人工知能 (AI) の能力は驚異的な速さで拡大しています。わずかここ数年で、AI は狭い特化したタスクを実行するだけだったのが、 ほぼすべての業界で自然言語処理 (NLP)、リアルタイムの予測データ分析、自律的な意思決定などの複雑な機能を処理するまでになりました。汎用人工知能 (AGI) の夢がすぐにでも実現しそうにさえ思えることもあります。
しかし、最近のさまざまな進歩にも関わらず、AI は基盤となるデータに縛られています。また、そのデータに偏ったパターンや非倫理的なパターンが含まれていると、AI システムが問題を永続化させるリスクが生じ、不公平、不正確、有害な結果につながる恐れがあります。
「責任ある AI」とは、AI にポジティブな原則を設けるコミットメントを表す用語です。このプラクティスは、2022 年と 2023 年に消費者向けの実用的な GPT ソリューションが導入されて AI が爆発的に普及する以前からありましたが、特に新世代の生成 AI (GenAI) に深く関係しています。これは、多くの生成 AI システムはテキスト、画像、その他のコンテンツを作成するように設計されており、ユーザーと直接やり取りして意思決定に大規模な影響を与えることから、これらのモデルが正確で偏りがなく、倫理的に健全な出力を生成することが不可欠であるためです。
倫理は責任ある AI の主要な要素ですが、唯一の要素というわけではありません。実際のところ、責任ある AI と倫理的 AI は同じ意味で使用されることもありますが、実際には異なるものです。
- 責任ある AI
責任ある AI は、AI システムの開発、展開、ガバナンスの指針となる包括的なフレームワークです。倫理だけでなく、公正性、透明性、説明責任、コンプライアンスにも対応し、AI が有害性を最小限に抑え、公共の利益に貢献できるようにします。責任ある AI は、AI が社会に与える広範な影響を考慮しており、信頼を構築し、定められた価値観に沿って AI の開発を行うためのプラクティスを含みます。 - 倫理的 AI
倫理的 AI は、責任ある AI のサブセットと見なされることが多く、AI の開発と使用における道徳的側面と倫理的側面に特に重点を置いています。偏見や差別の問題、AI が人権に与える影響といった課題に対処します。倫理的 AI は、AI の判断における道徳的な意味あいを重視し、正義と基本的権利を尊重して危害を及ぼさない AI を提唱するものです。
責任ある AI の背後にある一般的な考え方は、道徳観が備わっていることを示すインテリジェントなシステムを構築することです。もちろん、「道徳」は人によって意味が異なる場合があります。責任ある AI のゴールをより明確に表現するために、コンピューター科学者たちは、ユーザーが進んで信頼してくれる AI の理想的な特性を定義するのに役立つフレームワークを開発しました。これらの「信頼できる AI の柱」は、エンジニアや開発者が責任ある AI システムを設計、テスト、改良する際のチェックリストを提供します。
グループによって解釈や重点は異なるかもしれませんが、ほとんどの柱となるフレームワークには、以下の要素に類するものが含まれています。
説明可能性と解釈可能性により、AI システムがどのように意思決定を行うのかを理解できます。説明可能性は、意思決定プロセスを追跡するのが困難な再帰型ニューラルネットワーク (RNN) のような複雑なモデルでは特に重要です。特徴量重要度分析 (feature importance analysis) や反実仮想 (counterfactuals) などの手法は、個々の結果を説明するのに役立ち、特定の入力が AI の予測にどのように影響するのかユーザーが確認しやすくなります。この透明性により説明責任が果たされ、モデルの動作における欠陥や偏向を特定して対処できるようになります。
これにより、AI システムがすべてのユーザーを平等に扱うようになり、システム的な偏りや差別的な結果が発生するのを回避できます。この柱は、採用システムや医療など、大きなリスクを伴う意思決定に使用される AI には極めて重要です。公正性を確保するには、代表性のあるデータと偏りを軽減する手法への取り組みが必要です。これにより、さまざまなグループへの不平等な影響を軽減できます。公平性と公正性を確立することで、ユーザーの信頼を築き、AI の背後にある組織の評判が低下するのを防ぐことができます。
再現性は、モデルが類似の条件下で一貫して動作しするようにして、モデル開発プロセスの検証とデバッグを可能にします。この柱は、モデルがどのように構築、トレーニング、テストされたのかについて明確な記録を提供するため、法令遵守と監査可能性の中核となります。再現性は透明性に寄与しながら、AI モデルの継続的な改善もサポートします。
信頼性と安全性は、AI システムが一貫したパフォーマンスを発揮し、予期しない状況に安全に対応できるようにします。この柱は、自動運転や医療など、エラーが重大な結果をもたらしかねない分野に AI を導入する際に不可欠です。信頼性の高い AI システムは、ばらつきやエッジケースに対応できるようさまざまな条件で厳格にテストされ、障害や安全性の欠いた挙動が発生するのを防ぎます。信頼性と安全性の規格には、改ざんを防いだり脆弱性を軽減する仕組みも含まれており、AI の全体的なレジリエンスを強化します。
透明性は、AI システムが機能する仕組みについてのインサイトを提供します。AI が信頼できるものであるためには、その運用、プロセス、意思決定経路が可視化され、理解しやすくなっていなければなりません。これにより、特定のタスクに対する AI の適合性を評価するために必要な情報を得ることができます。また、関係者がシステムパフォーマンスの詳細な測定基準に基づいて、より適切な情報ベースの意思決定を行うことができます。
プライバシーとセキュリティは、AI システム内の個人データと業務データの保護に重点を置いています。これらのプラクティスでは、AI システムがデータを倫理的に管理して、アクセスを許可されたユーザーのみに制限し、転送中と保存中の両方の情報を保護していることを検証します。プライバシーとセキュリティのプロトコルは、ユーザーデータの保護、悪意のあるアクセスの防止、ユーザーからの信頼の維持、法例遵守のサポートに不可欠です。
大規模な AI モデルが拡張するにつれて、二酸化炭素排出量も増加します。持続可能性は、このような環境への影響を最小限に抑えることに重点を置いています。持続可能な AI の開発には、コンピューティングリソースの最適化とエネルギー効率の向上が含まれます。持続可能性に重点を置くことで、AI システムが組織の責任を果たせるようにサポートし、より広範な環境的目標と社会的目標に貢献できるようになります。
AI は孤立無援で動作するわけではなく、他者から提供されたデータと指示に基づいて動作します。説明責任は、AI システムの運用方法と、AI システムが社会に与える影響について、開発者と組織に責任を担わせるものです。これには、システム障害や意図しない結果に対処するための、継続的な監視、詳細な文書化、包括的なプロトコルが求められます。説明責任のプラクティス (MLOps など) は、AI システムと倫理基準の整合性を維持し、人間が AI の意思決定を有意にコントロールできるようにします。
人間中心主義は、AI システムが人間の利益に貢献し、ユーザーのニーズ、価値、目標を優先にするものです。人間中心型の AI は、ユーザビリティと共感に重点を置き、人間の意思決定を置き換えずに支援する、インテリジェントなソリューションを確立します。この柱は、人間の能力を補完する AI を設計するように開発者に促します。
包括性には、幅広いユーザーにメリットをもたらし、アクセシビリティを促進し、偏向やその他の排除的影響を回避する AI システムの構築が含まれます。包括的な AI は、さまざまなグループのエクスペリエンスやニーズを考慮して、多様な開発チームと、AI トレーニングデータの公正な代表性を重視します。包括性を念頭に置いて AI を設計することで、開発者は幅広い対象者により効果的にサービスを提供するシステムを構築できます。
AI は 2020 年代の最も影響力のあるテクノロジーとなる可能性があり、政府、ビジネス、日常生活への導入が拡大しています。AI の出力が広範囲に及び、多くの人が AI とやり取りして重要な決定を下すようになると、AI システムがその信頼を確保することがより重要になります責任ある AI はこのニーズに応えます。 責任ある AI を正しく実装すると、次のことを実現できます。
- バイアスの低減
代表性のある公正なデータセットで AI をトレーニングすることで、特定のグループに不当な影響を与えかねない偏った意思決定がなされる可能性を低減できます。 - 透明性の向上
責任ある AI のプラクティスには、 AI の特定の判断を生み出す要因を明らかにする説明可能性の手法が含まれています。 - コンプライアンスの強化
データプライバシーや AI の倫理に関する規制が厳格化しているため、責任ある AI のプラクティスは、組織が規制基準を満たし、コンプライアンスを維持するのに役立ちます。 - ステークホルダーからの信頼の高まり
責任ある AI の導入により、倫理的 AI のプラクティスが遵守されるようにすることで、消費者、クライアント、規制当局との信頼関係を構築しやすくなります。 - 倫理的整合性
責任ある AI は、AI テクノロジーを組織の価値観と整合させて、倫理的な業務実践の基盤を構築します。 - リスクの軽減
AI ライフサイクルの早い段階で潜在的な危害を特定して対処することにより、責任ある AI は意図しない結果に遭遇するリスクを軽減し、より安全で信頼性の高いインテリジェントなアプリケーションをサポートできます。
責任ある AI の実装に必要なのは、ポリシーを確立することだけではありません。AI の開発、展開、監視のすべての段階で倫理的な配慮を行うことが必要です。責任ある AI を効果的に実装する上で、組織の指針となる重要なプラクティスをいくつかご紹介します。
AI は、組織の中心的な価値観と倫理上のコミットメントを反映する必要があります。これらの原則を定義して確立するには、人間中心性、包括性、透明性、説明責任に関する明確なガイドラインを作成し、そのような基準を AI 開発プロセスの基本的な要素にします。コア原則は、多様な部門横断型チームからの意見を取り入れて、協力して策定します。理想的には、このチームには AI スペシャリスト、倫理学者、法務専門家、ビジネスリーダーを参加させます。責任ある AI の原則を確立することで、共通の倫理ロードマップが得られ、AI システムが社会的期待を反映しながら両方の業務目標をサポートするのに役立ちます。
影響アセスメントを実施して、AI システムの潜在的な影響を評価します。ポジティブな影響とネガティブな影響の両方を分析することで、リスクをより正確に予測し、それを軽減するための戦略を策定できます。このプロセスでは、主要なステークホルダーを特定して、彼らがどのように影響を受けたのかを考慮し、実際の影響を監視するための継続的な方法を開発します。影響アセスメントはプロアクティブなリスク管理の基盤であり、これによって、組織は新しい AI システムを展開する前に、情報に基づいた倫理的に正しい意思決定を行うことができます。
責任ある AI の原則と実践で、従業員、ステークホルダー、意思決定者をトレーニングします。組織はターゲットを絞ったトレーニングプログラムを通じて、規制要件と AI の懸念事項に対する理解を深めることができます。責任ある AI に関する意識を高めることで、説明責任の文化が醸成され、従業員が問題の発生を認識して対処できるようになります。また、責任ある AI の原則が組織全体に浸透します。
データの収集やモデルのトレーニングから展開と監視まで、あらゆるステージに責任ある AI のプラクティスを組み込むことで、倫理を AI 開発の中心に据えます。データソースと意思決定プロセスを文書化し、継続的な監視を実装することで、倫理が常に優先されるようにします。特に人種、ジェンダー、社会経済的地位などの繊細な問題に対しては、偏りの検出と公平性のテストの手法を定期的に適用します。
個人情報を含むことが多い大規模で多様なデータセットに AI が依存していると、データの誤用や不正アクセスに関するプライバシー上の懸念が生じます。これに対処するには、透明性とコンプライアンスに重点を置いたデータガバナンスのプラクティスを導入します。AI システムは、データ利用ポリシーを通知し、インフォームド・コンセント (告知に基づく同意) を取得し、機密情報を保護するための安全対策を導入している必要があります。
前述のように、決して人間の意思決定を AI に置き換えるべきではありません。明確な説明責任を定義し、AI システムを監視する仕組みを導入することで、管理体制を確立します。AI の意思決定を人間が監視することで、特に医療、ファイナンス、刑事司法などのリスクの高い分野で、組織が重要なプロセスのコントロールを維持できます。倫理コンプライアンスの継続的な監視と定期的な監査のモデルを確立することで、人間による管理をさらに強化できます。
責任ある AI を重視する業界団体、研究機関、オープンソースコミュニティと連携します。外部組織と連携することで、責任ある AI における最新の倫理基準やイノベーションについて組織が常に情報を得ることができます。外部とのコラボレーションは知識の共有も促進し、倫理的な AI の大きな進歩に貢献します。
責任ある AI が普及するに伴い、AI システムを構築する組織だけでなく、人間社会のより大きな文脈においても、いくつかの明らかなメリットが享受されます。以下のメリットでは、倫理的 AI のアプローチによる好ましい変化を垣間見ることができます。
責任ある AI のプラクティスの採用は、企業が提供する AI 製品の品質と信頼性の向上に直結します。モデル設計において透明性と公正性を優先することで、結果の精度を高めて偏りを低減し、 AI の意思決定方法の透明性も高めることができます。このレベルのインサイトにより、企業が AI モデルを常に改良して最適なパフォーマンスと公正性を実現できるようになります。
同時に、責任ある AI はブランドの評判も高めます。これらの原則にコミットしている企業は、信頼性が高いと見なされます。そうしたコミットメントは、プライバシーと公正性を重視する消費者を惹きつけます。それは投資家、従業員、ビジネスパートナーにとっても魅力的に感じられることが多いです。競争の激しい市場では、責任ある AI のプラクティスに優れた組織は評判を高め、データプライバシーの問題や倫理に欠けた AI のプラクティスに苦慮している組織との差別化を図ることができます。
AI の透明性によって、AI を活用したプロセスのコントロール感と信頼感が高まり、このテクノロジーへのユーザーの関与が促進され、出力への信頼性も向上します。自分が尊重され、十分な情報を提供されていると感じるユーザーは、権利を尊重してくれる組織への忠誠心を維持しやすくなります。
責任ある AI はデータプライバシーを優先し、データの悪用や不正アクセスに関連するリスクからユーザーを保護します。厳格なプライバシーのプラクティスを導入することで、ユーザーが自分の情報をより適切に管理できるようになり、ユーザーに自分のデータが倫理的かつ安全に処理されている安心感を与えることができます。
AI の影響をより広い視野で捉えると、責任ある AI は、公正かつ公平で社会のためになる成果を育むことで、社会をより良いものにすることができる可能性を秘めています。AI システムが倫理的な配慮に基づいて設計されていると、平等な機会の支えとなり、医療、教育、金融資産などの重要なサービスへの公平なアクセスを提供することができます。
これにより、強力かつ倫理的なイノベーションが促進され、組織は AI 機能を使用して、倫理的基準を損なうことなく複雑な問題を解決できるようになります。環境への影響の軽減から有益な科学研究の推進まで、責任ある AI は、AI の効率性を多くの建設的な方法で適用することで、公共目標の達成に貢献します。
AI の適用範囲と影響が拡大し続ける中、責任ある AI を優先することは、紛れもなく責任ある行為と言えます。ServiceNow AI は、AI ライフサイクル全体を通じて倫理的基準と実用的基準を重視することでコミットメントを示し、インテリジェントなソリューションを創出してビジネス価値と人間の可能性の両方を高めています。
ServiceNow は、責任ある AI の原則を遵守することで、効果的で偏りがなく、コンプライアンスに準拠した透明性の高い AI の提供をリードしています。これらの原則は、ServiceNow における開発とガバナンスのプラクティスの指針となっており、ServiceNow は、責任ある AI ハンドブックなどのツールやリソースを活用しながら、ユーザーが責任ある形で、倫理的に、そして長期的な好ましい影響を見据えつつ AI を利用できるように支援しています。
ご自分の価値観に沿った AI のメリットを体験する準備はできていますか。今すぐ ServiceNow の生成 AI ソリューションのデモをご覧ください。