「守りのIT」から「攻めのIT」へ - グローバルのシステム変革に挑む 日産自動車
可視化 ServiceNowのCMDBによって、グローバル全体のシステム・アプリを全面的に可視化 ガバナンス強化 グローバル全体のシステム・アプリ開発や運用に対するガバナンスが強化された 1週間 従来は3カ月ほどかかっていたグローバルエンタープライズアーキテクチャーに関する各種報告を約1週間に短縮
グローバルで利用されているシステムやアプリを、よりビジネスに貢献するものに押し上げるためにも、ServiceNowのソリューションを活用して、グループ全体のシステム・アプリの最適化に取り組んでいきたい。 蓬澤 健一 氏 日産自動車株式会社 デジタルトランスフォーメーション推進本部 グローバルエンタープライズアーキテクチャー部 部長 (2025年3月時点)

2000年代初頭からEnterprise Architecture(エンタープライズアーキテクチャー)活動を推進している日産自動車。その大前提となるのは、グローバル全体におけるシステムの導入状況や稼働状況、それぞれのシステムがビジネスにどう貢献しているのかといった関連性の可視化です。これを実現するため、同社はServiceNowのEnterprise Architectureを基盤とするエンタープライズアーキテクチャーの管理システムを構築しました。ServiceNowのプラットフォームに組み込まれているCMDB(構成管理データベース)を利用すれば、各部門・拠点のシステムやアプリの管理も効率化できると判断したのが採用の理由です。その導入効果について、日産自動車の3人のキーパーソンに聞きました。

※文中に掲載している部門・部署名は2025年3月時点のものです。

「守りのIT」から「攻めのIT」への転換

「守りのIT」から「攻めのIT」へ――。これが、日産自動車が長年取り組んでいる「エンタープライズアーキテクチャー活動」の重要テーマです。

世界中でビジネスを展開する日産自動車。各国・地域ごとに事業部門や生産拠点を置いていますが、過去の歴史においては、各部門や生産拠点がそれぞれの要件を元にシステムを構築し、グループ全体として統一感のない状態に陥っていました。その大きな原因の一つは、システム開発部門が「守り」の対応に終始していたことにありました。

「こうした状況を打開するためには、システム開発部門側がグループ全体の設計図(アーキテクチャー)を描き、それに当てはめる形で事業部門や生産拠点ごとのシステムのあり方を提案する形に変えていくべきだと考えました」と説明するのは、日産自動車 デジタルトランスフォーメーション推進本部 グローバルエンタープライズアーキテクチャー部 部長の蓬澤健一氏です。

システム開発部門側がグループ全体の設計図を描き、それに当てはめる形で事業部門や生産拠点ごとのシステムのあり方を提案する形に変えていくべきだと考えました。これが、我々が目指す『守りのIT』から『攻めのIT』への転換です。 蓬澤 健一 氏 日産自動車株式会社 デジタルトランスフォーメーション推進本部 グローバルエンタープライズアーキテクチャー部 部長 (2025年3月時点)

最新のシステム状況にアップデートするまでに3カ月を要していた

日産自動車のエンタープライズアーキテクチャーの構築を担当するグローバルエンタープライズアーキテクチャー部は、当初、各部門や拠点が開発・利用しているシステムやアプリの状況をスプレッドシートのやり取りによって把握していました。

「しかし、全世界の部門や拠点からメールに添付して送られてくるスプレッドシートのデータは、整理するだけでも大変で、内容が変更されるたびに整理したデータを1件ずつ修正するのもひと苦労でした」と語るのは、同部 アシスタントマネージャーのタナセガラン・スバナ氏です。

すべての部門や拠点からデータを集め、最新の状況にアップデートするまでには3カ月ほどの時間がかかっていました。

「最新のシステム利用状況を報告してほしいと上層部から言われてもすぐに対応できず、スプレッドシートの内容を手作業でまとめた報告では、情報の精度が粗いことにも課題を感じていました」と語るのは、グローバルエンタープライズアーキテクチャー部 主管で、チーフISアーキテクトの氏家尚之氏です。

そこで同部は2019年、プライベートクラウドを基盤として、各部門、拠点が利用するシステムやアプリの情報が収集できるシステムをスクラッチ開発しました。

スクラッチ開発のシステムをわずか2年でServiceNowに置き換え

ただ、このスクラッチ開発システムでは、レポーティングや外部システムとの連携が、とても複雑でした。また、ビジネス部門で動いているアプリの一覧を作成するのもカスタマイズが必要で、開発工数がかかっていたと言います。

この課題を解決するため、グローバルエンタープライズアーキテクチャー部はスクラッチ開発のシステムをリリースしてからわずか2年後の2021年、新しいシステムへと入れ替えました。ServiceNowのEnterprise Architectureを基盤とするシステムです。

CMDBならシステムやアプリの管理も効率化できると判断

スクラッチ開発したシステムをたった2年で新しいシステムに置き換えたのは、ServiceNowのプラットフォームに組み込まれているCMDBが、各部門・拠点のシステムやアプリの管理を行う上で有効だと判断したからです。

「CMDBがあれば、どの部門や拠点が、どのようなシステムを導入し、運用しているのか。それらのシステムがどのビジネスとひもづいているのかといった基本的な情報が自動的に収集されます。構成内容が更新されれば、その情報もリアルタイムにアップデートされるので、いちいち報告を受けて修正する手間が省け、常に最新の状況が正確に把握できるようになるのです。業務効率が格段に効率化し、データ精度も向上することが分かったので、システムを置き換えることにしました」と氏家氏。

そもそも日産自動車は、別の用途でServiceNowを導入しており、そのプラットフォームに組み込まれているCMDBを利用すれば、各部門・拠点のシステムやアプリの管理も効率化できると判断したのが、置き換えのきっかけでした。「せっかく導入済みの機能を、もっと生かさない手はないと考えました」と蓬澤氏は振り返ります。また、スバナ氏は「スクラッチ開発したシステムは、各部門・拠点のシステムがどのビジネスにひもづいているのかという関係性まで見ることはできなかったので、それを可能にするServiceNowを基盤としたシステムのほうが好ましいと考えました」と語ります。

部門や拠点のシステム・アプリを全面的に網羅

Enterprise Architectureを基盤とするシステムの稼働によって、各部門・拠点が開発・利用するシステムやアプリの可視化は一気に進みました。

大きな導入効果として、まずスバナ氏が挙げるのは「カバーできる範囲の広さ」です。

「スクラッチ開発した以前のシステムでは、可視化できるシステム・アプリの範囲が非常に限定的でしたが、このシステムはServiceNowのCMDBをベースにしているので、日産自動車がグローバルに展開する部門や拠点のシステム・アプリを、全面的に網羅できます。グローバル全体でシステム・アプリ開発や運用に対するガバナンスが利かせられるようになったのは大きな効果でもあります」(スバナ氏)

また、ServiceNowのプラットフォームは、API連携によって様々な外部システムのデータを取り込み、統合できる点も大きなメリットです。そのため、それを基盤とするこのシステムにも、各部門や拠点が利用するシステムやアプリに関する情報がひもづけられるようになりました。「スクラッチ開発したアプリでは、システム・アプリの基本的な情報やオーナー情報ぐらいしか収集できませんでしたが、今では各システム・アプリの開発のベースとなっている技術や、OSのサポート終了時期、開発・運用コスト、セキュリティの状況といった幅広い情報がひもづけられ、自動的にアップデートされる仕組みが整っています。各システム・アプリに関する広範囲な情報が1つの画面でリアルタイムに把握できるようになったのは、大きな進歩です」と氏家氏は評価します。

IT運用管理システムや生成AIとの連携も検討

日産自動車は、グローバルエンタープライズアーキテクチャーの可視化を通じて、老朽化したレガシーシステムを最新のシステムに置き換える「モダナイゼーション」の推進も目指しています。「稼働年数が相当たっているシステムや、OSのサポート終了期限が迫っているシステムを優先的に更新するなど、モダナイゼーションの計画作りに対してもこのシステムに集まってくる情報が活用できます。これによって、能動的にシステム刷新の提案を行っていけます」(蓬澤氏)。

また、各部門・拠点が利用するシステム・アプリのセキュリティ情報が把握できるようになったことで、万が一のインシデントの際にも迅速に対応できる環境が整ったことも大きな成果です。定量的な効果としては、「従来3カ月程度かかっていたグローバルエンタープライズアーキテクチャーに関する各種報告が、このシステムの導入によって1週間程度まで短縮されたのが大きな成果です」と氏家氏は語ります。

さらに、ServiceNowの生成AI機能である「Now Assist」を利用して、OSのサポート終了期限が迫っているシステム・アプリの早期特定や、アーキテクチャーやアプリ名の提案、障害の予兆検知などに役立てることも検討中です。

最後に蓬澤氏は、「引き続きServiceNowのソリューションを活用しながら、グループ全体のシステム・アプリの最適化に取り組んでいきたい」と抱負を語りました。

この事例を共有 導入製品 Enterprise Architecture お客様の詳細 お客様名 日産自動車株式会社 所在地 日本 神奈川 業種 自動車 従業員数 24,034名(2025年4月1日現在、単体)
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