エクスペリエンスの向上によって、社員が持つ力を解き放ち、事業の成長や企業価値向上に結び付けること。それがNECの社内DX戦略に基づく大きな取り組みの一つです。エクスペリエンス変革のための基盤として、NECは2020年からServiceNowを活用しています。24年2月には法務領域での活用も開始しました。ナレッジの蓄積によって事業担当者の法務リテラシーを高めることや、事業担当者と法務部門とのコミュニケーションを円滑にする目的で、法務専用のポータルサイトを開設。法務相談の受付から処理までの業務プロセスを効率化するため、デジタルワークフローによる業務の自動化も推進しています。法務スタッフの作業工数が大幅に減少するなど、様々な効果が表れています。
エクスペリエンスの変革によって成長を追求し、企業価値を高める
「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を発揮できる持続可能な社会の実現を目指す」というPurpose(パーパス、存在意義)と、長年培ってきた「企業文化」、そして「戦略」の一体的な取り組みを経営方針に掲げ、積極的なDX戦略を推進するNEC。
「我々自身の『コーポレート・トランスフォーメーション』を実現する社内DX、お客様のビジネスの変革と新規ビジネスの創出に貢献するお客様のDX、そして社会インフラの安全・安心を守り、世界に一歩先んじた未来像を発信する社会のDXの3つを2025中期経営計画 の中核と設定しています」と語るのは、同社 執行役 Corporate EVP 兼 CIOの小玉 浩氏です。
「人が持つ力を解き放つ」。これは、NECが目指す社内DXのキーワードの一つです。
社員の「変わろう」とする意思や、チャレンジ精神を醸成し、それを企業としての成長力や企業価値向上に結びつけることを目指しており、その実現のためにDXによる社員のエクスペリエンスの変革を推進しています。
社内業務のエクスペリエンスが明らかに改善
社内DXのためのソリューションの一つとして、NECは2020年にServiceNowを導入。ITサービスマネジメントやHR(人事)などの社内業務において、ServiceNowを活用し、業務省力化や自動化、業務プロセスの可視化などを実現してきました。
「システムや人事に関する問い合わせ、各種申請や承認といった業務の煩雑さから社員が解放され、本来やるべき業務に専念できる環境が整えば、社員が持つ力を最大限に発揮できるようになるからです」と、小玉氏は導入の目的について説明します。
ITサービスマネジメントについては、エクスペリエンスの明らかな進化を実感しているようです。
「例えば、NEC社内には1,000以上の業務システムがありますが、以前はそれぞれの申請手続きや問い合わせ先がバラバラで約500の窓口が存在していました。社員は、問い合わせ先を探すだけでも多大な時間を費やし、ストレスをためていたのです」
そんな状況が、ServiceNowの導入によって一変。社員は、1つのポータルにアクセスするだけで、多くの申請手続きや問い合わせができるようになり、対応がどこまで進んでいるのかという途中経過も逐一確認できるようになりました。「問い合わせを受け、対応するシステム担当者の業務負荷も大幅に軽減されています。様々な部門の社員が、多大な恩恵を同時に受けられる点に導入効果を感じています」と小玉氏は評価します。
事業部門とのコミュニケーション強化と、法務リテラシー向上のために
ITサービスマネジメントなどのエクスペリエンスを変革した成功体験を受け、NECは他の社内業務についてもServiceNowで広範囲に変革していく方針を定めました。
24年2月には、法務領域の業務でもServiceNowの活用を開始。法務領域のDX基盤としてServiceNowのLegal Service Deliveryを利用するのは、国内初※のケースです。
「経営や事業を目標に向かって進めていくためには、早い段階から障害となり得るリスクを洗い出し、対処しなければなりません。そのためには経営や各事業部門と法務部門との緊密なコミュニケーションや、事業担当者自身の法務リテラシー向上が不可欠です。この2つを実現するには、気兼ねなく法務部門とコミュニケーションが取れる仕組みや、事業担当者が自分自身で契約等に関する疑問を解決できるようなナレッジの提供が必要と考えました」
導入の経緯についてそう説明するのは、NECの執行役 Corporate SVP 兼 CLCO(チーフ・リーガル&コンプライアンス・オフィサー)の山本祐子氏です。
※出典:NEC、ServiceNowのLegal Service Deliveryを国内初導入、自社の法務領域DXを加速
仕組みの見直しによって、社員による自己解決のアクションを促したい
このうちナレッジの提供については、NECは以前から社内ホームページやチャットサービスなどを使って行っていました。しかし、自己解決に至るケースは多くなく、結局、法務部門の担当者が回答することがほとんどでした。
「検索したけどナレッジが見つからなかったというケースが大半ですが、探すことが面倒なので法務担当者に調べてほしいというリクエストも少なくありませんでした。これでは、社員が主体的に法務リテラシーを向上させることにつながりませんし、回答する法務担当者の業務負荷も重くなってしまいます。そのため、仕組みの見直しによって社員による自己解決のアクションを促せないかと考えたのです」と山本氏は振り返ります。
一方で、経営や事業部門とのコミュニケーションを強化するためには、社員が相談しやすく、スピーディに回答が得られる仕組みが不可欠だと考えました。
そこで課題となったのが、相談の受付から対応に至るまでの業務プロセスの改善です。
開発スタートからリリースまでわずか4カ月と、短期間で構築
従来、法務部門は、経営や各事業部門からの相談を社内メールで受け付けていました。届いたメールの内容ごとに、法務部門の管理職が担当者をアサインし、その担当者がメールや案件に関する書類などを保管するフォルダをストレージ文書管理ソリューションで作成。そのフォルダに担当者が手動で書類などを入れていました。
これでは、管理職が担当者をアサインするまでに時間を要し、任命された担当者が必要な書類を集めて保管するまでのプロセスにも手間がかかりますし、書類の保管忘れも起こりかねません。
ナレッジの蓄積・活用と、相談対応のスピードアップ。この2つが実現する仕組みとして、NECの法務部門はServiceNowのLegal Service Deliveryが最適なソリューションであると判断しました。
アジャイル開発に適したServiceNowを採用した結果、開発スタートからリリースまでの期間はわずか4カ月と、非常に短期間で構築できました。「Legal Service Delivery は国内初導入でしたが、ServiceNowのアドバイザリーサービスを受けたおかげで初期フェーズの開発はスムーズに進みました。短期間で開発できた経験は、これから当社がお客様にLegal Service Deliveryを提供する際にも役立つと思います」と語るのは、開発に携わった同社コーポレートIT・デジタル部門 経営システム統括部 ディレクターの武田亮介氏です。
すべての社内業務がワンポータルで処理できる環境を目指す
Legal Service Deliveryの導入効果は少しずつ表れています。相談の受付から対応までの業務プロセスでは、管理職が行っていた担当者のアサインが効率化されたことで、作業工数が約30%は削減したと感じている管理職もいるそうです。
「問い合わせを受けた際に、これまでは管理職が手動で実施していた案件アサインの大部分が自動化できたことにより工数削減につながっています。今後もNECが目指す『人ならではの付加価値を出せる環境』の整備に向け、法務部門の従業員が人ならではの知恵や創造性を発揮し、高い付加価値を生み出せるよう、業務に集中できる環境を整えていきます」と山本氏は抱負を語ります。
小玉氏は、「将来的にはServiceNowのプラットフォームに統一し、すべての社内業務がワンポータルで処理できるような環境を整えていきたい。高度なエクスペリエンスの実現によって、当社が中期経営計画の目標とする『社員のエンゲージメントスコア50%』を25年までに達成させるのがゴールです」と語ります。
またNECは、自社をゼロ番目のクライアントとして、最先端のテクノロジーを実践する「クライアントゼロ」戦略の下で社内DXを推進しています。
小玉氏は、「社内DXで得た経験やノウハウを基に、お客様のDXや社会のDXに貢献していきたい。とくに法務領域におけるServiceNowの活用は国内初の事例なので、お客様の法務領域DXに必ず役立つと確信しています」と語りました。