スクラムボードとは、スクラムチームがより広範なスクラムフレームワーク内で進捗状況とバックログ項目を視覚化できるようにするプロジェクトマネジメントツールです。スクラムボードでは、プロジェクトがスプリント (タイムボックスが設定されたセグメント) で編成されています。
アジャイル手法は開発者によるソフトウェア開発を大きく変えました。企業は、部門横断型チームにおける継続的な学習、コラボレーション、計画、改善を通じて、反復型プロセスを適用してアプリケーションを迅速に提供し、変化に対してより柔軟に対応できます。この手法では、ソフトウェア開発プロセス全体を通して重要なメリットを得ることができます。エンドユーザーがメリットを得るためにプロジェクトの完了まで待つ必要はありません。一連のアジャイルプロジェクト管理ツールの中で、「スクラム」は最も広く利用されているツールの 1 つです。
スクラムとは、アジャイル手法の仕組みを確立するアジャイルフレームワークであり、複数レベルの説明責任、完了する必要がある作業全体を詳述するバックログ、そしてチームが協力して製品インクリメントを完成してリリースするスプリントに基づいています。スクラムとアジャイル手法によって、開発プロセスを効率化してオーバーヘッドを削減し、デリバリにかかる時間を短縮してプロジェクトの適応性を向上できます。ただし、急速なスピードでの作業とコラボレーションが、チームメンバー間で混乱を生じさせることがあります。「スクラムボード」を使うことで、全員が共通の認識を持つことができます。
スクラムボードは「スプリントボード」「スクラムタスクボード」とも呼ばれ、アジャイルスプリント内のさまざまなタスクの進捗状況とオーナーシップを示すデジタルボードまたは物理的なボードです。通常、ボードは 4 つの列に区切られ、各列にスプリントのさまざまな側面と完了に向けた進捗状況が示されます。
スクラムボードの一般的な構造は次のとおりです。
「ユーザーストーリー」は、実装する必要がある機能のことです。スクラムボードに含まれるすべてのストーリーには「ストーリーポイント」が割り当てられます。ストーリーポイントは、機能の実装の難易度と、ターゲットユーザーに関するその他の関連情報を詳述します。ユーザーストーリーは、スプリント内で完了する必要があるタスクを定義するのに役立ちます。
必要なタスクを特定して定義したら、まだ開始されていない重要な割り当てタスクを「未着手」列に入れきます。各タスクには期日を含め、作業を担当する特定のチームメンバー (またはオーナー) を割り当てます。
特定の予定アイテムの作業が開始されたら、そのアイテムは「進行中」列に移ります。この列は、現在実行中であるがまだ完了していない作業を表します。
完了したタスクは「完了」列に移ります。スプリントの進行に伴い、チームメンバーは「完了」列で増えていくアイテムを見ることで、進捗状況を簡単に確認できます。
アジャイル手法の目的が開発プロセス内部の適応性を向上することであるように、スクラムボードも既存のプロセスに合わせて柔軟性を向上できます。機能性を高めるために、列を追加したり、下位の列に分割したりできます。たとえば、「完了」列の前に、またはこの列の一部として「レビュー」列を追加したり、現時点ではこれ以上進めることができないタスクのための「保留中」列を追加したりすることもあります。
スクラムボードは本質的には「マップ」です。スクラムチームのリーダーと各メンバーに、最終目標とそこに至るまでの過程における現在位置を視覚的に示します。これにより、アジャイル開発において以下のような重要なメリットがもたらされます。
アジャイルのスプリントは、チームが適切に協力して取り組む場合にのみ有効です。スクラムボードでは、プロジェクトの現状、誰にどのような作業が割り当てられているか、支援が必要な部分を関係者全員が確認できます。これにより、プロジェクト内のコミュニケーションが向上し、業務への取り組みを合理化し最適化できます。
デジタルスクラムボードツールは、使いやすさを考慮して設計されており、一般に直感的なドラッグアンドドロップインターフェイスを備えています。ユーザーはボタン操作 1 つでタスクを列の間で移動できます。ビルトインのチュートリアルとガイドを利用して経験の浅いユーザーでもすぐに習得できます。また、物理的なスクラムボードも同様に簡単に導入できます。付箋やホワイトボードがよく用いられ、オフィスの共用エリアに配置されます。
スクラムボードの重要な点は、その「包括性」です。すべての機能と、完了に向けて進めるために必要なすべてのタスクが考慮されます。また、タスクの進捗が予期されているよりも遅い場合には、スクラムボードでボトルネックの位置が明確に示されるので、プロジェクトに悪影響を及ぼす前にこのようなボトルネックに対処して緩和できます。
前述したようにスクラムボードには「物理的」なボードと「デジタル」ボードがあります。物理的なボードではタスクの貼り付けと更新が手作業で行われ、デジタルボードはクラウドやローカルサーバーで維持されます。
初期のスクラムボードは物理的なボードであり、共用ワークスペースに設置されていましたが、最新のスクラムボードは「仮想」上です。
これは、オフィスや同じビルの中のフロアの間でのコラボレーションでも、世界規模でのコラボレーションでも、リモートチームを調整するにはデジタルスクラムボードが効果的であるためです。デジタルスクラムボードは、自動ワークフローとデジタルレポートを活用することでさらに強化でき、これによって事前に詳細な計画を立てることができます。デジタルスクラムボードはリアルタイムで更新されるので、すべてのユーザーがどこからでも同じ情報にアクセスできます。
スクラムボードが適切に機能するために必要な要素があります。以下にその例を示しています。
スクラムボードは特定の 1 つの「スプリント」の詳細を示します。スプリントは、チームが事前に定義されている目標 (開発プロジェクトの特定要素の完了など) を達成するまでのタイムフレームです。スプリントの期間の長さに制限はありませんが、スプリントは定義されている作業量に制限する必要があります。スプリントは、可能な限りの作業を行うための期間ではありません。事前に特定されている特定のタスクを完了するための期間です。スプリントは通常、次の 4 種類のイベントで構成されています。
- 計画フェーズでは、スクラムチームがスプリントに向けて準備するときにスプリントの目標を定義し、その他の問題や懸念を解決します。
- 毎日行う 15 分間の計画セッション (「デイリースクラム」とも呼ばれます) では、開発チームが前日の作業のレビューを行い、その日に行う必要がある作業を計画します。またデイリースクラムでは、スクラムボードに反映する必要がある変更が確認され、目標に向けたスプリントの総合的な進捗状況が文書化されます。
- スプリントの終わりにレビューが行われ、強みと弱みが洗い出され、現行プロジェクトのあらゆる側面 (予算、タイムライン、生産性など) が分析されます。
- レトロスペクティブ (振り返り) は、前のスプリントで学んだ内容を適用してプロジェクトを進める上での有効性を高めるために、レビューとは別に行われる、次のスプリントの計画セッションに向けた準備です。
スクラムアーティファクトとは、スクラムボードを構成し、サポートする重要な要素です。これには以下のものが含まれます。
- スプリントバックログ。現行スプリントに含まれる特定のタスクを示します。これらのタスクは優先度順にまとめられている必要があります。これにより、最も重要なタスクをできるだけ早い段階で完了できます。
- プロダクトバックログ。プロジェクト全体の目標を達成し、プロジェクトを完了に向けて進めるために必要な内容を詳しく示します。このアクションリストには、現行スプリントに含まれるタスクだけでなく、製品全体のすべてのタスクが含まれます。
- インクリメント。スプリントで完了したバックログタスクを詳しく示します。
スクラムボードの最も重要な要素は恐らく、ボードを運用するチームです。チーム内の役割には次のものがあります。
- プロダクトオーナー。スプリントを監視し、ジョブが適切にアサインされ、タスクが明確に定義されており、目標が妥当であり、スプリントが予定通り進んでいることを確認する役割を担います。
- スクラムマスター。プロダクトオーナーと開発チームと協力して、プロセスがアジャイルスクラムの原則に従っているようにします。スクラムマスターは、計画セッションやレビューセッションなどのスクラムイベントを実施し、バックログアイテムの整理と優先順位付けを支援する役割を担います。
- 開発チーム。バックログアイテムを完了する責任を担っています。スクラム開発チームは通常、製品インクリメントを生成するために必要なすべてのスキルを持つ 3 ~ 9 人のメンバーで構成されます。
スクラムボードの他に、アジャイルプロセスを視覚的に表現するフレームワークとしてカンバンボードがあります。カンバンボードはスクラムボードに似ていますが (タスクが入った列を使用する)、従うプロセスが異なり、また開発チーム以外の関係者も使用するように設計されています。
スクラムボードとは異なり、カンバンボードは特定のチームが所有するものではなく、また 1 つのスプリントのみに適用されるものではありません。カンバンではより広範なビューで、社内全体のワークフローでのすべてのチームの進捗状況を追跡します。カンバンでは、「進行中」列に追加できるアイテムの数が制限されており、ユーザーストーリーやバックログは使用されません。カンバンボードは、非技術系のユーザー向けに簡素化されています。データ可視化手法が含まれることはほとんどなく、ボード全体でプロジェクト進捗を把握するための表面レベルのソリューションです。
アジャイル手法を取り入れた企業にとって、展開のスピードが猛烈であることと、順応性に対する持続するニーズが相まって、プロジェクトの進捗状況を可視化して追跡することが非常に困難になる可能性があります。この状況を解決できる可能性があるのが、スクラムフレームワークのスクラムボードです。現在多くのスクラムツールが公開されていますが、企業が自社のニーズに対応する適格なツールを選ぶにはどうすればよいのでしょうか?その答えは ServiceNow Agile Development にあります。
業界を決定づける Now Platform® Agile Development は、スクラムの計画、文書化、レポート、プロジェクト管理をまとめて一元化した製品です。複数のプロジェクトにわたって複数のチームを調整します。プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで可視化できます。さまざまなツールと連携することで、生産性と精度が確保されます。高度な自動化を適用し、ワークフローを迅速に進めることができます。このような機能によって、包括的でわかりやすいボードを維持し、少ない労力でより多くの業務を行えるように促進します。
ServiceNow によって、アジャイル計画、スクラムボード、アジリティのメリットがアジャイル開発チームにどのようにもたらされるかをご覧ください。今すぐ ServiceNow のデモをご覧ください。