「アプリケーション開発」とは、ソフトウェアアプリケーションの概念化、設計、構築、実装に使用するツールと戦略を表す用語です。
ビジネスにソフトウェアが必要な場合、既製の製品をサードパーティから購入することを検討するのはもっともな対応と言えるでしょう。大手ソフトウェアデベロッパーはかつて「そのためのアプリケーションがありますよ」というセリフを好んで使っていました。
パッケージソフトウェアオプションは応急的なソリューションとなり得ますが、ビジネスや顧客のニーズの変化に対応し続けることが困難となる場合があります。簡単に言えば、SaaS (software-as-a-service) アプリケーションによって企業は高度な機能を簡単に利用できるようになります。しかし、このような機能が厳密には最適ではない場合は、どうしたらよいでしょうか?成功している企業は、ソフトウェアソリューションをさらにカスタマイズし、コントロールを強化する必要がある場合には、社内での「アプリケーション開発」を選んでいます。
過去にはデジタルツールがソフトウェア企業やその他のテクノロジー面で先進的な企業のものであった時代がありましたが、現在の企業はデジタルトランスフォーメーションの只中にいます。かなり小規模の企業でさえ、先進の自動化ソリューションやその他の IT ソリューションを利用することで、その範囲を拡大し、顧客により優れたサービスを提供して、「少ない」労力で「多くの」成果を出しています。アプリケーション開発は、この変革を促進し、特定のニーズと要件に対応した社内外向けの専用アプリケーションを構築できる機会を企業にもたします。
社内でのアプリケーション開発にはさまざまな潜在的メリットがあります。アプリケーション開発にかかる初期費用と時間は、開発を外部委託する場合や既製のアプリケーションを購入する場合に比べてかなり大きくなる可能性がありますが、社内開発アプリケーションは柔軟性とスケーラビリティが高いため、ニーズの変化に合わせてソフトウェアの機能を調整できます。ソフトウェアをコードレベルで完全に管理できるため、新しいシステムと既存のシステムの統合も容易になります。顧客向けのアプリケーションでは、アプリケーション開発を行うことによって、重要なアプリケーションマーケットプレイス (Apple App Store や Google Play など) に参入して、パーソナライズされたサポートとサービスソリューションを顧客に提供し、今後の分析のために重要なデータを収集できます。
アプリケーション開発では企業がさまざまニーズに対応できるようになりますが、社内アプリケーション開発にはいくつかの種類があります。最も一般的な 4 種類のアプリケーション開発は以下のとおりです。
迅速なアプリケーション開発 (RAD) では、機能や使いやすさを損なうことなく、アプリケーションの商品化までの期間が短縮されます。RAD アプローチでは、アプリケーション開発者が反復型プロセスに従い、アプリケーション内の複数の個別モジュールを並行して開発し、反復のたびに製品が改良されます。
ローコード/ノーコードアプリケーション開発では、コーディング経験がない非技術系ユーザーでもアプリケーションを構築して展開できます。このアプローチではグラフィカルインターフェイスとドラッグアンドドロップツールを採用しており、コーディングの知識がないユーザーがコードスニペットを接続して変更し、自動化ワークフローを設計できるようになります。
モバイルアプリケーション開発は、アプリケーション開発から派生したものであり、Android、iOS などのモバイル OS 向けのソフトウェアの作成に特化した開発です。モバイルアプリケーション開発では、顧客の手におさまるサイズのデバイスに製品とサービスを提供できるだけでなく、モバイルソリューションとリモートワークソリューションを従業員に提供することもできます。
データベースアプリケーション開発では、関連する顧客データとビジネスデータを収集、編成、管理、検索するための独自のシステムを企業が設計できます。データベースアプリケーションは、計算の実行、さまざまな条件に基づくデータのソート、レポートの生成、チームとユーザー間での情報リソースの調整などによく利用されます。
この 4 種類のアプリケーション開発は部分的に重複しています。たとえば、ローコードプラットフォームを使用して、「モバイルユーザー」向けのデータベース「アプリケーション」を開発するために「RAD アプローチ」を導入することがあります。それぞれのアプリケーション開発を理解しておくと、各社のニーズに対してどの開発が適切であるか、また大規模なプロジェクトでこれらの開発をどのように組み合わせて利用できるかを把握する際に役立ちます。
さまざまなソフトウェア開発手法がありますが、そのほとんどはウォーターフォール手法とアジャイル手法の 2 種類に分類できます。
従来のウォーターフォール型アプリケーション開発は、ソフトウェア開発ライフサイクルをフェーズに分割する一連の直線的なステップに従って実施されます。前のフェーズが完了した後で新しいフェーズを開始できます。ほとんどの場合、フェーズは「ステージゲート」によって分けられています。ステージゲートは、プロジェクトが次のフェーズに進む前に完了しなければならない要件を表します。
ウォーターフォール手法には開発チームに対して次のメリットがあるため、長い間アプリケーション開発で選択されてきた手法でした。
- 容易でわかりやすい設計と管理
- 適切に定義された作業範囲
- より正確なコスト予測
- より明確な進捗の測定
- チームの役割分担の正確な明確化
- 個々のチームが費やす時間の削減
- エンドユーザーに求められる関与の減少
アジャイル手法では、従来のウォーターフォール手法の特徴であるステップバイステップのプロセスは使用されません。アジャイル手法はその代わりに、自己組織化され、部門横断的なチーム間のコラボレーションに支えられています。開発タスクの実施とテストが同時に行われ、製品リリースは継続的サイクル (「反復」と呼ばれます) で行われます。アジャイルは継続的デリバリと継続的改善の中核となるものです。
ほとんどの場合、アジャイル手法ではアプリケーション開発にかかる時間を短縮でき、プロジェクトの途中で方向性を変えて新たな仕様や要件を検討することができるようになります。アジャイルはユーザーの関与に大きく依存しており、製品の改訂と最適化のためのリソースとして顧客を活用します。
近年、アジャイルがもたらす多くのメリットを理解する企業の増加に伴い、アジャイル手法の利用が増加しています。
- ユーザーエクスペリエンスの向上
- 商品化までの期間の短縮
- ステップの簡素化
- 持続可能な開発ペース
- チームの自律性の向上
- 社内外のコミュニケーションの向上
- ビジネス価値の重視
- 製品リスクの低減
ウォーターフォール手法とアジャイル手法ではそれぞれにより適したユースケースがあり、またさまざまなビジネスニーズに対応できる特定のメリットがあります。アジャイルとウォーターフォールの違いは次のように特徴付けることができます。
- ウォーターフォール型プロジェクトでは、各貢献者が各自のタスクを開始する前に、前のステップが完了するまで待つ必要があるため、費用がかかり、アジャイルよりも長期の開発プロセスが必要となる可能性があります。またウォーターフォール手法は、要件の変化への対応という点では柔軟性が低いと考えられています。ただしウォーターフォール手法での明確な計画と構成は、より完全な製品につながる可能性があります。
- アジャイル手法では、低コストで迅速に製品を提供できます。アジャイル手法ではさらに開発途中でプロジェクトを容易に調整できるので、多くの企業がアジャイルを開発手法として導入していることもなんら驚くことではありません。トレードオフは、アジャイルプロジェクトは非常に流動的であるため、正確な計画と予算の策定が難しくなる可能性があることです。
取り組むアプリケーション開発の種類と使用する手法に応じて、アプリケーション開発イニシアチブの管理手順は異なります。ただしほとんどの場合、アプリケーション開発で成功する企業は以下の 6 つのステップのようなプロセスに従っています。
アプリケーションの構築を開始する前に、アプリケーションで対処するニーズ、アプリケーションで提供される価値、アプリケーションを利用できるプラットフォーム、構想自体が実現可能であるかどうかを理解する必要があります。これは、見落としてはならない重要な最初のステップです。構想と計画は、リソースを開発に投入する前にアプリケーションの市場性と有用性を判断する際に大きな違いをもたらす可能性があります。
このステップの内容は、適用する手法によって大きく異なります。ウォーターフォール手法では、開発チームはアプリケーションの「スケルトン」の作成から着手する必要があります。その後、ソフトウェアのより詳細な側面の作業に進むことができます。反復型のアジャイル手法では、プロトタイプの開発から着手します。プロトタイプはフィードバック収集のためにロールアウトすることができるため、開発中にアプリケーションの機能を調整できます。
コーディングは開発ステージで本格的に開始されます。このステップでは、チームが設計ステージで得た内容に基づいて、製品の最終バージョンに向けて作業を進めます。このステップでほとんどの「構築」作業が行われます。アプリケーション開発の手法と種類によっては、複数回の反復でこのステージを繰り返し行うことがあります。
テストは、同時に実施される場合でも、前のステージの後に実施される場合でも、ソフトウェアのバグを洗い出して解消し、アプリケーションがその目的を果たすことを確認するために不可欠です。テストは費用と時間がかかるアプリケーション開発ステージとなる可能性がありますが、メンテナンスとサポートの費用の削減という点では、採算が合う以上のメリットをもたらす可能性があります。
アジャイル開発では、更新されたバージョンをユーザーにリリースするたびに戻るステージです。主なバグをすべて解決しており、いくつかの追加の修正や改善点がある場合でも「最終完成」製品を提供するという確信を持てることが理想的です。
アプリケーションがユーザーの手に渡ったら、サービスとサポートを継続的に提供することが重要です。アプリケーションのステータスを監視し、フィードバックやレビューを受け入れ、ユーザーと協力してソフトウェアが期待どおりに機能していることを確認します。理想的には、最終的にアプリケーションの廃止を決定するまで、このステージがずっと関わり続けます。
社内外のビジネスアプリケーションのニーズが高まる中、すべての業界の企業がアプリケーション開発を社内に移行しています。これは、企業とその従業員、そしてアプリケーションを使用する顧客にとって大きなメリットとなる可能性があります。ただしアプリケーション開発は落とし穴の多い複雑なプロセスです。企業でのアプリケーション開発への取り組みを改善するためのヒントを以下に示します。
アプリケーション開発は、それ自体が目的であってはなりません。開始前に、アプリケーション開発が他の事業達成目標にどのように役立つかを特定し、定義してください。
アプリケーション開発では、計画、コーディング、分析が必要ですが、アプリケーションを完了すべきプロジェクトとしては扱わないでください。その代わりに、そのアプリケーションがサービスを提供するさまざまな部門やユーザーの責任で管理されるビジネスサービスとして考えてください。これらの部門は、アプリケーションにアクセスしてアプリケーションに関するフィードバックを提供する責任を担い、アプリケーションが解決する事業達成目標への取り組みを維持できるように促します。
すべての IT 環境が、開発者が実際に作業する環境と同じであるとは限りません。インターネットテストツールを使用して、開発環境の外でアプリケーションがどのように動作するかを把握し、通信が弱いスポットやインターネットの平均速度が遅い状況などを考慮します。アプリケーションが専用の IT 環境でしか機能しない場合、サービス提供対象のユーザーの元では動作しない可能性があります。
アプリケーション開発を、社内で抱えている開発者に限定する必要はありません。適切な開発プラットフォームがあれば、社外のエンドユーザーに、強力な正規アプリケーションの開発の支援を働きかけることができます。市民開発者はアプリケーション開発プロセスにおける非常に有益な存在となる可能性があり、商品化までの期間の短縮、イノベーションの向上、コストと IT 部門に対するプレッシャーの低減などを実現できる可能性があります。
ビジネスと顧客が抱える独特なニーズに対応する場合、「そのための最良のアプリケーション」となる可能性があるのは、社内で開発するアプリケーションかもしれません。IT 管理ソリューションをリードする ServiceNow がお手伝いします。ServiceNow Application Development は、フルスタックアプリケーション開発機能と使いやすい構造を提供します。またすぐに利用可能であるため、強力なビジネスアプリケーションの構築にすみやかに着手できます。
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