2018 年、Hamburg Port Authority (HPA) の CIO である Lars Wentorp 氏は、今だ多くの組織のリーダーたちが議論を続けている課題に決着を付け、すべてを 1 つのプラットフォームに統合するという決定を下しました。これは IT 部門だけの話ではありません。ドイツ全土で 60 万以上の仕事を支えている同組織のすべての部門、すべてのワークフロー、そしてすべての従業員を対象としたものです。
Wentorp 氏は次のように語りました。「私たちの目標は、すべてのワークフローをデジタル化することです。社内でも外部のサプライチェーン関係者とのやり取りにおいても、紙を使用しないようにしたいと考えています。これを実現するには、共通のデータと依存関係のマップを備えた 1 つのプラットフォーム上で、すべての部門を統合する必要があります。」
それから 8 年後、この賭けは実を結びました。現在、HPA の 2,000 人の従業員の 90% が毎月プラットフォームを使用しています。これによって完了されたアクションは、2025 年だけで 200 万件以上に上り、これは 1 人あたり平均 1,000 件に相当します。サービス要求数は、2020 年の年間 5 万件から、現在では 10 万件へと倍増しました。ユーザーエンゲージメントは前月比で 88% 向上しました。ナレッジ記事の使用率は前年比で 89% 増加しました。
さらに重要な点は、AI の導入時に、HPA ではすでに準備が整っていたということです。
ライブラリをローンチパッドへと変換
2018 年に IT Service Management から開始したこのプラットフォームでは、戦略的ポートフォリオ管理 (SPM)、App Engine、IT Asset Management も加わって、ヨーロッパで 3 番目に忙しいコンテナ港全体の人事、健康管理、コンプライアンス、リスク管理、施設管理、カスタマーサービスの業務を扱っています。ServiceNow AI Platform は、停止が許されない組織全体で運用されており、2026 年 3 月には、HPA のイントラネットとして SharePoint に完全に取って代わり、HPA が社内外で提供するすべてのサービスの唯一の玄関口となりました。
「10 個のプラットフォームではなく、シングルプラットフォームであることこそ重要です」と Wentorp 氏は言います。「一度使えばまた使いたくなります。そして、ずっと使い続けることになるでしょう。」
これを可能にするアーキテクチャが、IT アーキテクトの Torben Setter 氏が「アクション主導型イントラネット」と呼ぶものです。Wentorp 氏が説明するように、従来のイントラネットは受動的なものでした。「情報のライブラリにたどり着くと、サービスはそこで終わってしまうのです」。現在、従業員は人事部門の情報をただ読むだけで終わらず、ボタンをクリックしてワークフローを開始することができます。従業員の試用期間の終了が近づいているマネージャーは、終了時にすべきことを覚えておく必要はありません。プラットフォームがタスクを自動的に通知してくれます。リスク管理は、かつては中央チームが管理する複数のスプレッドシートで行われていましたが、現在では、すべての事業部門に組み込まれた専用のリスクコーディネーターを通じて実行され、それぞれの部門の作業は同じシステム内で行われています。
すべてを変えた転換点
90% の導入には、プラットフォームを単に IT ワークフローのためだけでなく、日々の業務において真に役立つものにするという、具体的なメリットを示すことが求められました。
新型コロナウイルスのパンデミックの間、HPA の保健部門は検査予約の受付をオンライン化しました。IT システムに対して消極的だった従業員たちも、他のどの選択肢よりもこのプラットフォームが好ましいということに気づきました。「それがまさに、従業員にとっての転換点となりました」と Wentorp 氏は言います。「従業員はそれが必要なものであると理解し、操作が簡単であったため、それ以来、ずっと利用し続けています。」
その後、HPA が給与明細の閲覧機能をポータルに移行すると、毎月給与が支払われるたびに、全従業員の 40% が数日以内にポータルにアクセスするようになりました。従業員は、まず給与明細を見るためにアクセスし、そのまま他のサービスも利用するようになったのです。プラットフォームの利用率は毎月目に見えて急増し、実用的な機能を中心に利用が習慣化していきました。
AI 導入時に基盤はすでに整っていた
2025 年 5 月、HPA は IT Service Management 向け Now Assist を導入しました。これによって組織が手にしたのは、単に優れた検索エンジンではなく、8 年間蓄積された運用上のコンテキストを活用して回答を提供し、アクションを推奨し、IT 部門の生産性を向上させることができる AI でした。
HPA のサポートチームによって解決されたインシデントの多くは、自動的にナレッジ記事となり、次に同じ問題に直面したユーザーがそれらを活用できるようになりました。このシステムは数千件におよぶインシデントのパターンを分析し、ドキュメントでカバーできていない分野を特定できます。ナレッジコーチは、品質基準に照らして継続的に記事のレビューを行います。AI は、受信した要求を分類し、類似の過去のケースを特定して、ソリューション戦略を提示します。これにより、サポートスタッフの認知的負荷を軽減し、人間が介入する前の段階での解決を加速することができます。
「Now Assist はすでに膨大な処理量をこなしています」と Setter 氏は述べています。「導入からわずか 1 年しか経過していない現時点での数字は、あくまでその一部を示しているに過ぎません」。
このプラットフォームのインフラストラクチャフレームワークも最近強化されました。ServiceNow のリアルタイム分析データベースである RaptorDB への移行により、使用頻度の高いデータビューの読み込み時間が約 60 秒から 2 秒に短縮されました。HPA は現在、ライブ運用データの AI 規模での分析を可能にするインフラストラクチャを備えています。これにより、抽出作業や遅延なく、別途の分析環境なしで、8 年間にわたって蓄積された続けてきたワークフロー履歴に対してリアルタイムのクエリを実行できます。Setter 氏は、同僚がかつて「読み込みの完了を待つ間にコーヒーを飲みに出かけていた」と話します。今では待つこともなく、瞬時に処理されます。
今後の展望
エージェント型 AI 機能の開発が進む中、目標は、IT 要求の 55% を人間の介入なしに処理することです。これは、統合された高品質のデータ内ですでに AI レイヤーが運用されている組織にとって、十分に実現可能な目標です。自動化と予測インテリジェンスの活用により、3 年間で数千万ユーロのコスト削減が見込まれています。
「今後は、プラットフォームの機能を積極的に活用して、大幅なコスト削減と効率化を実現したいと考えています」と Wentorp 氏は述べます。
しかし、Wentorp 氏が繰り返し言及する数字は、金銭的なものではありません。90% という割合の数値です。ほとんどのエンタープライズプラットフォームが到達しようと何年もかけているエンゲージメント率を、24 時間体制で稼働しているこの港湾が達成しました。これは、労働衛生から鉄道運用、施設管理まで、さまざまな部門全体にわたって達成された数値であり、主にアクセスしているのはコンピューターシステムに直接アクセスできない現場作業員でした。
Wentorp 氏は次のように語っています。「最も重要で永続的なインパクトをもたらしたのは、サイロ化した組織から、サービスの観点で考えて運用できる組織への転換でした。このプラットフォームは、各部門が独自の境界を越えて視野を広げざるを得ないようにしてくれたのです」。
8 年前、それは賭けでした。今では、それが今後のあらゆる取り組みの基盤となっています。