大阪市は「Re-Designおおさか~大阪市DX戦略~」を旗印に、サービスDX、都市・まちDX、行政DXの3つの柱でデジタル変革を推進。このうち行政DXについては、生産年齢人口の減少やテクノロジーの発展を見据え、業務効率化やデータ利活用などを柱とするバックオフィスDXを2023年から進めています。
バックオフィスDXを支える基盤として構築を進めているのが、庁内のデータや業務プロセスを1つにする「統合プラットフォーム」です。大阪市は、このプラットフォームの開発基盤としてServiceNowのApp Engineを事業者提案により採用しました。App Engineを使って、庁内の様々なシステムとServiceNowのワークフローを連携させると、特定のシステムで管理されているデータが簡単に呼び出せるようになり、データに基づくタスク処理や、他の部局や担当者への業務依頼に至るまで、すべて1つの画面で処理できるようになります。
これによって業務効率を改善し、組織全体のパフォーマンスと業務品質を向上させることが最終的なゴールです。バックオフィスDXが着実に進むように、大阪市は詳細なロードマップとKPIを設定。30年までに、職員の作業時間を23年比で年間110万時間削減することを目指しています。
人口減少による働き手不足に備え、バックオフィスDXを推進
サービスDX、都市・まちDX、行政DXの3つのDX戦略を進める大阪市。このうち、行政DXについては、全職員が関係する「バックオフィスDX」を戦略の根幹と位置づけて、全庁を挙げて積極的に取り組んでいます。
その背景にあるのは、人口減少と高齢化の進行によって予測される将来の働き手不足、そしてAIをはじめとするテクノロジーの急速な進化です。
「働き手不足の社会的な影響を受ければ、現在の仕事の進め方や、システム、組織のあり方では業務を継続できなくなってしまいます。バックオフィスDXを進めれば、将来的に職員数が減少しても、質の高い行政サービスが提供できるようになり、受ける市民や企業も含めたすべてのステークホルダーにウェルビーイングがもたらされます」と説明するのは、大阪市デジタル統括室 DX推進担当係長の西村 満氏です。
このバックオフィスDXの基盤づくりのため、大阪市は事業者提案によりServiceNowのソリューションを採用しました。
バックオフィスDXの先行プロジェクトとして、「予算編成システム」を開発
大阪市は、バックオフィスDXの先行プロジェクトとして、ServiceNowのSPM(戦略的ポートフォリオ管理)をベースとする「予算編成システム」の開発を23年にスタートさせました。予算編成システムとは、文字通り、次の会計年度における市全体の予算を編成するためのシステムです。
「従来は各部局がExcelなどで予算要求資料を作成し、紙やメールで提出された資料を集めて予算案作りを行っていました。しかし、作業が非常に煩雑で、相当な時間がかかっていたこともあり、システム化に踏み切ったのです」と語るのは、大阪市財政局 財務課長代理で、デジタル統括室 バックオフィスDX担当課長代理も兼務する梅屋 剛氏です。
「予算編成システム」の開発は、市全体の予算を取りまとめる部局である財政局が主導。梅屋氏がプロジェクト全体を統括しました。
「スクラッチで開発するシステムとは異なり、ローコードプラットフォームであるServiceNowなら『何ができるのか?』ということが視覚的・直感的に理解しやすく、開発の途中段階で何度でも修正が加えられるので、ITとは縁遠い私たちでも管理できるだろうと判断しました」と梅屋氏。ローコード開発に対応しているので、開発に要した期間はわずか14カ月と非常にスピーディでした。
App Engineを開発基盤として、「統合プラットフォーム」の開発を進める
先行プロジェクトである「予算編成システム」が無事稼働したことを受け、大阪市は25年、プロジェクトの本丸である全庁のデータと業務プロセスを一元化する“ワンプラットフォーム”の開発をスタートさせました。
大阪市は、このプラットフォームを「統合プラットフォーム」と命名。その開発基盤として、事業者提案によりServiceNowのApp Engineを採用しています。
App Engineは、ユーザーによる市民開発を可能とするローコード・ノーコードの開発基盤です。
またApp Engineには、組織内で利用されている様々なシステムを、簡単な設定でプラットフォームにつなげられる機能もあります。この機能によって全庁のデータや業務プロセスをServiceNowのワークフローに直結すれば、1つの画面であらゆるデータの入手やタスク処理ができるなど、職員の業務効率は格段に向上します。
西村氏は、「『統合プラットフォーム』の基盤となるソリューションであるServiceNowのApp Engineは、我々が思い描いている理想をかなえるソリューションであると確信しています」と語ります。
定期的にアップグレードされるので、業務効率化が加速度的に進む
「統合プラットフォーム」の開発基盤となるApp Engineには、その高い柔軟性や拡張性に対して、大きな期待が寄せられています。
すでにApp Engineを使った「統合プラットフォーム」の開発プロジェクトは進んでいますが、「開発に携わっている担当者からは、『標準機能の範囲だけでも、想像以上にいろいろなことができる』という声が上がっています」と西村氏は言います。
しかも、SaaSであるApp Engineは、それ自体がテクノロジーの進化によって定期的にアップグレードされていきます。
「標準機能でできることは今後もどんどん増えるはずなので、新しい機能を積極的に採り入れれば、業務の効率化や生産性向上が加速度的に進むはずです」と西村氏は期待しています。
ローコード・ノーコード開発の特徴を生かして、市民開発が進むことを期待
現在、「統合プラットフォーム」の開発はデジタル統括室が中心となって行っていますが、ゆくゆくは、各部局が自分たちのニーズに合わせてツールの開発や機能追加を行ってもらう構想も描いています。ローコード・ノーコード開発に対応するApp Engineなら、自治体業務にも柔軟に対応が可能だからです。
「実際に触ってもらい、『何ができるのか?』ということを感じてもらえば、目の前の業務をより効率よくするために、自分たちの手でツールや機能を開発してみようというモチベーションが生まれるはずです。将来的に我々デジタル統括室は、そうした内製化の取り組みを支援するCoE(センター・オブ・エクセレンス)の役割を果たしていければいいですね」と西村氏は語ります。
また、大阪市は「統合プラットフォーム」を、業務効率化のための基盤としてだけでなく、職員間のコミュニケーション基盤として“職員ポータル”を構築することも検討しています。業務ナレッジの共有や情報発信をすることで、職員のウェルビーイングをさらに向上させたいという狙いがあるようです。
目標は年間約110万時間の作業時間削減、AIの利活用で上振れの可能性も
大阪市は、「統合プラットフォーム」の開発と並行して、ServiceNowのApp Engineを使った「共通公文書管理サービス」の開発も進めています。
従来は、公文書の保管場所が複数のシステムやストレージに分散して保存されており、原本や正本の特定・検索に手間がかかっていました。
「確認したい文書がすぐに呼び出せず、どの文書が最新なのかという判断にも時間がかかることが大きな問題でした。そこでApp Engineを使って、公文書の起案から決裁、保管に至るすべての機能を連携し、ServiceNowのワークフロー上で処理できるサービスの開発を進めています」と西村氏は説明します。
大阪市は、これらの「バックオフィスDX」によって、30年までに職員の作業時間を23年比で年間110万時間削減することを目指しています。生産性は23年比で10.3%向上させ、複数のシステムに同じ情報を入力する多重入力を0件にすることが目標です。
ただし、「これらはグランドデザインを描いた23年の時点で設定したKPIです。生成AIやAIエージェントが普及するなど、テクノロジーはどんどん進歩しているので、目標の早期達成や、さらなる上振れが期待できるかもしれません」と西村氏は語ります。
大阪市も今後、生成AIやAIエージェントを積極的に活用していくことを検討しています。「AIの効果を最大限に発揮するためには、データをいかに蓄積して、統合できるかが重要なカギを握ります。その点、ServiceNowは、庁内のあらゆるシステムを一元化し、すべてのデータを統合できるプラットフォームなので、AI利活用のための基盤としての役割も期待しています」と西村氏は語ります。ServiceNowは、大阪市の「バックオフィスDX」を支える基盤として、これからも存在感を発揮し続けそうです。