社内業務を効率化するテクノロジー基盤としてServiceNowを採用している富士通は、ServiceNow Otto*を駆使して、社内サービスデスク業務に対し、解決済みの問い合わせ内容や回答内容を基にナレッジを自動生成させるなど、AIの持ち味を生かした業務効率化を推進しています。社内でAI活用の成功事例を蓄積し、その知見とノウハウを顧客や社会に還元していく考えです。
* ServiceNow Ottoは、2026年5月に発表されたエンタープライズAIエクスペリエンスで、Now Assist、Moveworks、AI Experienceを統合しています。
「業務の見える化・標準化・自動化」を目指してServiceNowを導入
「IT企業からDX企業へ」の転換を目標に掲げ、2020年10月から全社DXプロジェクト「フジトラ」(Fujitsu Transformationの略)を推進している富士通。その変革を支える重要なプラットフォームと位置付けているのがServiceNowです。
「ServiceNowには、ITサービス管理(ITSM)のほか、IT投資プロジェクト管理、ITオペレーション管理、セキュリティ管理、人事サービス管理(HRSD)、ワークフロー、さらには独自のビジネス開発など、多彩なソリューションが用意されています。これらを1つに統合して、全社共通プラットフォームとすることを目指しています」と語るのは、同社 Enabling Technologies統括部 シニアディレクターの柳 友紀氏です。
柳氏が所属するEnabling Technologies統括部は、フジトラの推進において中心的な役割を担う「Corporate Digital 本部(CDU)」の一部門であり、社内におけるServiceNowの活用を支援しています。各部門からの相談を受け、ServiceNowの活用事例の紹介や、目的に応じた活用方法の提案、導入後のサポートなどを行っています。
Enabling Technologies統括部が現在、ServiceNowを使った社内業務変革の新機軸として積極的に推進しているのが、AIの活用です。
ServiceNowのプラットフォームや各ソリューションには、ServiceNow Ottoと呼ばれるAIが標準搭載されています。その機能をフルに使いこなすことで、これまで「人」が担っていた業務を自動化、高度化し、生産性を向上させることを目指しているのです。
具体的な取り組みとして柳氏が挙げたのは、社内ITサービスデスクの業務変革でした。
「富士通の各部門には従業員向けのITサービスデスクがありますが、それぞれに寄せられる問い合わせの内容をServiceNow Ottoで要約し、解決した問い合わせ情報を基にナレッジが自動生成される仕組みを業務に組み込んでいます」(柳氏)
ServiceNow Ottoを活用したバーチャルエージェントが社員からの問い合わせに対応することで、課題やトラブルを自己解決できる比率がさらに高まり、オペレーターの工数が減らせます。
また、問い合わせや回答の内容を基にServiceNow Ottoがナレッジ(模範解答)を自動生成するようにすれば、その作成工数も削減され、これまで以上にナレッジが蓄積できるようになります。
ナレッジの検索率50%向上、ナレッジ量43%増を目指す
富士通の従業員向けITサービスデスクにおけるServiceNow Ottoは、まだ始まったばかりですが、柳氏は「ServiceNow Otto導入以降、品質・精度改善や社内での活用事例のプロモーション活動を通して、徐々に活用率が上がってきている」と言います。今後、より多くの部門に活用の輪を広げ、全社的な取り組みにしたいと考えています。
「目に見える効果はこれからになりますが、バーチャルエージェントやナレッジの検索のみでの課題やトラブルの自己解決を目指すべく、検索ヒット率の50%向上や、ナレッジ生成量43%増加などの効果を見込んでいます。また、問い合わせのやり取りを要約する機能により、再アサイン後の対応工数も22%ほど削減される見込みです」(柳氏)
また、富士通は今後、社員からの問い合わせへの対応だけでなく、受け付けた内容を処理する後工程の手配までAIが行ってくれる仕組みも作る予定です。
「人が介在することなく、AIエージェントが問い合わせ対応の最初から最後までを完結させる『ゼロタッチサービスデスク』の実現を見据えて、実証・検証に取り組んでいます」と柳氏は説明します。
具体的には、人事やITに関する問い合わせの一次対応(L1)をAIが担い、人が介在することなく解決まで完結させるAI主導のサービスデスク、「L1 Service Desk AI Specialist 」の実証を行っています。これは人を置き換えるためではなく、人をより創造的な仕事へ解放するための取り組みです。
社内で蓄積したServiceNow活用の知見を顧客企業に紹介
富士通は、顧客企業の事業成長と社会課題の解決を支える 「Uvance」という事業モデルを展開しています。この事業モデルの中で、「ビジネスの中核を支える業務アプリケーション」の一つとしてServiceNowを位置づけており、自社でも様々な業務にServiceNowを活用しています。こうして培った社内各部門におけるServiceNowの実践知に基づき、顧客企業ごとの事情に合わせた活用方法を広く提案しているのが富士通のServiceNow事業部です。
「富士通は11年にグローバルでServiceNowを導入しており、日本でも20年から活用してきた実績があります。そのため、成功例はもちろん、失敗例も含めて膨大なユースケースを蓄積しており、ROI(投資対効果)を最大化できる活用方法を提案できるのが、富士通の強みであると自負しています」
そう語るのは、ServiceNow事業部 事業部長の山口 肇氏です。
AI Driven Deliveryにより早期に価値提供して継続的に変革を支援するツール・仕組みの提供
山口氏が事業部長を務める富士通のServiceNow事業部は、柳氏が所属するEnabling Technologies統括部と緊密に連携しながら、社内で蓄積されたServiceNowの活用事例を顧客企業に紹介しています。
中でも、柳氏が取り組んでいるAIを活用した従業員向けサービスデスク業務の自動化、高度化には、顧客企業から高い関心が寄せられているそうです。「ServiceNowのソリューションは、ITSMだけでもすでに900個近いAIエージェントが実装されており、それらをフル活用すれば、今まで人に頼っていた業務の相当な部分が自動化されるはずです。HRSDなど、非IT領域のソリューションでもServiceNow Ottoの実装はかなり進んでいます。こうした最新動向をタイムリーにお伝えしつつ、富士通社内における活用事例も紹介することで、お客様のAIトランスフォーメーションに貢献していきたいと思っています」と山口氏は抱負を語ります。
現在、山口氏がとくに力を入れているのが、ServiceNowのアプリケーションをAI活用により、超短期で実装・開発できるツール、継続的な価値提供を支える仕組みの提供です。「ServiceNowには、『こんな仕組みを作りたい』と指示するだけで、AIが要件通りのアプリケーションを速やかに構築してくれるBuild Agentという製品があります。ビジネス環境の変化によって業務変革を迫られても、それに対応するアプリケーションがすぐに実装できます」(山口氏)。
カスタマー向けインフラサービス運用で、3倍の生産性を実現
富士通は、前述した「フジトラ」以外にも、ServiceNowを使った先進的なプロジェクトを数多く進めています。その一つが、全社における開発の基盤となるFujitsu Developers Platform(DP)としてのServiceNowの活用です。
「ビジネスグループごとや事業部門ごとにバラバラだった開発管理ツールをグローバルスタンダードに沿ったDPに置き換えるプロジェクトを進めています」と説明するのは、同社 Tech Standardize統括部 マネージャーの高畠陽介氏です。
そのDPの一つとして選定したのが、ServiceNowのStrategic Portfolio Management(SPM)でした。高畠氏は「全社の開発プロジェクトが一元的に可視化できるようになりました。今後、AIなどの活用によって、さらにプロジェクト管理の効率化を行いたい」と語ります。
また、富士通は、カスタマー向けインフラサービスの高度化プロジェクトである「運用DX」にもServiceNowを活用しています。「サービスごとに個別に行われていた運用を一元化し、サービス品質を全体最適化するために導入しました」と語るのは、運用DX室 プリンシパルエンジニアの根上博樹氏です。
「運用DX」では、インフラサービス運用をServiceNow(ITSMやITOM)に統合し、ServiceNow OttoやAIエージェントを使った運用の検証と導入を進めており、現在は3倍の生産性を実現しています。
最後に山口氏、柳氏、高畠氏、根上氏は、「様々な領域でServiceNowの知見を積み上げ、より多くの実践知をお客様と社会に還元していきます。ぜひ、ご期待ください」と語りました。