日鉄ソリューションズ(NSSOL)は、少子高齢化が進む現代において新たな働き方を実現する企業に向けたデジタルワークプレースソリューションのサービスデスクを刷新し、その基盤にServiceNowのTPSMを採用しました。並行して社内ヘルプデスク環境を刷新するためにServiceNowのITSMを導入。これら2つのインスタンス構成をService Bridgeで連携することにより、窓口の集約や担当の振り分けを可能にしています。
デジタルワークプレースソリューションのサービスデスクを刷新
NSSOLは、世界最大規模の製鉄企業である日本製鉄のシステム開発・運用を源流としたシステムインテグレーターであり、顧客の高い要求にこたえるITソリューションを50年以上にわたり提供してきました。同社は、少子高齢化が進む現代において、ライフイベントを重要視し「人を中心とした働き方」にシフトすることが企業成長に寄与すると考え、これを実現する環境を“デジタルワークプレース”と定義し、事業の柱の一つとしています。デジタルワークプレースの構成要素として複数のエンドポイント向けサービスがあり、仮想デスクトップサービス「M³DaaS(エムキューブダース)」をはじめ、各サービスが多くのエンタープライズ企業に利用されています。
こうしたサービスを導入する企業に対しては、これまでは商材ごとに個別のヘルプデスクを設けていました。これからは、ユーザーからの問い合わせを一元管理して対応するサービスデスクを開始することを決定しました。同社ITサービス&エンジニアリング事業本部 デジタルプラットフォーム事業部 デジタルプラットフォームサービス第一部 第1グループリーダーの宮崎諒氏は、当時の背景を次のように語ります。
「ITテクノロジーが複雑化し、人材の流動性が高まっている中で、サービスデスクの品質とスピードがこれまで以上に重要になってきています。一方で、管理者であるIT部門のリソースには限界があり、従来のようにオンサイトで人手を介した手厚いユーザーサポートを続けることは、もはや難しくなっています。そうした中で、自己解決型のユーザーサポートが将来的な解決のキーになると考えています。」(宮崎氏)
「自己解決型AIサービスデスク」の要件を満たしたServiceNow
サービスデスク立ち上げの際に掲げたコンセプトが、「自己解決型AIサービスデスク」でした。「ユーザーが困りごとを早期に発見・解決し、重大なトラブルを回避することが重要。そのためには、自己解決型があるべき姿です」と宮崎氏は語ります。
このような自己解決型を実現するために、大きく3つの技術を候補に導入検討したと言います。1つ目は、生成AIを用いた「チャットボット」。2つ目は、受け付けた問い合わせをチケット化して管理する「ITサービス管理ツール」。3つ目は、例えばRPAなど決められたタスクを自動的に処理する「自動化ツール」でした。
技術要件を満たすために当初は別々のツールを組み合わせることを検討しましたが、その際に別の部署から紹介されたのがServiceNowでした。
「我々の要求に最も近い機能を備えており、コンセプトが一致していたのがServiceNowでした。複数のヘルプデスクを一元管理するにあたり、エスカレーション先の外部システムに簡単に接続できるIntegration Hubや、複数のServiceNowインスタンス間でワークフローの連携を可能にするService Bridge が自己解決型サービスの構築と進化に適しており、我々が提供したいサービスの方向性と合致していました。チャットボットが参照するFAQの更新作業もServiceNowを使えば対応しやすそうでしたし、ユーザーからアカウント申請を受けてチケット化したあと、そのままアカウントの発行までを自動化する業務プロセスの構築も、Integration Hubを使えば実現できそうだと思えました」(宮崎氏)
顧客向けサービスと社内用途の双方でServiceNow を活用することに
こうして、同社デジタルプラットフォーム事業部はServiceNowを用いた自己解決型サービスデスクの検討を本格化していました。そんな折に、社内の情報システム部から「社内のヘルプデスク窓口を一本化したい」と打診を受けました。実はこれまで同社では、社内のヘルプデスクが事業部門ごとに個別最適化されてしまっており、見直しが必要という声が上がっていました。そのため、顧客向けソリューション用サービスデスク基盤だけでなく、社内向けヘルプデスクにもServiceNowが導入されることとなったのです。
しかし、これによって新たな別の課題が生じました。同社のDaaSなどの各商材は社外の顧客だけでなく社内ユーザーに向けてもサービス提供しています。社内ヘルプデスクのServiceNowインスタンスと、DaaSなどの顧客向けソリューションのServiceNowインスタンスが独立して存在することになってしまうのです。用途に応じてNSSOLの従業員に使い分けをさせると、「DaaSなどの問い合わせは、ソリューション用サービスデスク(デジタルプラットフォーム事業部)に」や「無線LANやPCなど設定は社内ヘルプデスク(情報システム部)に」と目的別に複数のServiceNowポータルを使い分ける必要があり、業務の利便性が下がってしまいます。
これを防ぐために、NSSOL従業員からの問い合わせを全て社内ヘルプデスクのServiceNowインスタンスに集約する方式が考えられます。しかし、今度はDaaSなどソリューションの運用担当者が、社内向けと社外向けの2つのインスタンスを使い分ける必要があるため、ワークフローやプロセスが分断され、非効率な運用が懸念されます。
こうした状況を解決したのが、ServiceNowのTPSMです。「TPSMはCSMをベースにより多くの機能を提供しており、同ソリューションの機能『Service Bridge』を使うことで、複数のServiceNowインスタンスを連携させることができます。Service Bridgeを使えば、NSSOLの従業員からのどんな問い合わせもまずは社内ヘルプデスクのServiceNowのポータルから受け付けて、社内の情報システム部やデジタルプラットフォーム事業部などの適切なチームへ振り分けることが可能になります」(宮崎氏)
これにより、例えばDaaSに関する問い合わせを社内ヘルプデスク用のServiceNowで受け付けても、その情報をソリューション用サービスデスクのServiceNowに自動連携し、シームレスな問い合わせ対応を行うことが可能になります。従業員にとっては、情報システム部門が管轄するITに関するものも、デジタルプラットフォーム事業部が管轄するサービスに関するものも、1つのServiceNowのポータル画面から問い合わせや申請を行えるようになります。問い合わせ状況や進捗状況、対応履歴などの情報も2つのインスタンス間で共有できるようになるため、社内ユーザーの利便性を高めつつITサービス管理業務も効率化することができます。
問い合わせ先の窓口を統合しユーザーの利便性を向上
こうしてNSSOLでは2つの異なるServiceNowインスタンスを同時に開発する形でプロジェクトを進めることになりました。2024年7月からの3カ月で詳細設計、開発、テストを行い、10月1日に双方が同時に稼働を開始しました。
現在も、徐々に申請可能なサービスメニューを増やしており、その効果はすでに表れていると、デジタルプラットフォーム事業部 デジタルプラットフォームサービス第一部の新地咲良氏は説明します。
「導入した結果、半年間で社内ユーザーの自己解決率は約90%を維持しています。問い合わせ方法も、昔は電話とメールがそれぞれ4割、直接相談に行くのが2割という比率でしたが、今は9割ポータルで申請してくれて、電話が1割を切っている状況です。IT部門が積極的に周知してくれていることもあり、多くの社員がポータルを使ってくれるようになり、ポータルにあるチャットボットも活用してくれています。直近の社員アンケートでは、IT環境に対する満足度も前年比で10ポイント向上しています。また、試算では約40%の社内ヘルプデスクコストの削減が見込まれており、その実現に向けて取り組んでいます」(新地氏)
ソリューション用サービスデスクと顧客のServiceNowとの連携にも期待
ソリューション用サービスデスクは、同サービスのファーストユーザーとして上述した社内活用が行われた後、外部提供を検討しています。同サービスのポイントは2つあります。まずは、今後サービスの提供先が増えていっても、自己解決型サービスであることからオペレーターを極力増やさずにサービスを拡販できるという点です。
もう1つが、同サービス提供先の企業がServiceNowを導入している場合の有効性です。今後、NSSOLのデジタルワークプレースソリューションを検討する企業がもし社内ヘルプデスクとしてITSMを導入している場合は、上記に紹介したNSSOL社内事例と同様に、顧客のServiceNowとNSSOLのソリューション用サービスデスクをService Bridgeでつなぐことができます。
その結果、NSSOLのデジタルワークプレースサービスに関する問い合わせや申請を顧客の社内のヘルプデスクポータルに一本化して利用者の利便性を高めると同時に問題解決のスピードを向上できます。
「サービスデスクは、ユーザーの自己解決率を高めていくことが重要だと考えており、生成AIをもっと活用することを考えています。また、ユーザーからの申請後の処理に対してまだ人手で対応している領域も多いため、そこもServiceNowを使って自動化する取り組みを進めているところです」(新地氏)
NSSOLでは今回ServiceNowを導入した知見を活かし、既存顧客へのITSMのクロスセルも期待しているといいます。TPSMを活用した自己解決型サービスデスクが同社の新たなビジネス展開の可能性を開いています。
所属・肩書きを含む本事例の内容は2025年3月時点のものです。