アフターサービス領域を担う
運用プラットフォームを構築し
サイロ化脱却を加速
NTTコムウェア株式会社 ネットワーククラウド事業本部 IOWN推進部
前園暁子氏
NTT コムウェアでは、NTT グループ各社に対して Assurance 領域(顧客対応、サービス運用、フィールドサービス)の標準化された業務プロセスや機能を提供するプラットフォームサービスの展開を進めています。グループ各社ごとの個別最適に基づいてスクラッチ開発されてきたシステムのサイロ化を解消するべく、ServiceNow を活用することでフロントシステムからフィールドサービスまでシームレスにつないだ共通業務環境を実現します。
グループ共通 IT Assurance が求められた背景にあるシステムサイロ化の課題
NTT グループの通信インフラを支え、数千万におよぶ NTT グループの通信サービス利用者の情報管理システムを設計・開発・保守運用してきた実績と技術力を大きな強みとする NTT コムウェア。ソフトウェア技術を中心にシステムの企画から開発、基盤構築、運用まで、一連のプロセスを支える技術者を抱え、年間で約 500 件ものプロジェクトを手がけています。
NTT コムウェアでは、NTT グループ各社への提供サービスの 1 つとしてグループ共通 IT Assuranceの導入を推進しています。グループ共通 IT Assuranceとは、「顧客対応」「サービス運用」「フィールドサービス」といったアフターサービス業務に標準的なプロセスと機能を提供するサービスであり、NTT グループ全体を対象とする共通プラットフォームに位置づけられています。
そもそも、なぜグループ共通 IT Assurance が求められたのか。背景にあったのは、グループ各社ごとの個別最適に基づきスクラッチ開発されてきたシステムのサイロ化の問題です。
これまで NTT グループは、会社ごとやサービスごとで運用設計やシステム設計が行われ、業務プロセスや扱うデータが標準化されていませんでした。それゆえに、顧客に対して統一した顧客体験を提供しにくいことが課題でした。
「場合によっては同じお客様にサービスを提供していたとしても、ばらばらのシステムではその事実を認識できません。さらに大きな問題は、各社の組織内部にいる人たちは、個々のサービスの範囲内では改善を行ってきているため、そうしたサイロ化の問題自体になかなか気づけないことです」(井上氏)
そこでグループ全体を統括する持株会社であるNTTの旗振りのもと、NTTコムウェアが中心となって「オール NTT」として統一された CX(顧客体験価値)を提供すべく、グループ共通 IT Assuranceを立ち上げました。
フロントシステムからフィールドサービスまで一貫した単一のプラットフォームを構築
もちろん、NTTグループ全体のシステムのサイロ化を解消し、業務を標準化するのは容易なことではありません。そこで NTT コムウェアが、グループ共通 IT Assurance の基盤として採用したのが、SaaSとして提供される ServiceNow のソリューションです。
「NTTグループがシステム運用の基本としている ITIL に準拠していることを重視し、IT Service Management(ITSM)から検討を開始し、続いて各社の顧客接点にチャットボットやオムニチャネルなどの新機能を提供していくことを見据えて Customer Service Management(CSM)を検討しました。さらにフィールドサービスを管理している既存システムが EOL(ライフサイクル終了)に近づいていたことから Field Service Management(FSM)にも注目。グループ共通 IT Assuranceが対象とするすべての業務をシームレスにつなげることが可能なことから、ServiceNow の一連のソリューションを選定しました」(井上氏)
こうしてグループ共通 IT Assurance の骨格を定めた NTT コムウェアは、更改時期が迫っているフィールドサービス領域における FSM の導入を開始しました。
「FSM は機器の修理で必要となる部材調達業務を含めた保全プロセス全体をカバーします。そして顧客応対やインシデント管理などの業務を担っている既存システムが EOLを迎える前に、CSMとITSMを基盤とするサービスの受け皿を用意しておくことで、最終的にフロントシステムからフィールドサービスまで一貫したワンプラットフォーム化を実現するというのが、私たちの基本構想です」(前園氏)
新規ビジネスへの導入を通じて成功体験を獲得
ITSM を最初に適用したのは、NTTドコモの新規ビジネスにおけるアフターサービス領域です。ユーザーにプロトタイプを見せ、利用イメージをすり合わせながら業務適用を進めていくアジャイル開発の手法を採用したことで、導入はスムーズに進みました。
仮に個別最適で開発されたシステムで行われていた既存業務の置き換えから始めていたならば、ユーザーの激しい抵抗を受けたかもしれません。その意味で比較的小規模な新規ビジネスから導入に着手し、成功体験を得られたことは大きなポイントです。
「過去のしがらみが無い分、ServiceNowのスタンダードなプロセスに柔軟に業務をあわせることが できました。また、SaaS だからこそできる素早いシステム構築で、従来のスクラッチ開発と比べて 導入期間も大幅に短縮されました。実績3カ月でサービス展開を完了し、タイムツーマーケットの 迅速化にも貢献しています」(永井氏)
さらに、従来のシステムで不可欠だった5 年ごとのライフサイクル対応やバージョンアップ、パッチ適用などのメンテナンス作業が不要となるメリットに対して、NTTドコモのIT 部門からも高い評価が寄せられています。これもまたグループ共通IT Assurance が目指した狙いの1つにほかなりません。
「個別システムではなく共通プラットフォームとして提供することで、オンプレミスの各システムに費やしていたリソースを集約して運用コストを削減することができます。加えて SaaS である ServiceNow では、継続的な機能強化もコストや時間をかけることなく行えます。このメリットに 対する理解がグループ各社に広がっていくことで業務標準化への機運が高まり、さらに標準化できたならば、そのオペレーションは NTT コムウェアに任せればよいといったように、グループ全体での業務集約につなげていくことができます」(井上氏)
なお、グループ共通IT Assurance の最終系といえる業務集約を実現する上で、NTT コムウェアが活用しているのがServiceNow のDomain Separation の機能です。複数のグループ会社が保有するデータやプロセス、管理タスクを同一インスタンス上で論理的に分離するもので、これにより各社が保有する顧客情報や秘匿情報を保護するとともに、個別部分としてそれぞれのビジネスの独自性を担保することができます。
「事業形態の異なるグループ会社に対して統一されたグループ共通IT Assurance を展開するにあたり、そこで発生するギャップを埋めるために最も重要な鍵を握っているのがこのDomain Separation の機能です」(井上氏)
横断プロセスの実現に向けた取り組みがいよいよ本番
共通プラットフォームの構築は順調に進む一方、残された課題がないわけではありません。グループ共通IT Assurance を展開し、業務集約を進めていく上で、どうしてもServiceNow の標準機能、いわゆるOOTB(Out-of-the-Box)では対応しきれないプロセスやデータモデルが発生する可能性があります。
「個社ごとにカスタマイズされたプロセスやデータモデルの定義づけや管理をどのように行うのか、 いかにガバナンスを効かせて再利用性の高いものにしていくのか、ServiceNow のサポートも受けながら、議論を深めていく必要があります」(野澤氏)
なによりグループ共通 IT Assurance の展開は緒に就いたばかりであり、顧客応対からフィールドサービスまで一貫したプロセスの実現に向けた取り組みは、これからいよいよ本番を迎えます。
「今後、CSM、ITSM をベースとするフロント系サービスの展開が進んでいくに従い、アフター業務のすべてのプロセスをエンドツーエンドでつないだ世界観が醸成され、ビジネス現場でより大きな効果を感じていただけると確信しています」(井上氏) 単なる業務効率化にとどまらず、さらなる CX 向上に向けて NTT グループ全体のマインドを変え、 企業文化そのものに変革を起こすべく、NTT コムウェアはグループ共通 IT Assurance の展開をさ らに進めていく構えです。