クラウド暗号化とは、データを読み取り可能な形式から暗号化されたバージョンに変換してから、クラウドサービスに保存するプロセスを指します。復号化キーを持つユーザーのみが元のデータにアクセスできるため、オフプレミスのクラウド環境でデータプライバシーとセキュリティを確保できます。
クラウドコンピューティングは、21 世紀で最も革新的なテクノロジーの 1 つです。大切な写真をバックアップする個人から、クラウドベースのベンダーを通じてすべてのサービスを運営する組織まで、クラウドは私たちの日常のデジタル生活に深く浸透しています。クラウドの活用例は至る所で見つけることができます。組織はスケーラブルなアプリケーションをクラウドプラットフォームに展開し、研究者は大規模なデータセットでリモートで共同作業を行い、消費者は数回クリックするだけでストリーミングされたエンターテインメントにアクセスできます。
しかし、注目度が高くなれば脆弱性も生まれます。クラウドコンピューティングの急拡大は、サイバー犯罪者の標的となっています。彼らにとって、オフプレミスのコンピューティングへの移行は、不正なデータアクセスやデータ侵害の温床となり、クラウドサービスが拡大し続けるにつれて、データ盗難の可能性も高まります。
こうした進化する脅威を防御し、機密データを保護するために、組織はクラウドの強力なデータセキュリティを頼りにしています。そのような防御策の 1 つがクラウド暗号化です。
基本的に、クラウド暗号化とはデータを解読不可能なコードに変換して不正アクセスを防止することです。このプロセスは、仮想的な錠前と鍵の機構として例えられることが多く、リモートサーバーに保存されているデジタル情報の安全性を確保し、権限のないユーザーが完全にアクセスできないようにします。
クラウド暗号化プラットフォームは、データを安全に送信することで機能します。データがクラウドのアプリケーションやストレージに送信 (およびそれらから取得) されたり、さまざまな場所にいる権限を持つユーザーと共有されたりする際に、暗号化が行われます。これにより、データを転送中に読み取り不能の状態を維持して、潜在的な脅威から保護します。データは転送中だけでなく、保存中もセキュリティのレイヤーで保護されます。
こうした暗号化ツールにより、ファイルは、転送中でもリモートのストレージデバイスに保存中でも、アクセスを許可されたユーザーのみが閲覧できるようになります。結果として、保護のレイヤーが加わり、クラウドのデータセキュリティエコシステム全体に貢献します。
クラウド暗号化は、次の 2 つのフェーズに分けられます。
- 暗号化
データは、クラウドに転送される前に、特定のアルゴリズムを使用して暗号化した形式に変換されます。この変換は暗号化キーに依存しています。暗号化キーとは、暗号化プロセスの出力を決定するビット列です。暗号化の強度は通常、キーの長さに依存します。一般的に、キーが長いほど暗号化はより強力になります。 - 復号化
許可されたアクセスが必要になった場合、暗号化されたデータは復号化キーを使用して元の形式に変換されます。復号化キーは、使用される暗号化方法に応じて、暗号化キーと同一の場合と異なる場合があります。
クラウドで送受信されるデータについては、暗号化が必要となるシナリオが 2 つあります。
- 保存中の暗号化
このシナリオでは、クラウドサーバーに保存されているデータの暗号化に重点を置きます。誰かが物理的にサーバーやそのドライブにアクセスしたとしても、復号化キーがなければデータを読み取ることはできません。保存中の暗号化は、クラウドデータを能動的脅威から保護するだけでなく、ハードドライブが不適切に廃棄された後にデータが脆弱になる可能性からも保護します。 - 転送中の暗号化
転送中の暗号化では、通常は SSL や TLS などのプロトコルを使用して、クラウドとの間で送受信されるデータを確実に保護します。適切に保護されていないデータは、転送中に傍受されやすくなる可能性があるため、このタイプの暗号化は重要です。
多くのクラウドサービスでは、保存中と転送中のデータが自動的に暗号化されます。ただし、組織でサードパーティのツールやサービスを使用して追加の暗号化レイヤーを実装し、セキュリティを強化することもできます。
こうしたプロセスの中心にあるのが暗号化アルゴリズムです。これらのアルゴリズムは、データをコード化して不正なユーザーが読めないようにするための方法を指示する一連の手順です。クラウドベースのデータに対しては、次の主要な 2 つの暗号化アルゴリズムがあります。
- 対称暗号化
この方法は、暗号化と復号化の両方のプロセスに単一のキーを使用するもので、シンプルで迅速に実装できることを主な理由としてデータのバルク暗号化によく使用されています。ただし、対称暗号化にはメリットがある一方、セキュリティ上の懸念もあります。許可されていない人物が暗号化キーにアクセスした場合、データを簡単に復号化できてしまいます。同じキーが錠前と鍵の両方として機能するので、慎重に管理しないと潜在的な脆弱性を招く可能性があります。 - 非対称暗号化
非対称暗号化は、公開鍵とプライベート認証トークンの 2 つの異なるキーを使用して機能します。この方法の利点は、デュアルキー方式にあります。キーは本質的にリンクしていますが、同一ではありません。データを復号化するには、共有可能な公開鍵とユーザー固有のプライベートトークンの両方が必要です。この 2 つのキーによるシステム自体がセキュリティの追加レイヤーを提供します。誰かが公開鍵にアクセスできたとしても、対応するプライベートトークンがなければ、暗号化されたデータは侵入不可能な状態を保ちます。
極秘データ、知的財産、顧客の機密情報のいずれを保護する場合でも、クラウド暗号化は最新のデジタルセキュリティにおける不可欠な要素です。クラウドでデータを暗号化することで、そのデータの窃盗や破壊を意図する相手から組織とその顧客を安全に保護できるだけでなく、組織は規制基準に確実に準拠し、データプライバシー関連法に関するコンプライアンス違反に伴う高額な罰金を回避できます。
クラウド暗号化の最大のメリットには、次のようなものがあります。
明らかに、クラウド暗号化の最も大きな利点は機密データをエンドツーエンドで保護できることです。データが転送中でも、保存中でも、デバイス上にあっても、ユーザー間で共有されていても、暗号化によってデータは不正アクセスから保護され続けます。
前述のように、クラウド暗号化は、組織が重要なデータ保護関連の指針を遵守する上で役に立ちます。データプライバシーがより重視されるようになる中、ユーザーデータを悪意のある行為から保護するために必要な措置を組織に講じさせるため、FIPS (連邦情報処理標準)、HIPPA (1996 年医療保険の携行性と責任に関する法律) などの規制が策定されました。クラウド暗号化を採用すると、制定された法律への遵守が容易になります。
暗号化されたデータでも悪意のある主体によって改ざんされる可能性がありますが、そうした試みは許可されたユーザーが簡単に検出できます。つまり、暗号化によってデータを保護できるだけでなく、データの完全性を確認する手段がユーザーに提供されるのです。
暗号化は組織のセーフティネットとなり得ます。特定の状況では、侵害中に漏洩したデータが暗号化されていれば、組織は侵害を開示する義務を負わない場合があります。これにより、評判の低下や法的な問題などの影響が生じる可能性を大幅に減らすことができます。
クラウド暗号化は信頼に関するものであり、この信頼とは、データ自体がクラウド内で保護され安全に移動できることに対する信頼、そして顧客の個人データを組織がキャプチャして分析することを顧客が許可する際に示す信頼です。暗号化を効果的に使用することで、組織、ブランド、製品に対するステークホルダーの信頼を強化し、データプライバシー保護に対する組織のコミットメントについて明確なメッセージを発信できます。
クラウド暗号化は、間違いなくサイバーセキュリティの武器の中でも強力なツールですが、独自の課題もあります。これらの障害と対応するソリューションを理解することで、組織はリスクを最小限に抑えながら暗号化戦略から最大の成果を得ることができます。
クラウド暗号化の課題とソリューションには次のようなものがあります。
- 課題:クラウドプロバイダーはインフラストラクチャのセキュリティに多額の投資を行っていますが、一般的にユーザーデータの安全性については責任を負いません。クラウドで作業する際にデータと資産を保護する責任は、データ所有者にあります。
- ソリューション:組織は、ユーザートレーニングや意識向上のプログラムに投資する必要があります。パブリッククラウドに関する共有責任モデルを理解することで、ユーザーは事前対応的な対策を講じてクラウドベースのデータと資産のセキュリティを確保できるようになります。
- 課題:暗号化の導入は、暗号化ツールの購入や、場合によっては既存のインフラストラクチャのアップグレードが必要になるため、コストの追加と見なされることがあります。
- ソリューション:意思決定者は、セキュリティへの長期的な投資として暗号化に取り組む必要があります。データ侵害やコンプライアンス違反に起因する潜在的なコストは、多くの場合、暗号化ツールやインフラストラクチャのアップグレードに対する初期支出をはるかに上回ります。
- 課題:暗号化を導入すると、データ転送プロセスにステップが追加され、遅延の拡大につながる可能性があります。
- ソリューション:効率的な暗号化アルゴリズムやツールを検討することで遅延を最小限に抑えられます。さらに、インフラストラクチャを適切に調整し最適化して、パフォーマンスに対するクラウド暗号化の影響を防ぐこともできます。
- 課題:暗号化されたデータへのアクセスキーが失われたり、破壊されたりすると、データ所有者であっても、事実上データを取り出すことができなくなります。
- ソリューション:包括的なキー管理戦略を導入します。暗号化キーを定期的にバックアップし、オンサイトとオフサイトの両方で複数の安全な場所に保存して、権限のある人物が重要なデータにいつでもアクセスできるようにします。
- 課題:ユーザーが自分の暗号化キーを選択できる場合、執拗な攻撃者が暗号化を解読するリスクが高くなります。
- ソリューション:多要素認証とマルチキー暗号化のシステムを採用します。これにより、機密コンテンツへのアクセスには複数レベルの照合が必要になり、潜在的な攻撃者に対する防壁を大幅に強化できます。
クラウド暗号化のベストプラクティスを実装することで、組織のデジタルセキュリティ態勢を大幅に強化し、機密データがオフサイトに保存されている場合でも潜在的な侵害から保護できます。検討する価値のある主な戦略をいくつか紹介します。
- セキュリティ要件を綿密に定義する
クラウドへのデータ移行プロセスを開始する前に、セキュリティチームが要件を明確に定義することが不可欠です。そうした前提条件を綿密に策定することで、組織のセキュリティフレームワークにシームレスに整合するクラウドプロバイダーを特定し、最前線の強力な防御を確立できます。 - 暗号化プロトコルを決定する
データの特徴は様々に異なるため、暗号化アプローチもそれに応じたものにする必要があります。データ固有の分類と外部の規制要件を理解し、暗号化が必要なデータセグメントを正確に見極めることが重要です。さらに、転送中、動きがなく保存されている時、活発に使用されている時など、そのデータに最も暗号化が必要となる重要なタイミングも特定します。また、誰にキー自体の管理権限を持たせるべきかを早い段階で決定することも重要です。 - 転送中のデータのセキュリティに重点を置く
内部ネットワークの範囲を超えてデータが移動すると、リスクが増大します。そのため、信頼性の高い暗号化対策の活用は必須です。堅牢なプロトコルを採用することで、データがさまざまなサードパーティ領域を通過する際に保護を維持できます。保護のレイヤーを追加したい場合は、仮想プライベートネットワーク (VPN) や IP セキュリティ (IPsec) などのツールを統合することが役に立つ場合もあります。また、クラウドアクセスセキュリティブローカー (CASB) ツールを使用すると、統一された制御アプローチが提供され、クラウドリソースへのユーザーのアクセスを確立されたセキュリティプロトコルに厳密に沿ったものにすることができます。 - オンサイトでバックアップと暗号化を実行する
機密情報をクラウドに移動する前に、そのデータをオンサイトで暗号化することが最善です。さらに、バックアップの存在を確保しておくことで、防御メカニズムが強化され、クラウドアカウントやプロバイダーが侵害された場合でもデータを保護できます。 - 包括的なキー管理を導入する
キーはクラウド暗号化において主要な役割を果たします。そのため、暗号化キーをそのライフサイクル全体にわたって適切に管理することが不可欠です。始めに暗号化キーをキーレジストリに記録します。キーは暗号化されたデータとは異なるデータベースに保存し、定期的にバックアップを作成して維持します。定期的な監査と (特に主キーと回復キーに対する) 多要素認証を組み合わせることで、防御のレイヤーを追加できます。キー管理を提供しているクラウドベンダーもありますが、多くのデータプライバシー関連規制ではキーの内部管理が求められているという事実を考慮すべきで、その責任を怠ると、ビジネスがコンプライアンス違反になる可能性があります。
クラウドは現代のデジタル世界に不可欠な要素となり、クラウド暗号化は、組織がデータを安全にオフサイトのサーバーに保存したり、そこから取り出したりできるようにする上で極めて重要な役割を果たしています。これにより、貴重な知的財産と消費者データを保護しながら、コンプライアンスを確保できます。しかし、迷路のような暗号化に対処するのは困難であり、キー管理の複雑さから、遅延の可能性の問題や重要なデータへのアクセスの喪失という差し迫った脅威まで、さまざまな課題が山積しています。ServiceNow クラウド暗号化は、そのすべてを変えます。
クラウド暗号化は、受賞歴のある Now Platform® 上に構築されており、データ保護戦略の強化を目指す組織にとっての強力なソリューションです。業界をリードする AES 256 ビット暗号化と FIPS 140-2 レベル 3 認証済みのハードウェアセキュリティモジュール (HSM) を組み合わせることで、クラウド暗号化は比類のないレベルのセキュリティを実現しています。同時に、プラットフォームの直感的なインターフェイスにより、キーのライフサイクル管理を容易にし、労力不要のキーローテーションなどの自動化機能を提供します。これにより、手動での介入が低減され、よりセキュリティが維持された安全な運用が可能になります。ServiceNow は「Bring Your Own Key (BYOK)」オプションやキーアクセス可監査性などの機能により、柔軟性とコンプライアンスを両立させ、今日の厳しい規制要件を満たします。
ServiceNow クラウド暗号化は、クラウドでのデータ保護を優先する組織にとってセキュリティとシンプルさを融合させた必須のツールとなります。ServiceNow クラウド暗号化で組織のセキュリティ対策を強化する方法の詳細にご関心をお持ちですか?今すぐ ServiceNow にお問い合わせください!