの低下/停止が発生前に緩和されます。
ITOps マネージャーは IT サービスと基盤のインフラストラクチャを管理する IT 運用コントロールのプロセスオーナーとして、日常的にワークロードスケジュール、停止したシステムの復旧、データバックアップの作成などを行います。
IT ハードウェアを収容する物理環境の維持管理も ITOps マネージャーの責務です。データセンターやサーバールームの過度の温度上昇を防ぐための適切な換気や空調のほか、停電発生時にサービスを維持するためのバックアップの確保も仕事の一部です。
ネットワークインフラストラクチャに関するタスクには、インフラストラクチャの内外の IT コミュニケーションの管理、テレコミュニケーション管理、ポート管理、ネットワークのリモートアクセス、セキュリティ、ネットワーク正常性の監視、内部電話システムの管理があります。
サーバーとデバイス管理のタスクには、ネットワークとストレージの管理、電子メール/ファイルサーバーの構成、フォルダセットアップと権限設定、PC のプロビジョニング、モバイルデバイスと携帯電話の通信管理、ネットワークとストレージの管理、デバイスソフトウェアのライセンス交付と管理があります。
コンピュータ操作とヘルプデスクに関するタスクには、ヘルプデスクの管理、データセンターの管理、ユーザープロビジョニング、ネットワーク通信、監査、コンピュータ操作、バックアップ管理、IT インフラストラクチャライブラリー (ITIL) の管理が含まれます。
以上のカテゴリにはそれぞれ、ベンダーと契約の管理、外部業者の管理、プロジェクトの管理と展開、問題の修復も含まれます。
ITOps の成功はさまざまな要因によって決まります。時に競合することもある以下の要素のバランスを適切にとることが、効果的な IT 運用を実現するうえでの決め手です。
- 長期 (戦略) と短期 (戦術) の目標
- 企業のニーズと運用のニーズ
- 運用効率と DevOps
ITOps は IT サービス管理、アプリケーション管理、技術管理で中心的な役割を果たす機能の一つです。
企業の IT サービスサポートに必要とされ、アプリケーション管理の技術的な要素を中心に展開されるアプリケーション管理チームは、アプリケーションの設計、展開、運用、テストと最適化において重要な役割を担います。また、コードレベルのアプリケーション監視に重要なプログラミングの知識も持ちます。
技術管理は戦略アプリケーションの設計管理のための高度な知識を提供し、IT インフラストラクチャのサポートにあたります。IT チームは従業な技術分野に技術リーダーやアナリストを選び、ライフサイクルの決定に必要な技術知識を得ることができます。
IT 部門内のよく知られる機能の 1 つであるサービスデスクは、IT チームと事業部門をつなぎ、ユーザーの IT サービス要求の窓口のはたらきをします。
ITOps は以上の機能と一部重複するところもありますが、固有の役割があります。その目標は、IT サービスの提供に必要な構成アイテムに加え、IT サービスをコントロールして維持することにあります。企業によってはサービスデスクを別個に IT 運用と IT アプリケーションヘルプサービスに分割するところもあります。
ITOps はサービスを支えるインフラストラクチャのセットアップ、設計、構成、展開とメンテナンスを監督し、業務のミッション実現に関連するあらゆる管理対象の要素全体を把握する役割であることから、安定した運用のための基盤の一つとなっています。IT インフラストラクチャは、サービスに必要とされる処理、ストレージとネットワークの機能を提供する物理システムと仮想システムを構成するテクノロジーのことです。
クラウドの導入は過去 10 年間における有力な IT 運用モデルとされ、IT インフラストラクチャの構成、使用と管理のあり方を大きく変えました。
パブリッククラウドは多くの場合、コストの最適化、柔軟性、弾力性、拡張性を得るために効果的なソリューションとされますが、多くの ITOps 環境ではコンプライアンス、コントロール、信頼性とセキュリティを提供するためにプライベートクラウドソリューションが必要とされます。このため、両者を活かしたハイブリッドクラウドモデルがとられる傾向にあります。
計画全般にエッジコンピューティングを組み入れることが重要になりつつあります。エッジコンピューティングはデータ処理をデータソースに近づけることで応答時間を短縮し、ITOps の効率性を高めます。
ITOps には従来と比べてさまざまな運用アプローチが要求されます。企業は過去のレガシープラクティスから移行して新しいトレンドを取り入れることの重要性に気づいています。デジタルトランスフォーメーションは最新のビジネスに要求されるスピードとレジリエンスをサポートする重要な役割を持ちます。IT はビジネスサービスを提供する主要な役割だけでなく、ますます多くのデジタルサービスが製品として提供されるようになっています。ITOps にとってこれまでになくビジネスの優先課題に即した対応が重要です。
インフラストラクチャに導入される新しいツールを活用し、成長戦略のためのあらゆる適切なスキルを得ることが重要です。
ITOps にはビジネスニーズへの迅速な対応能力が求められます。これは、製品中心のアプローチによりアクティビティとチームを組織すると同時に、従来のサイロ化を避ける必要があることを意味します。
IT の自動化により価値が低く時間のかかる反復作業が排除されます。
KPI に基づきながら、顧客とビジネスニーズにフォーカスした測定基準が必要です。KPI を重視することにより、ITOps のすべての業務とステークホルダーのゴールと連携させることができます。
ServiceNow で、問題を発生前に予測しましょう。