欧州の最大手ストアのサポートには電話回線以上のものが必要
1972 年、Dirk Rossmann 氏は、「顧客が必要とする商品と顧客との間のあらゆる障壁を取り除く」というシンプルな信念に基づいて、ドイツで最初のセルフサービスドラッグストアをオープンしました。業界内では、うまく行かないだろうと見られていました。しかし実際には成功し、欧州におけるショッピングのスタイルを変化させました。
50 年経った今、同社のその同じ才覚は別の変革を推進しており、今回は売り場をサポートするオペレーションの中でそれが活かされています。Rossmann 社には大手企業であるが故の次のような障壁がありました。店舗で何か問題が発生するたびに、Dilara Akbas 氏のようなマネージャーには、フロアから離れ、本社に電話をかけ、保留状態で待機して、電話越しに問題を解決するという 1 つの選択肢しかなかったのです。
Akbas 氏は次のように振り返ります。「そのやり方は、最も気にかけるべき顧客から時間を奪っていました。」
ケース 1 件あたりの手作業処理に、さまざまな部門にわたる平均 9 分の稼働が費やされていました。データはサイロ化し、IT、HR、ストアオペレーションはそれぞれ別々のシステムを実行しており、発生していることが会社全体で共有されることはありませんでした。年間数万件の要求がが、同じ低速で分断されたチャネルを経て処理されていました。
「店舗がうまく機能していれば、Rossmann 社もうまく機能していることになります」と、Rossmann 社の HR & IT 担当 Managing Director である Christian Metzner 氏は述べています。5,200 の店舗を適切に機能させ続けるには、それらすべてをつなぐシングルプラットフォームが必要でした。
電話対応を 1 つのアプリに集約し、すべての従業員の手元で店舗サポートを実現
そのような確信が、すべてを ServiceNow に統合するという決定を後押ししました。Metzner 氏が述べるように、チームは単に固定ソリューションを提供するだけのベンダーではなく、一緒にイノベーションを推進してくれるパートナーを求めていました。「次世代の小売業をリードしたいのであれば、企業全体を統合できる単一のプラットフォーム、つまりデジタルバックボーンが必要であることは理解していました」と彼は説明します。
結果として、ServiceNow リテールオペレーション上に構築したモバイルアプリを導入することになりました。これによりすべての店舗スタッフは、営業フロアを離れたり業務フローを中断したりせず、本社に直接連絡を取れるようになりました。従業員は初めて、自分の言語でテキストや音声メッセージによって問題を報告し、ケースの一部として写真をすばやく送信し、オープンから解決済みまで要求のすべてのステータスを追跡できるようになりました。これまでは何時間もかかっていたやり取りが、ポケットに収まる単一のインターフェイスで済むようになりました。
「今では店舗スタッフは、このアプリを使用して、容易に懸念事項を本社に連絡し、時間を節約し、店舗の顧客のためにより多くの時間を確保できるようになりました」と、ドイツの Head of IT である Alexander Blanckarts 氏は述べています。
Rossmann 社はエージェント型 AI に移行し、プロジェクトを運営するチームでさえ驚く結果を実現
さらに大きな変化が訪れたのは、Rossmann 社がその基盤にエージェント型 AI 階層を追加したときです。要求を人間のエージェントにルーティングして待機する代わりに、システムがそれらをエンドツーエンドで処理するようになったのです。最初の AI ルーティングエージェントは、立ち上げ時には 56% の精度でした。ナレッジ記事を調整することで、再トレーニングやエンジニアリングのオーバーホールを行わずに、わずか 2 週間で精度は 94% を超えました。チケット優先順位付けエージェントも同じ曲線をたどり、同じ期間に 60% から 94% になりました。2 つの異なるエージェントが同じ迅速な向上を遂げています。
「私はそれが現実だと完全には信じていませんでした」と Metzner 氏は言います。
Blanckarts 氏はこのことが競争において何を意味するかをこう率直に話しています。「ServiceNow との戦略的パートナーシップを非常に誇りに思っています。それにより、競合他社がまだ実験中の段階にある中、当社はすでに AI エージェントや新しいテクノロジーを導入済みという優位な立場に立っています」
AI エージェントが店舗の問題を自律的に解決することで、9 分かかっていたやり取りを 5 秒未満に短縮
店舗スタッフが当日の配送品に損傷があることに気付くと、写真の撮影からケース報告の準備までのプロセス全体を、以前は本社の誰かに連絡を取るためだけにかかっていたのと同じ時間で行えるようになりました。
これは、以下のように行われます。
- 店舗スタッフはモバイルアプリを開き、損傷した商品の写真を撮影します。
- AI エージェントが画像をスキャンし、商品を特定し、問題を分類します。
- 納入日などの情報が欠落している場合は、AI エージェントが店舗スタッフに入力を促します。
- AI エージェントはナレッジベースから関連情報を参照し、完全なケースを作成します。
- 十分に準備されたケースが適切な人間のエージェントにルーティングされ、対応に必要なすべての情報が提供されます。
- ログイン問題の解決など、その他のサポートケースについては、AI エージェントがエンドツーエンドで自律的に処理します。
「AI エージェントは、独自に分析し、優先順位を付け、対応策を実施してチケットをクローズします」と Metzner 氏は述べています。「かつてはやり取りに最大で 9 分もかかっていたものが、今では 5 秒もかからずに済むようになりました。事実上、瞬時に処理できます」
Akbas 氏にとって、この変化は数字以上のことを意味しています。「すべてが自動的に解決されます。ストアマネージャーとして、もう本社と繰り返しやり取りする必要はありません。パレットが破損して到着した場合でも、数秒でそれを文書化して販売フロアに戻ることができます。このアプリによって、店頭から離れずお客様に対応することができます」
AI の精度は 98% に達し、Rossmann 社は年間運用コストの節減額を 2,000 ~ 3,000 万ユーロと予測
チケットを適切なチームにルーティングする精度は 98% にまで上昇し、人間の精度を上回るようになりました。受け取るチケットの 89% が、以前はトレーニングを受けた人間のエージェントによって手動で分類する必要があった 200 以上のサービスカテゴリーに自動的に正しく分類され、優先順位が付けられるようになりました。この新しいワークフローにより、AI で処理されるケースの人件費も 50% 削減されました。Rossmann 社は、全体的な運用コストの 2 ~ 3% が削減されると見積もっており、これは年間 2,000 ~ 3,000 万ユーロに相当します。
「成功の絶対的な基準は、チケットを適切な担当者にルーティングすることでした」と、AI Product Owner の Alexander Roj 氏は述べています。その基準は満たされ、システムは利用を重ねるごとに改善が続いています。Akbas 氏のような店舗スタッフにとっては、問題の対応にかかる時間が短縮され、来店してサポートを求める顧客に対応する時間が増えることを意味します。
1,500 人時がすでにビジネスに還元されており、プラットフォームに接続する支店やナレッジが増えるにつれて、年間 10,000 人時が節約できると見込まれています。プラットフォームに追加される店舗が増えるほど、この節減が拡大します。
次のステップ:AI 音声エージェントとリアルタイムのストアインテリジェンスがフェーズ 2 の基盤となる
フェーズ 2 はすでに進行中です。そこでは、プラットフォームのすべての要素 (HR サービスデリバリ、IT Service Management、IT Operations Management、Retail Service Management、リテールオペレーション) が AI で強化されます。Rossmann 社は、100 以上の国々の従業員をサポートするために、AI 音声アシスト機能の試験運用も行っています。
「自分の音声を使えるようにすることは、スタッフがさらに効率的に働けるようにするためのもう 1 つの方法です」と、Metzner 氏は言います。「すべてのスタッフが母国語に関係なく、必要なサポートを即座に受けられるようにしたいと考えています」
Rossmann 社ではさらに、店舗からのリアルタイムセンサーデータを在庫データと組み合わせて、顧客が問題に気付く前に取るべき次善措置を知る方法も模索しています。AI が判断した、新しいレジをいつ解放するか、どの棚を補充する必要があるかといった情報を店舗チームに正確に伝え、それを必要とするスタッフに伝達します。
先手を打って行動するという 50 年にわたる才覚が、今、小売業の未来に応用される
顧客が必要なものを簡単に入手できるようにするという、中核となる熱意は 1972 年以来変化していません。異なっているのは、現在では Rossmann 社が解消しようとしている問題は従業員の運用エクスペリエンスにあり、それによって店頭で顧客にサービスを提供するという最も重要な時間に従業員が集中して取り組めるようになっているという点です。時間を取り戻すことができたスタッフは、本来なら常にその時間があるべきだった人たちです。
「実装のスピードを誇りに思っています」と Metzner 氏は述べています。「ServiceNow が優れた人材をプロジェクトに投入し、さまざまなお客様とのつながりも持たせてくれたので、迅速に学習できました。しかし、それにはリスクを取る勇気も必要でした」
50 年間にわたってそうしたリスクを取ってきた同族経営の企業にとって、それは自然なことでした。すでに 6 つの AI エージェントが稼働しており、未来は明るいものに見えます。
「私たちはまだ始めたばかりです」と Metzner 氏は締めくくります。「今から 3 年後に、私たちは今のこの時を、オペレーションの中心である店舗と企業の他の部分とを真に結び付けた瞬間として振り返ることになるでしょう」