ケーブルテレビ事業からスタートし、高速インターネットや固定電話・モバイル通信、さらには電力やガスの提供など、日々の暮らしを支えるサービスを幅広く展開するJ:COM。
現在、同社ではヒトによる対応力とデジタル技術を組み合わせる「ヒト(フィジカル)とデジタルの融合」を実践することで、業務効率向上やお客さまの利便性向上を追求し、「お客さまの期待を超える対応」と「より高いエンゲージメント」の実現を目指しています。
この「ヒト(フィジカル)とデジタルの融合」を推進する取り組みの一環として、ケーブル・プラットフォーム事業を担う営業部門では、ServiceNowのField Service Management(FSM)を導入し、業務プロセスの効率化と顧客体験の向上を実現する「J:COMカレンダ」を構築しました。これにより、お客さまのアポイント予約から営業員の自動アサイン、スケジュール管理、さらにサービス説明までの業務プロセスを一元的に管理・完結でき、業務の効率性と生産性を大幅に向上させるとともに、顧客体験の質を高めています。
コロナ禍や生活様式の変化により、営業スタイルの見直しが急務に
J:COMの強みは、お客さまと直接対面・対話しながらサービスの説明やトラブルの解決を行うといった、ヒトによる対応力にあり、ヒトによる多様なタッチポイントでお客さまとの信頼関係を構築してきました。しかし、コロナ禍の影響により訪問セールスの自粛や、お客さまのライフスタイルの変化などによって電話や訪問でのセールスに抵抗を持つお客さまが増加。従来のような対面型中心の営業スタイルを見直さざるを得なくなりました。
特に大きな課題となっていたのが、不動産管理会社などのパートナー企業からの紹介票をもとに営業員がお客さまに建物設備やサービスの説明を行うためのアポイントを取得する業務です。各種業務システムの分断や手作業の介在により、紹介票が届いてから営業担当をアサインするまでの事務処理が煩雑だったほか、説明に至るまでに何度も電話をかける必要があり、営業メンバーの業務負担が増大するとともに大きなタイムロスが生じていました。」と語るのは、ケーブル・プラットフォーム事業部門 お客さま営業本部 営業サポート部 グループ長 野村亮氏です。
電話によるアポイント取得についてはCX(顧客体験)という側面での課題が指摘されていました。電話という連絡手段が持つ制約によりJCOM都合のご連絡になりやすく、お客さまのご都合に十分配慮できないなど、かねてから顧客満足度の低下を招く要因として懸念されていました。こうした課題に対応するため、J:COMではヒトとデジタルの融合を強化し、営業業務プロセスの効率化と顧客体験の向上への舵取りを行っています。
「ワークフロー機能の充実」がServiceNowを採用した大きな決め手
アナログ中心だった業務の効率化と、電話連絡によるお客さまのストレス軽減。これらの課題を解決するため、J:COMでは業務の自動化・デジタル化を構想し、大きく4つの機能の実現を目指しました。
- お客さまにSMS(携帯電話番号宛のテキストメッセージ)が自動送信できる(アポイント予約サイトへの誘導メッセージを自動送信する)
- お客さまご自身が好きな時にアポイントの日時を登録できる
- お客さまのアポイントに対して営業員を自動でアサインできる(業務予定の空き状況やアポ件数、スキルに応じてスタッフを自動アサインする)
- 予約状況をカレンダ上に表示し、営業員が予定管理できる
J:COMでは、これらの要件を早期に具現化するため、あらかじめこれらの機能が搭載されており、ローコード・ノーコードでのアジャイル型の開発が可能なソリューションを模索。比較検討の結果、ServiceNowのFSM導入を決断しました。
スクラムマスターとして開発プロジェクトに参画した情報システム部門 IT企画推進本部 IT企画部 アシスタントマネージャーの向後幸生氏は、ServiceNowを選んだ決め手として「ワークフロー機能の充実」を挙げます。
「まずServiceNowには、煩雑な業務を自動化するための機能など私たちが求める要件の多くが標準機能として備わっていました。また、既存のシステムとも柔軟に連携できるので、紹介票管理システムや営業管理システムなど従来のシステムと新たに実装する機能とを連携させ、一つのフローにまとめることも容易にできます。しかも、こういった業務フローの構築に関して多くの部分がローコード・ノーコードで開発できる上、アドオンの開発も柔軟に対応可能であり、私たちが構想する業務フローを短期間で実現できることも魅力でした。これら総合的な評価によりServiceNowの導入を決めました」(向後氏)
ServiceNowの標準機能を最大限に活用し、工数削減と高品質を両立
ServiceNowをプラットフォームとして開発が進められた業務の自動化・デジタル化。後に「J:COMカレンダ」と名付けられた営業支援システムの構築は、開発チームと事業部門との緊密な連携のもと、実質2カ月の開発期間で試験運用まで到達しました。
短期間で開発できた背景について、向後氏は「ServiceNowだから作りきれた」と評価します。「まず要件定義や設計に関しては、ServiceNowにはあらかじめテーブルが用意されており、そこから必要な項目を選択し、足りない項目を追加するだけで完了させることができました。また、開発・テストにおいても全体の約8割をローコード・ノーコードで実装することが可能でした。さらに、ServiceNowはSaaS型のプラットフォームなので、セキュリティ面はServiceNow側で担保してもらえますし、本番環境の展開も非常に簡便。そういった点も開発工数の削減につながったかと思います」(向後氏)
お客さまの利便性向上と営業員の早期接触を実現
ServiceNowを活用して構築された「J:COMカレンダ」は、現場への投入から1年経たずしてアポイント取得業務において大きな効果をもたらしています。
今回プロダクトオーナーとして参画したケーブル・プラットフォーム事業部門 お客さま営業本部 営業サポート部 マネージャーの野村亮氏は、まず「CX」の面で着実な効果を実感していると語ります。
「お客さまが24時間いつでも好きな時に予約できる環境が整ったことは、お客さまの利便性に大きく寄与できたと認識しています。現在は約4割のお客さまからSMS返信をいただいています。営業員が架電することなく、これだけの反応を得られているのは注目に値する成果です。電話や訪問でのアポイント取得に加えて、お客さまとの新たな接触導線を生み出せたという観点でも非常に大きな価値を感じています」(野村氏)
同じくケーブル・プラットフォーム事業部門 お客さま営業本部 営業サポート部の渡邉悠人氏は、「すでにこのシステムは、営業の現場に“なくてはならないもの”になっています」と語ります。
「予約状況や顧客情報をリアルタイムで共有・把握できるようになったことで、営業員による架電件数の削減をはじめ、バックオフィス業務を含めたチーム全体の業務効率に大幅な向上が見られています。現場のメンバーからの反応も好評で、『案件管理のためのドキュメント運用がなくなった』『アポ取得に費やしていた時間と手間が削減された分、スタッフの育成に時間を充てられるようになった』といった声もよく耳にします」(渡邉氏)
さらに「J:COMカレンダ」は、人材配置の最適化という面でも効果を発揮。ServiceNowのDynamic Scheduling(動的スケジューリング)機能を活用した人員振り分けシステムを活用することで、特定のスタッフへの案件集中を防ぐとともに、必要なスキルを持った人員を担当エリアの境界に縛られることなく柔軟にアサインできる環境が整備されました。
チーム全体でのServiceNowへの理解が、プロジェクト成功の大きなポイント
ServiceNow活用の成功の要諦として、向後氏は「エンジニアの教育」「標準機能の最大限の活用」「プロダクトオーナー(事業部サイド)のServiceNowへの理解」を挙げます。
J:COMではシステム構築にあたって、ServiceNowを選ぶ決め手となった「標準機能」を最大限に活用することを開発方針として設定。そのために、まずは開発に先駆けてエンジニアがServiceNowの公式トレーニングを受講したほか、社内でも独自カリキュラムを作成し、システム構成や各種機能の理解から、操作法、開発法などについて知識と習熟度を向上させました。そうして得られた知見は、その後、要件定義などの議論を通じて事業部サイドへも浸透し、その結果、「実現させたい機能を、ServiceNowに寄せていくという流れが生まれた」と向後氏は語ります。
「事業部サイドも含めて、みんながServiceNowへの理解を深めたことで、すべてをイチから開発するのではなく、『その要望は、標準機能でここまで実現できる』『それ以上を望むのであれば相応の工数が増えるが、やるべきか?』という観点で議論が進むようになり、その結果として、機動的なITの提供ができ、事業貢献度を高めることができました。また、要求事項のスリム化やスクラッチでの開発項目の削減といった結果にも繋がりました」(向後氏)
お客さま対応に携わるすべてのスタッフの「拠り所」となるシステムを目指す
今回の開発プロジェクトの対象となったケーブル・プラットフォーム事業部門では、現在、ServiceNowをベースに新たな機能の拡充を計画中です。目指すのは、アポイント取得からサービス説明までだけでなく、契約管理や実績管理をはじめお客さま対応にまつわる業務一連のジャーニーを1つのシステムで完結できるようにすること。お客さま対応に携わるすべてのスタッフの拠り所となるようにServiceNowの活用を拡大することで、業務フローの自動化や一本化を今後も推進していく予定です。
今回の「J:COMカレンダ」の成功は、他の部署からも注目されており、すでに法人営業やテレセールス、さらにはアフターサービスなどを担当するオペレーションセンターへの水平展開の検討がスタート。オンラインでも、訪問でも、B to Bでも、B to Cでも、すべてのお客さま対応業務を1つのシステムで完結できる未来像を構想しています。
「今までは同じ営業の仕事をしていても、部署間の連携はほぼありませんでしたが、J:COMカレンダができたことで、お客さまと接する機会がある様々な部署から『これは、うちの部署でも使えるのではないか?』という声が出てきています。これは、弊社にとって非常に画期的なことだと言えます。そのような流れを受けて、現在は、他の営業チャネルへの水平展開に加え、部署間連携などについてもServiceNowで実現できないか検討を進めています」(野村氏)
ServiceNowを活用することで、J:COMは最大の強みである「ヒトによる対応力」を効率的に発揮できるようにしました。今後は、ServiceNowの適用範囲を他のセクションへと拡大させることで「ヒトとヒトの連携による対応力」も強化し、組織としてのパフォーマンス向上やお客さま体験のさらなる向上を実現させたいと考えています。