野村総合研究所(NRI)は2015年より、パブリッククラウドの導入から運営までを支援するサービス「QUMOA(クモア)」を提供しています。QUMOAでは、パブリッククラウドの活用が進むエンタープライズIT環境向けに、マルチアカウント管理やクラウドセキュリティ対策をはじめとする機能を継続的に拡充してきました。今回、新たにユーザー向けのサービスポータルをServiceNow CRMのCustomer Service Management(CSM)ソリューションを活用して構築し、ワンポータルでマルチクラウド環境を管理できる仕組みを構築しました。
黎明期から培ってきたノウハウでクラウド運用を支援する「QUMOA」
NRIは、国内のIT業界において、システムの受託開発が主流だった時代から、コンサルティングとITソリューションを一体として提供するビジネスモデルを他社に先駆けて打ち出し、着実に成長を遂げてきました。現在も、「お客様の信頼を得て、お客様とともに栄える」という企業理念のもと、大企業を中心に多くのお客様から高い評価と信頼を得ています。
同社は技術面においても高い専門性を有し、パブリッククラウド分野において黎明期の2007年からいち早く実証実験に取り組み、2013年には、国内初となるAmazon Web Services(AWS)のプレミアティアサービスパートナーに認定されました。その後もMicrosoft Azure、Google Cloud、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)にて最上位パートナーとなり、高品質なマルチクラウドサービスを展開しています。
その中で2015年に前身となる社内向けパブリッククラウド運営サービスが誕生し、2019年から一般向けにQUMOAとしてサービスを開始しました。現在は、国内の大手企業を中心にサービスを提供しています。
NRI マルチクラウドインテグレーション事業本部 マネージドサービス推進部エキスパートテクニカルエンジニア 上原康裕氏は、QUMOAのサービス特性についてこう語ります。
「QUMOAのお客様はエンタープライズ企業が中心のため、マルチクラウド戦略を取っていることが多いです。お客様はクラウド各社の先進テクノロジーを“いいとこどり”で採用し、システムを適材適所で使い分けて事業競争力を高めたいと考えています。しかしながら、各クラウドは似ているようで異なるため、マルチクラウド運用には相応の負荷が伴います。そのため我々はお客様に対して、マルチクラウド環境での運用管理の効率化を行うためのサービスを提供しています。とりわけ、専門性が求められるセキュリティ対策の分野において確かな実績と強みを有しています。」
QUMOAのメニューは、「プロフェッショナルサービス」と「ノウハウを仕組み化したサービス」の2種類に大別されます。前者は、顧客のクラウド活用時の課題解決や、移行時の企画・検討から導入までを伴走型でサポートするサービスです。後者は、効率的なクラウド管理を実現する「マルチアカウント管理サービス」、長年のクラウド運用で培ったセキュリティノウハウを凝縮した「クラウドガイドライン準拠サポート」、マルチクラウド環境全体のガバナンス強化を実現する「クラウドマネジメントポータル」を提供しています。このクラウドマネジメントポータルが、ServiceNow CRMのCustomer Service Management(CSM)ソリューションを活用して構築されています。
「QUMOAのポータルでは、技術サポートや課金に関する問い合わせ対応だけでなく、過去の問い合わせ情報をもとにしたFAQのナレッジ化、マルチクラウド環境の構成情報管理、さらにセキュリティガイドラインに基づくチェック結果の可視化など、クラウド活用を総合的に支援するサービスを提供しています。クラウドの差異を気にすることなく、ワンポータルでマルチクラウド環境を管理できるようになっています」(上原氏)
CSMで顧客接点とサービスを高度化
同事業部のグループマネージャー 山元かおり氏は、QUMOAの一般提供を開始した際、他社のITサービス管理(ITSM)製品を利用していましたが、従来の枠組みにとらわれず、利用者視点での利便性向上を目指し、サービス全体の機能強化と発展を図りたいという構想を描いていたと明かします。
「従来は、問い合わせ画面の操作性よりもサービスの信頼性や機能面が重視される傾向があり、結果としてUIへの配慮が十分ではありませんでした。しかし、新たにサービスを提供するにあたり、私たち自身が最適だと思える製品を採用し、お客様との接点を強化させたいと考えていました。市場調査を進める中で、第三者評価でも高く評価され、長年にわたり業界をリードしてきた実績や充実した機能を持つServiceNowのCSMを採用し、ポータルの再構築を決断しました。」
ServiceNowの導入にあたっては、サポートの問い合わせ部分からスモールスタートで始めました。2023年6月から順次機能を拡充し、都度社内向けに展開しつつ、機能が整った段階で顧客向けにリリースするという流れで開発を進めていきました。
「スモールスタートで導入に着手したのですが、結果的にどんどん利用範囲が拡大されていきました。今ではServiceNowで構築したマネジメントポータルが、QUMOAのサービスの中心になっています」(山元氏)
山元氏は次のように続けます。「QUMOAのコンセプトでもありますが、我々自身がユーザーであり続けることで、ユーザー視点での運用高度化が図れるのではないかと考えました」
ServiceNowの標準機能を最大限に活用することで開発を効率化
採用を決めた当時、同事業部ではServiceNowの開発に関する知見はありませんでした。それでも、ServiceNowのアプリケーション開発プラットフォーム上で標準機能が充実していたため円滑に開発を進めることができたと、開発を担当した同事業部 シニアシステムエンジニアの西田和博氏は語ります。
「ServiceNowは標準機能が充実しているため、OOTB(Out-of-the-Box)のコンセプトのもと、極力カスタマイズを抑えながら各種サービスを開発しています。マネジメントポータルではこれからGoogle CloudやOCIの環境要件にも対応していく計画ですが、半年ごとにServiceNow側でアップデートが入る中、今後継続的に開発を続けていくためにも極力標準機能を使うことを意識しました。それによって開発を効率化でき、コスト削減効果も得られました」
現在QUMOAに実装されている具体的な機能には、インシデント管理、構成管理、クラウドセキュリティガイドラインチェック機能などがあります。その際、ServiceNowに備わっているサービスカタログやワークフロー、ウィジェットを用いてセルフサービスや分析、可視化の仕組みを実現しています。
「ServiceNowのワークフロー機能や自動化機能を活用することで、元々のポータルにはなかったさまざまな機能を新たに実装でき、我々もお客様もクラウド運用の高度化を達成できました。ServiceNowは、アップデートのたびに魅力的な新機能やサービスが拡充されており、それらを活用した今後の追加開発に大きな可能性を感じています。」(西田氏)
AI関連の機能を活用してさらなるサービス拡充を目指す
ServiceNowを導入したことでQUMOAでは、問い合わせ管理業務に関して従来の製品と比較して約30%の業務負荷削減につながっています。管理するクラウドのアカウント数は700超、仮想サーバー数も20万を超え、年々サービス規模の拡大が進んでいる状況です。ServiceNowで管理基盤を構築したことで、管理負荷を上げずにサービスをスケールさせられる体制が整いました。
今後もQUMOAでは、ServiceNowが提供する機能群を活用し、サービスの幅を広げていく計画です。西田氏は、「今後は、Now AssistやAIエージェント、AI Control TowerといったAI関連機能を使っていきたいと考えています。他にも、クラウドアカウントマネジメント(CAM)による統合管理や、Security Operationsによるインシデント対応など、幅広く機能拡張を進めていきたいですね」と語ります。
それによってサービス面では、「お客様が問い合わせ履歴やインシデント情報を活用できるセルフサービス機能や、最適な対応策を提案するレコメンデーション機能を強化することで、顧客体験の向上と業務効率化の両方を目指し、さらに価値あるサービスづくりに取り組んでいきます。」と、上原氏は構想を明かします。
最後に山元氏は、「今回ServiceNowによって、QUMOAを象徴するサービスポータルができました。現在、ご利用いただいているお客様企業は、SIサービスとの連携ユースケースを含めて約30社に上ります。今後は、新たなポータルの利便性を強みとし、更なる顧客拡大を目指してまいります。」と今後の展望を語ります。
所属・肩書きを含む本事例の内容は2025年10月時点のものです。