シームレスな従業員エクスペリエンスの推進
Lion 社は、オーストラリアの大手飲料会社であり、米国でも急成長を遂げています。
世界的な飲料企業として、生産を継続し、トラックで配送を行い、顧客とサプライヤーの満足度を持続することは、健全な財務状態を維持するために不可欠です。製造と流通のプロセスが複雑化する中、ビール醸造メーカーから営業担当者まで多様な従業員を抱える同社では、サプライチェーンを成功に導くための基幹となるテクノロジーとデータを変革する必要性が高まっています。
「既存のテクノロジー投資の価値を最大化し、運用を簡素化して、シームレスな従業員エクスペリエンスを提供したいと考えていました」と Lion 社の従業員エクスペリエンス担当ディレクターである Emma Martin 氏は述べています。「ServiceNow は、当社のビジネス変革の取り組みにおいて重要な役割を果たしてきました」
AI プラットフォームによる従業員エクスペリエンスの統一
Lion 社ではこの 6 年間、デジタルトランスフォーメーションが進められてきました。変化のスピードが速く、顧客中心の消費者製品メーカーである Lion 社は、人材と文化部門における主要な業務プロセスを簡素化し、従業員が事業の成長支援に専念できるようにしたいと考えていました。
Lion 社の従業員の価値提案である「Don't Settle for Ordinary (平凡で満足しない)」に忠実に、従業員が「その瞬間をより意味のあるものにする」のを支援するエクスペリエンスの提供が不可欠でした。
ServiceNow の導入前、Lion 社は SAP Success Factors と様々なレガシーツールを使用して、従業員ジャーニー全体を通し人事要求を管理していました。このように複雑でサイロ化された環境では、従業員は業務を遂行するために、適切な情報にアクセスし必要な情報を見つけることが困難でした。また、完了する必要がある作業についての情報を断片的にしか把握できず、人事サポートチームに不満が生じていました。
Lion 社は、オンボーディング前、オンボーディング、定着、退職にいたるまでの従業員ジャーニーに沿って、複数の機能、システム、タッチポイントにまたがってプロセスを接続し自動化するため、ビジネス変革の AI プラットフォームとして ServiceNow を採用することを決定しました。
Lion 社では、ServiceNow 従業員センターと HR サービスデリバリ (HRSD) および IT Service Management (ITSM) を展開することで、HR、IT、財務に関連するセルフサービス要求をワンストップで行えるようになりました。単一のプラットフォームとデータモデルにより、人材と文化部門が提供する 49 のサービスに関するケースの 95% が、セルフサービスポータルを介して追跡および管理されるようになりました。これにより、生産性が向上し、卓越した従業員エクスペリエンスを提供することができています。
「ServiceNow との統合ポータルにより、従業員が人材と文化に関するサービスにアクセスするタッチポイントの数を、56 以上ものチャネルから 1 つのチャネルに減らすことができました」と Martin 氏は述べています。「あまりにもシームレスに実行されるので、従業員はそれに気付かないほどです。おかげで、操作を何度も繰り返したり、長い間待たされたりすることなく、すぐに情報を入手できるようになりました」
ServiceNow HRSD と AI を活用した仮想エージェントを使用することで、従業員はサービスデスクに連絡することなく、チャットボットから直接情報を簡単に見つけたり、ヘルプを要求したりすることもできます。たとえば、年次休暇の残余日数を確認したり、学習プログラムや能力開発プログラムの詳細を確認したりできます。
「ServiceNow AI Platform を介したセルフサービスで解決されるケースが増えたことで、過去 7 か月だけでポータルの使用率が 350% 増加し、タスクの成功率も 40% 上昇しました」と、Lion 社の従業員エクスペリエンスオペレーションの責任者である Christopher Lois 氏は述べています。「効率性の向上により、顧客への応答時間が 75% 短縮され、解決時間が 77% 短縮されました。これにより、世界的な水準と比較して 1 つのサービスあたりのコストが大幅に削減され、驚異的な結果が得られました」
Lois 氏は、ServiceNow と DocuSign の統合により、雇用契約書の作成時間が数時間から数分に短縮されたと付け加えています。また、本番稼働から 7 か月で 14,000 本以上のナレッジ記事が利用されたと報告されており、この数字は増加の一途をたどっています。さらに、約 250 本の記事がその有用性から高いユーザー満足度を得ています。これにより、従業員サービスエクスペリエンスの平均満足度評価は、約 75% から 85% 以上に上昇し、オンボーディングエクスペリエンスの満足度については 92% にまで上昇しました。
「セルフサービスナレッジ、HR サービスの再設計、仮想エージェント機能によって時間を節減できたことで、従業員はビジネスをサポートするためのより重要な業務に集中できるようになりました」と Lois 氏は説明しています。
また、ServiceNow AI Platform 内のダッシュボードを使用することで、Lion 社の人材と文化チームは、サービスパフォーマンスの追跡、処理された問題の種類の監視、解決時間の評価をより詳細に可視化できるようになりました。
「リーダーやフロントラインチームのメンバーを含む、組織のあらゆるレベルから、情報へのアクセスのしやすさについてかなり好意的なフィードバックが得られました」と Lois 氏は述べています。「また、私たちがどのように移行を成功させたのかについて関心を持つ他の事業部門からの問い合わせも増えています」
組織の自動化を実現する単一のプラットフォーム
IT サービス管理の観点から、Lion 社は従業員にシームレスなサービスを提供するという課題に直面していました。ServiceNow の導入前は Cherwell を使用していましたが、特定のワークフローやフォームが不足していたため、要求への対応に大きな遅れが生じていました。また、サービスデスクは要求を処理する際に複数のタッチポイントを経由する必要がありました。
「私たちは、サポートチームが問題を迅速に解決し、従業員により良いエクスペリエンスを提供するための可視性を提供するソリューションを必要としていました」と Lion 社のサービスリーダー、IT サービス管理およびガバナンスの責任者である Mark O’Leary 氏は述べています。
Lion 社の IT サポートパートナーは、すでに ServiceNow を使用していたため、Mark 氏と彼のチームは、パートナーのスキルと ServiceNow AI Platform での経験を活用して、Cherwell から ServiceNow ITSM への移行を迅速に進めることができると考えました。Lion 社は、インシデントと要求を追跡して管理するためのシングルプラットフォームを確立することで、移行を加速させ、導入コストを削減できました。
ServiceNow ITSM に移行して以来、Lion 社は IT サポートパートナーとのサービスレベルアグリーメント (SLA) を明確に定義しています。その結果、パートナーは Lion 社のサービスパフォーマンスを積極的に監視し、サービスデスクのチケット、特に P1 チケットや重要なインシデントのチケットを迅速に解決できるようになりました。
サービスカタログと自動化されたワークフローを使用してチケットを解決者チームに直接アサインすることで、わずか 1 年で IT チケットの件数が 60% 削減されました。
「ServiceNow は、一貫性のあるデータを用いた、統合された拡張可能なプラットフォームを提供しています」と Mark 氏は説明しています。「今では、さまざまなチケットタイプのサービスパフォーマンスを追跡するのに必要なインサイトを得ることができるようになりました」
Lion 社は ServiceNow AI Platform で 448 件のナレッジ記事も作成しており、そのうちの 138 件は顧客向けの記事です。ユーザーは、サポートスタッフを介さずに、パスワードのリセットやセルフサービス BitLocker などの単純なインシデントに関する情報にセルフサービスでアクセスできるようになりました。
「ServiceNow AI Platform の自動化とセルフサービス機能のおかげで、当社のサービスデスクへの問い合わせ件数は、過去 1 年間で月平均 35% 減少しました」と Mark 氏は付け加えています。
また、ユーザーアンケートでも、シングルプラットフォームで要求を管理することで可能になるアクセスのしやすさと使いやすさについて、従業員満足度スコアの平均が 90% を超えていることも明らかになっています。
IT と OT の融合による製造業のレジリエンス強化
消費者向け製品の多様なポートフォリオを持つグローバル飲料企業として、システムのアップタイムを確保することは、製造業のオペレーションを円滑に行うために不可欠です。8 つの生産拠点に約 350 のアプリケーションインスタンスを抱える Lion 社は、オペレーショナルテクノロジー (OT) 環境におけるさまざまな IT 問題を把握し、ビジネスリスクを最小限に抑えるための共通のプロセスとワークフローを必要としていました。
IT プロセスと OT プロセスを ServiceNow ITSM とオペレーショナルテクノロジー管理 (OTM) で接続することで、Lion 社は OT 資産のインシデント管理、問題管理、変更管理のための単一の SoR とワークフローを実現しました。
たとえば、ServiceNow AI Platform 内の OT Foundation と OT ヴィジビリティを使用して、異なる製造拠点にまたがる 300 件の機器モデルエンティティに関する 800 件の構成アイテム (CI) データを集約し、構成管理データベース (CMDB) にマッピングしています。また、ServiceNow Industrial Workspace を活用して、機器モデルデータ間の依存関係と関係に関するインサイトを得ることができています。
「ServiceNow を OT 資産の証拠記録として使用することで、可視性、ガバナンス、セキュリティが向上した環境を構築できました」と、Lion 社の自動化およびオペレーションテクノロジー担当マネージャーである Graham Skidmore 氏は述べています。「当社の IT チームは、アプリケーションで何が起こっているのかをより的確に把握できるようになりました。その結果、製造拠点における IT 問題に迅速に対応し、システムのアップタイムを最大化できています」
サイバーリスクの軽減をビジネスの核心に
これまで Lion 社では、Jira を使用してサイバー関連のインシデントを管理していました。ところが、このソリューションはリスク管理向けに設計されていないため、非効率的でした。オーストラリア、そして世界中でサイバー攻撃が増加している中、Lion 社はサイバーセキュリティのリスクとインシデントを追跡して管理するために、ServiceNow 統合リスク管理 (IRM) を導入しました。
IRM 内のリスク管理を使用することで、Lion 社では可視化が改善され、自動化されたリスクスコアに基づいてアクティビティの優先順位付けを行い、解決のために適切な IT チームにタスクをアサインすることができるようになりました。また、可視化が改善されたことで、IT チームとサイバーセキュリティチームが各インシデントでより効果的にコラボレーションできるようになり、製造拠点での予期しない機能停止を最小限に抑えることもできています。
「ServiceNow と Jira を組み合わせて使用してサイバーリスクの評価と監視を行うことで、過去 3 年間でアクティブなリスクの数を 200 から 80 に 60% 削減できました」と、Lion 社のサイバーセキュリティガバナンススペシャリストである Nik Anand 氏は説明しています。「時間を節約できたことで、セキュリティ標準の策定や、より広範なセキュリティ戦略への貢献に集中できるようになりました」
ユーザーエクスペリエンスの継続的な改善
IT、OT、リスク管理全体に ServiceNow を導入して成功を収めた Mark 氏と彼のチームは、ServiceNow パートナーの EY と協力して、サービスカタログやソフトウェアライセンス要求の基盤となるワークフローの改善など、プラットフォームの使いやすさをさらに向上させています。
Martin 氏と Lois 氏は、人材と文化部門において、SLA、ナレッジ記事、サービスカタログ、従業員ジャーニーをさらに充実させるためのアクティビティなどの、継続的な改善を推進したいと考えています。目標は、セルフサービスポータルを通じて、よりパーソナライズされたユーザーエクスペリエンスを提供することです。また、将来的なロードマップでは、チャットボットとバックエンドエージェントによる対応に、Now Assist の生成 AI 機能を活用することも検討したいと考えています。
「ServiceNow をビジネス変革のためのシングルプラットフォームとして使用することで、すべてがさまざまなプロセスでシームレスに機能します」と Martin 氏は結論付けています。「また、従業員が必要なサポートを受けるのも容易になります」