「従業員のエンゲージメント」とは、従業員の仕事に対する熱意のことであり、パフォーマンスを改善するには、これを理解することが不可欠です。
単純な式で説明するなら、従業員 + 職場で過ごす時間 = アウトプットとなるべきですが、 実際はそれほど単純ではありません。 多くの従業員は、勤務時間中に意欲と生産性を持続することに苦労しています。 2022 年の Gallup 社の調査によれば、常勤従業員と非常勤従業員のうち積極的で意欲が高い従業員はたった 32% であり、2020 年と 2021 年から下降傾向にあります。17% は意欲を持とうとしません。 これは世界中のあらゆる業界で重要な問題となっています。
幸い、組織では、このような従業員の意欲低下の増加傾向に対処する機会があります。 規模やタイプを問わず、あらゆる組織では、従業員のエンゲージメントの測定基準を追跡して、率直な従業員フィードバックを奨励し、適切な従業員エンゲージメントツールと戦略を適用すれば、従業員が確実に組織の目標達成に貢献できるように適切な措置を取ることができます。
従業員のエンゲージメントについて議論する際に、グループによって使われる用語が異なることがよくあります。 たとえば、Gallup 社は従業員をそのエンゲージメントレベルに応じて 3 つのグループに
分類しています。
- 意欲があり積極的な従業員
熱意があり忠実な従業員。組織の発展のために期待される以上の
貢献をします。 - 意欲がない従業員
仕事での期待に応えるが、求められているまたは期待されている以上のことは
ほとんどしない従業員。組織に対して精神的な思い入れはなく、
他の就職の機会を積極的に探っていることがあります。 - 意欲を持とうとしない従業員
会社に対し否定的である、または憤慨しており、生産性と作業の品質の面で
必要最小限のことしかせず、業績が振るわない従業員。
意欲があり積極的な従業員は、生産性向上のみならず、問題解決における積極的な対応と創意工夫によって組織にとって大きなメリットをもたらします。 その熱意は周囲を感化しやすく、他のチームメンバーのやる気を引き出し、他の部門へも広がります。 意欲があり積極的な従業員は、優れたコラボレーションを実現し、知識を共有し、社内同様に会社のパートナーや顧客とも良好な関係を築くブランド推進者です。
組織にとって、可能な限り従業員のエンゲージメントを引き出すことは、常に最善の利益となります。 ただし、組織はエンゲージメント戦略の策定に着手する前に、エンゲージメントとは何か、またエンゲージメントにはならないものを理解しておくことが重要です。
従業員のエンゲージメントは、従業員の幸福と同じではありません。 一般に、意欲がある従業員はその職務に非常に満足していますが、従業員を「幸福」にすることだけを目標にしても、真のエンゲージメントは促進されません。 見方を変えて言えば、休憩室のお菓子や施設内のアクティビティなど、仕事に伴う楽しい特典は、従業員の幸福につながる可能性がありますが、必ずしも意欲をもって仕事に取り組むことにつながるとは限りません。
同時に、従業員の満足度はエンゲージメントの期待値には到底及びません。 給与を稼ぐために最低限のことしかしない従業員は、現在の仕事に完全に満足しているかもしれませんが、 満足しているだけでは忠誠心を持つには至りません。そのような従業員は、わずかばかりの昇給のためだけに他で就職を取り付け、喜んで退職する可能性があります。
従業員のエンゲージメントでは、従業員の態度そのものだけでなく、従業員の態度が仕事に及ぼす影響も考慮します。 意欲があり積極的な従業員は、会社に精神的な思い入れがあります。 組織の成功を自分自身の責任としてとらえるため、彼らは組織を自身の人となりにおいて重要な位置を占めるものと捉え、困難な状況を乗り越え、努力を重ねる高い意欲を持つ傾向にあります。
当然のことですが、意欲があり積極的な従業員は、さまざまなメリットをもたらす可能性があります。 このようなメリットは、ビジネスパフォーマンス、顧客満足度、従業員エクスペリエンスという組織の 3 つの主要な改善領域にわたります。 このため、成功する組織は、従業員のエンゲージメントを戦略的な最優先事項として扱います。
従業員のエンゲージメントの改善によるメリットを以下に示します。
意欲があり積極的な従業員は、仕事に行きたくないということがないため、欠勤の言い訳を探すことはそれほどありません。 会社の成功に個人的に関与し、進行中の仕事を通じてその成功が促進されることに喜びを感じます。 これは、意欲がある従業員は休まないというわけでなく、責任から逃れたいがために欠勤をしないということです。
新入社員のトレーニングには時間とコストがかかります。職場の全従業員ひとりひとりに大きな投資が行われています。 意欲がある従業員は、社外で新たなチャンスを求めることよりも、会社を改善することに関心があります。 これらの従業員は忠実であり、気まぐれで退職する可能性がかなり低いです。
従業員の幸福度と満足度は従業員のエンゲージメントと同じものではありませんが、エンゲージメントによってもたらされるものです。 意欲がある従業員は、仕事から満足を得て、自分の強みが認識されていることと、自分の仕事に価値があることを理解しています。 上司はこのような従業員が仕事に取り組むようにするために、威嚇などのマイナスの強化手段を取る必要がありません。
よく見過ごされがちなメリットとして、従業員のエンゲージメントとともに従業員の安全性も向上することがあります。 Gallup 社の報告によれば、意欲が高い従業員の安全に関する事故は 70% 低いことが判明しています。 同時に、意欲がある従業員は健康であり、肥満や慢性疾患にかかる可能性が低くなります。
簡単に言えば、意欲がある従業員はより多くの仕事をこなします。 自分の仕事に誇りを持ち、自分の仕事が組織全体にどのように影響するかに関心があるので、仕事の質は高くなります。
生産性向上の結果として、従業員のエンゲージメントに伴う収益の増加は、新たな人材の発掘と、意欲がある従業員が他のチームメンバーやその仕事にもたらすポジティブな影響によるコストの低下にも起因しています。 Gallup 社の報告によれば、意欲が高いチームは意欲がないチームに比べ収益性が 23% 高いことが判明しています。
最後に、意欲がある従業員は同僚を感化するだけでなく、会社の経営に関わる人々にも良い影響を与えます。 より充実したサービスを顧客に提供し、会社自体の良い印象を与えます。 顧客から好感を持たれやすくなり、顧客の間で会社のブランドの評判が良くなります。
従業員のエンゲージメントのスコアは、さまざまな方法で評価できます。 その一部をご紹介します。
従業員ネットプロモータースコア (NPS) は、従業員がその雇用主と作業環境を正直に評価できるようにすることを目的とした率直な質問で構成されます。 各回答では 0 ~ 10 の尺度を使用します。
Utrecht Work Engagement Scale (UWES) と Gallup Scale はどちらも、高いフィードバックスコアを従業員の成果の向上と結び付ける実証済みの手法です。
Temkin Employee Engagement Index (TEEI) は、会社の使命の理解、従業員フィードバックが尊重されていることの実感、正しいトレーニングとツールの導入という 3 つの点に関連する重要な記述に対し従業員がどの程度同意するかを評価して、従業員フィードバックプロセスの簡素化を図るものです。
雇用主は、独自の匿名従業員サーベイを作成して、ビジネスに関連するより専門的な従業員エンゲージメントの領域でフィードバックを得ることもできます。 傾向や進展状況を確認するために、このようなサーベイを定期的に繰り返し実施する必要があります。
サーベイや尺度からは、従業員の熱意と貢献に関する貴重で率直なインサイトを得ることができますが、最良の結果を得るには、スコアに留まっていてはなりません。 包括的な従業員のエンゲージメント戦略には、以下の分野を含める必要があります。
- 戦略を社内全体に周知する手段。
- アクションを取る領域を特定するために使用するプロセス。
- 企業が進捗状況を評価するときに重視する測定基準。
- 従業員フィードバックの結果に対処し対応するために取るアクション。
- エンゲージメント戦略を持続させる方法。
従業員のエンゲージメント測定基準は、その名前のとおり、従業員のエンゲージメントを信頼できる方法で評価、追跡するための定量化可能な測定手法です。 これらの測定基準は、エンゲージメント戦略の一部として使用するサーベイ、尺度、またはスコア採点制度における重要な要素です。
- ワークライフバランス
- 従業員の幸福
- プロフェッショナルの育成
- 従業員の表彰
- 従業員の自主性
- 職場の文化
- 報酬
- 福利厚生
- 従業員と企業目標の整合
上述の各測定基準は匿名サーベイを通じて収集できますが、状況を完全にはつかめない場合があります。 従業員のエンゲージメントの全体像を把握するには、十分に対処できていない問題 (欠勤や離職など) を考慮する必要があります。 意欲がある従業員は顧客との関係強化を円滑に促進するため、顧客満足度を追跡すると、従業員のエンゲージメントの問題も明らかにできます。
組織はそれぞれに異なるため、このような違いを考慮した方法で従業員のエンゲージメントに取り組む必要があります。ただし、ほとんどの業界で共通する特定のベストプラクティスがあります。 これらは、従業員のエンゲージメントを高め、維持する上で重要な役割を果たします。
組織の上層部は、従業員のエンゲージメントの追跡と解析に慎重に取り組む必要があります。 このためには以下の作業を行います。
- 従業員のエンゲージメントを改善するための説得力あるビジネスケースを作成する
これにより、測定基準、目標、測定可能なビジネス成果を明確に特定して、社内の主要な意思決定者などの関係者にエンゲージメント戦略の必要性と価値を説くことができます。 - サーベイフィードバックの完全な匿名性を維持する
一部の従業員は報復的な行為を恐れて、サーベイの質問に正直に回答することやビジネスプラクティスに点数を付けることに躊躇する可能性があります。 戦略には匿名でのフィードバックを盛り込むようにし、従業員が特定されることを恐れずに、完全に率直に回答できるようにします。 - 常に定量化可能なデータに基づいて決定を下す
従業員のエンゲージメント測定基準の価値は、従業員の意欲の高さまたは低さに関する実際の明確なデータを提供することにあります。 新しい戦略の概念を策定するときや、エンゲージメントイニシアチブの効果を評価するときには、このデータを最優先してください。 - エンゲージメントの文化を醸成する
経営幹部から最近組織に入ったばかりのインターンまで、エンゲージメントは組織全体が担う責任です。 従業員エンゲージメントの価値を常に周知し、エンゲージメント戦略の導入、監視、改善を優先して、良好なエンゲージメント結果を称賛する文化を築きます。
人事部門は、従業員のエンゲージメントを強化する上で重要な存在です。 エンゲージメント強化を促進するための以下の HR ベストプラクティスを検討してください。
- 自主性と連携を促進する
従業員が、割り当てられたタスクに留まらずに取り組むことができる自由度を与えます。 連携を促進し、個人レベルの生産性測定基準ではなく、より広範なビジネスゴールを重視することを奨励します。 - 雇用プロセスでエンゲージメントを重視する
新しい人材を採用する際に、自分自身に挑戦し、スキルセットを磨くことに関心がある人材を探します。 このような候補者は、意欲を維持して他者の意欲を高める可能性が高くなります。 - 規定されている責任を超えたトレーニングと開発の機会を提供する
従業員個人の責任を超えた、より包括的な組織目標の全体像を示します。 従業員が各自のスキルをさらに伸ばし、他の部門やプロセスを理解できるリソースとトレーニングの機会を作成します。 - 戦略的な報酬設定
高いパフォーマンスを発揮した人材を評価し、最低限の要件を超えた仕事をした従業員に対してボーナスなどの報酬を支給することで、従業員のエンゲージメントを奨励します。 これにより、意欲がある従業員の働きに報いるだけでなく、その仕事が周知され、他の従業員に対してエンゲージメントの重要性が明示されます。
従業員のエンゲージネントは、単なる HR とチームリーダーだけの関心事に留まりません。ビジネスの成功における重要な要素であり、社内のすべての従業員の責任です。 社内全体での従業員のエンゲージメントにおける重要性を認識するだけでは十分ではありません。 従業員のエンゲージメントに適切に取り組み、関連するエンゲージメントのデータを取得して評価するには、そのためのテクノロジーとツールが必要です。 そのソリューションを ServiceNow が提供します。
ServiceNow Now Platform® は、ハイブリッドワークが普及している中で、エンゲージメントを強化するための一元化されたプラットフォームです。 自動化された従業員ワークフローにより、従業員は退屈な作業から解放され、成果を発揮できる作業に集中できます。 複数部門にわたる従業員ポータルでは、パーソナライズされたコミュニケーションとサポートが提供され、連携と情報共有が容易になります。 セルフサービスソリューションでは、従業員がデジタルチャネルで各自の問題を解決できるツールが提供されます。 また、HR サービスデリバリ (HRSD) を活用することでエンゲージメントがさらに強化されます。
会社の目標の達成へ向けて連携するために、従業員が最良のエクスペリエンスを得られるようにします。 ServiceNow の従業員エンゲーメントソリューションでは、仕事に意欲的に取り組むために必要なツールとサポートがお客様の従業員に提供されます。 今すぐ ServiceNow のデモをご覧になり、これまでにない従業員のエンゲージメントを体験してください。